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戦国異伝

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第二百四十七話 待つ者達その七

「完全に」
「大丈夫じゃ、もう我等の出る幕はない」
「そういうことですな」
「うむ、わしはこのまま寺で御仏に仕え学問をしてな」
「生きられますか」
「そうする、そして御主も高家としてじゃな」
「生きていきまする」 
 また父にこう言った氏真だった。
「これからは」
「それがよいな、それで天下じゃが」
「はい、朝廷におられた高田殿はです」
「魔界衆であったな」
「そして僧籍でも」
「天海殿と崇伝殿じゃな」
「あのお二人もまた魔界衆でしたな」
 氏真は鋭い顔になって述べた。
「延暦寺の無明殿、そして善柱坊殿も」
「皆な」
「朝廷や仏門にまで入っていたとは」
「むしろそちらの方に深くな」
「まつろわぬ者が」
「世の中恐ろしいものじゃ」
 こうも言うのだった、義元も。
「わしもそうした者達がおったことは知っておった」
「古事記や日本書紀から」
「知っておった、しかしな」
「それでもですな」
「まだ生きておるとはな」
「そして本朝に害を為してきたとは」
「夢にもじゃ」
 まさにというのだ。
「思っていなかった、しかしな」
「いるからにはですな」
「やはり何とかせねばならん」
「そしてそれをされているのが」
「かつてわしがうつけと侮ったな」
 ここでだ、義元は苦笑いになって述べたのだった。
「あの方じゃ」
「上様ですな」
「そうじゃ、しかしわかった」
「上様のことが」
「あの方ならそのまつろわぬ者達に勝ちじゃ」
「そして滅ぼされて」
「天下に長い繁栄をもたらして下さる」
 こう言うのだった。
「あの方はな」
「そうですか」
「そうじゃ、だからな」
「天下はですな」
「心配することはない、行くぞ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 義元は氏真にだ、あらためて言った。
「ではこれよりな」
「何でしょうか」
「茶を飲むか」
「茶ですか」
「最近茶にこれまで以上に親しんでおってな」
「それで、ですか」
「茶室に入るか」
 自身の息子にだ、義元は温和な笑顔で話した。
「これより」
「では父上が煎れて下さいますか」
「そうしようぞ、実はよい菓子も入っておってな」
「そちらもですか」
 菓子もと聞いてだ、それでだった。
 氏真は笑顔になってだ、こうも言ったのだった。
「それはよいですな」
「ははは、御主も前よりもじゃな」
「菓子が好きになりました」
「まだ戦はあるが確かに泰平になってきてな」
 そして、というのだ。
「茶畑も多く出来てな」
「菓子もですな」
「増えてきた。砂糖もじゃ」
 これについてもだ、義元は言うのだった。
「多く仕入れられてな」
「しかも本朝でも作られる様になり」
「砂糖も増えた、だからな」
「よい菓子も増えた」
「泰平になればそうしたものも増えますな」
「だからよい、あの方が泰平をもたらして下さる」 
 それも長くとだ、義元は深い顔で語る。 
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