『ある転生者の奮闘記』
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TURN33
「沈めるって……それが出来ないから方法を探しているんだろうが」
俺の言葉にダグラスは溜め息を吐いた。
「これがハワイ星域で俺達を撃破したサギリか。所詮過大評価していた事か」
ダグラスはそう言った。
「沈めるってのはその沈めるとちゃうわボケナス。考える頭が無いんなら暫定大統領なんか辞めて俳優でもしてろや」
「なッ!?」
驚くダグラスを他所に俺はアドルフを見た。
「ドクツ第三帝国の総統はもう気付いているでしょう? 俺が言っている沈めるという意味は?」
『……あぁ。よもやそのような方向でバージニアを沈めるとはな』
アドルフは苦笑する。
『サギリが言った沈めるとは攻撃で破壊して沈めるんじゃない。我々ドクツが開発した次元潜航デバイスをバージニアに設置して亜宇宙に沈めるのだ』
『ッ!?』
アドルフの言葉を聞いた俺以外の全員が驚愕の表情をする。
『更に止めとしてドクツが開発した最終星域破壊爆弾を提供する』
「……どちらがCOREだが分からんな」
俺はそう呟いた。
『これは最終兵器だ。最後の最後まで使わないと思っていたがな』
「……ドクツがこれ程までの力があったとは……」
セーラ女王が驚いている。
「問題は誰が次元潜航デバイスを取り付けるかだ」
「提案した俺が陸戦隊を率いて乗り込もうか?」
一応提案は俺やしな。
「いや、此処はダグラスと山下長官の精鋭部隊を送らせよう。いいか?」
東郷長官はそう言って二人に聞いた。二人は勿論頷いた。
「行くのわっしい?」
「仮にも俺は大統領だ。キャロルのこと、キャロルの姉さんのこと、ドロシーのこと、亡くなったクーと生き残ったハンナ・ロックのこと、部下達のこと……俺を生かしてくれた一億のカナダ住民のこと。俺を選んでくれた全てのガメリカ国民の未来を……背負ってみせる」
イーグルはそうキャロルに言った。
「……バージニアが完成していればまさに難攻不落の要塞だったはず。でもあれは未完成のまま。キングコアはキリングが施した封印を解いてインターフェイスをCORE対応に改造しただけ。武装要塞としての整備は行われていないはず。内部に侵入出来さえすれば……」
『ワープ反応観測しましたッ!!』
キャロルがそう言ってた時、長門艦橋にいたオペレーターがそう報告してきた。
『ワープコードはマイクロネシア星域ですッ!! その先は……』
「日本……やろな」
俺が呟いた時、キングコアからの通信が来た。
『トーゴー……何故キングコアがトーゴーを名指しで?』
「キングコア……その脳であるリンカーン=イレブンゴーストはキリングに恨みがあるの。自分達が逮捕される切っ掛けになった『アサママル号事件』……そこで会ったスカーレット姉さんに」
「スカーレットとキングコアが会っていた?」
流石に東郷長官も知らんわな。
「キングコア本人がそう言っていた。あいつは姉さんに娘がいることも知っていた。今ではあんたの存在も……トーゴー」
「トーゴーッ!! 直ぐにバージニアを追うぞッ!!」
「……まさか第二次宇宙大戦の因果の糸は身近なところに絡みついていたとはな……」
東郷長官はそう呟いた。
「狹霧、本土決戦用のプランがあったな。皆に配布してくれ」
「え? いいんすか? 日本の詳細な星域図は機密事項ですよ」
「構わん。バージニアの推定速度は此方の半分以下だろう。先回りして日本星域で防衛線を構築する。それと宇垣長官に連絡を……」
『帝よ』
そう呼んだのはアドルフ総統だった。
『帝よ……聞いておられるのだろう。ドクツと日本……同盟国の元首として貴女と直接話がしたい。ぶしつけだが宇宙災害とそのコントロールに関して銀河最高の権威は貴女なのだ』
アドルフ総統は帝にそう語りかけた。
『一歩踏み出す勇気を、皆に与えるにはリーダーが必要だ。それは今回に限って私ではない。失礼ながらエイリス女王陛下でもなく大統領閣下でもない』
アドルフ総統がそう言った時、帝が現れた。
『私は東郷を信じていますよ』
会議室に現れた帝はそう言って東郷長官を見つめた。
「俺も異存はない。敵として戦い、トーゴーの実力は認めている。今の俺は総司令長官には相応しくないからな」
「東洋艦隊提督ヴィクトリー・ネルソンはわたしの盟友でした。彼を凌駕した閣下の采配に疑いはありません」
『我がドクツもトーゴーの采配に期待しよう。マンシュタイン、ロンメル。彼の指揮下に入れ。どうか使ってやってほしい』
四か国は東郷長官を総司令長官とすることに改めて同意した。
「これで正式に連合艦隊司令長官……GF司令長官ですね」
俺は東郷長官にそう言った。
「参りましたね。俺より狹霧の方がいいですがね」
「そこで俺に振るんすか?」
『真希ちゃんと暮らす事が貴方の夢なのでしょう? であれば未来のために戦いましょう。そしたらうんと子ども達に自慢出来ますよ』
「帝の御為に……」
帝の言葉に東郷長官はそう言った。
「この場にデーニッツ提督がいないことが残念ですアドルフ閣下。あの方は日本人よりも深く、日本を識ってくれました」
『あれは忠誠心の塊だ。ファンシズムの申し子だよ。私の許可なく戦列を離れる事はない。あってはならない』
『我が子らよ』
そして最後の人物が会議室に現れた……てか柴神様やけどね。
「柴神様……」
『東郷……長門も手酷くやられたな』
柴神様はそう言って一同を見渡した。
『帝に代わって私が話そう。日本に移動しながらでいい……聞いてほしい。これは帝もみなまでは知らぬ事。長き我が苦悩……そなたら人間と分かち合う時が来たのだな。チカラを貸してもらうぞ愛しい子らよ……』
そう言って柴神様は語り始めた。それは銀河を見守ってきた男の回顧録やった。
後書き
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