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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第二十三話 その想いを胸に

「クエスト?また、依頼でも入ったの?」

「まぁ、そんなところだ」

ユイの出来事から五日後、キリトが知り合ったというニシダという釣り師と共に夕食を交え、その後、帰宅しくつろいでいるとき、ソレイユの口から出たのは少し長いクエストに出かけるということだった。

「どのくらいの期間なの?」

「ん~、二、三日ってとこかな」

「それって、前に行ったレジェンド・クエストみたいなものなの?」

「まぁ、そんなものだよ」

ルナが言った前に行ったクエストとは、ユイが拾われる三日前に受けたクエストのことである。ソレイユと共に受けたこの前のレジェンド・クエストだったが、正直デスゲーム中はもうこりごりである。あれをいままで単身でクリアしていたソレイユはさすがというべきか、なんというべきか迷うところである。

「いつごろ出発するの?」

「今日の深夜頃だな。それまでは一緒にいられるよ」

「そっか」

ソレイユの言葉に微笑みながら抱きつくルナ。しかし、すぐにその表情は寂しげなものへと変わり、ソレイユの胸に顔を埋めながら口を開いた。

「でも、なるべく早く帰ってきてくれないと・・・私、寂しくて死んじゃうよ?」

ルナの言葉に面食らうソレイユだったが、苦笑いをしながら愛し気にルナの髪をとかしていく。

「わかった。なるべく早くかえってくるよ」

「・・・うん」

髪をとかされる気持ちよさに身を委ねていく。それを拒むこと無くソレイユは受け入れていく。



深夜、ソレイユは目を醒ました。目を開けると、そこにはルナの安らかな寝顔があった。いつものように一緒に寝ているのでルナが隣で寝ていようとも気にならないのだが、先程までのことを思いだし、苦笑いが漏れる。
ルナを起こさないように静かにベッドから出て、何時もの装備を装備していくが、刀は装備しなかった。深みのある黒いコートを羽織ると静かに寝室を出ていこうとしたところで、寝ぼけた声が聞こえた。

「・・・それいゆ?」

声の主は先程までともに寝ていたルナであった。身を起こしながら、目をさする姿を見ているソレイユは苦笑いをしながら口を開いた。

「前は隠した方がいいぞ」

「ふぇ・・・・・っ!?わ、わわわ!!」

ソレイユの言葉を理解するやいなや顔を真っ赤にして、慌てて掛け布団を引き寄せ身を隠す。見ていたソレイユは忍び笑いをしていたので、それに気付いたルナは今度はむくれてしまう。

「むぅ~~」

「・・・・・」

むくれる姿さえ可愛いと感じてしまう。彼女のすべてが愛しく思う。最早末期といっていいだろう。だからなのだろう、ずっと一緒にいたいと思うが、それができないジレンマを踏んでしまう。むくれるルナの頬に手を伸ばし、優しく慈しむように、しかしどこかさびしげな表情でルナの頬を撫でる。いきなりのことにルナはキョトンとした表情になるが、撫でられる気持ちよさに目を細める。不意に頬を撫でていたソレイユの手が頬を伝い顎に伸ばされると、そのまま持ち上げられ唇がふさがれた。それは、激しく求めあうようなものではなく、ただ触れるだけのものであった。触れ合っていた唇は数秒後にはどちらからともなく解かれた。

「ごめんな・・・いってくるよ・・・」

「ううん、気にしないで。それよりも、無事に帰ってくるのを待ってるから無理だけはしないでね」

「ああ・・・」

ルナの言葉に頷くと、ソレイユは身を翻し家を出て行く。残ったルナは胸を撫で下ろし、ため息をついた。

「ばれて、ないよね・・・?」

自分に問うように投げ掛けた言葉に反応するものはいない。それをあらためて認識した途端、ルナは寂しげな表情を隠そうともせず、ソレイユの出て行ったドアを見つめながら呟いた。

「月がきれいに輝けるのは、太陽があるからなんだよ・・・」

ルナにとってソレイユというプレイヤーはその名の通り太陽みたいな人なのだ。彼がいるから自分は頑張れる、生きていける。逆を言えば、彼がいなければ自分は何もできないということだ。

「ここまで、人を求めた事なんて無かったのになぁ・・・」

天井を見上げながら呟くルナ。その表情は先ほどまでの寂しげな表情とは一変して、悲しげな不安に満ちた表情であった。何かを恐れるようなその表情は恋人であるソレイユとて見たことはないだろう。
ソレイユと触れ合うことで得られる暖かさを知ってしまったルナはもう彼から離れることはできない。
ソレイユが私のもとからいなくなるわけではない、ということは頭では解っている。しかし、だからといって心で理解しきれるかと聞かれれば、答えは否である。
ソレイユの前では強がって大丈夫だと言ってしまったが、全然大丈夫ではなかった。もしも、戻ってきて、と言えば戻ってきてくれるのだろうか?やさしい彼のことだからきっと戻ってきてくれるだろう。
もっと彼のことを知りたいと思う。もっと彼と一緒にいたいと思う。もっと彼に触れてもらいたいと思う。もっと、もっと、もっと・・・。
それでも、だからと言って我儘を言ってはいられない。彼には彼の生き方があるのだ。いくら恋人だからってそれを捻じ曲げていいはずがない。
しかし、そうとわかっていても、ルナの口からは言葉が漏れてしまう。

「ソレイユ、早く、帰ってきて・・・」

呟かれた言葉は虚空に消える。それが無性に寂しくて、切なくて、どうしていいかわからなくなってしまう。愛する人にすぐに触れ合えなくなってしまって初めて知ってしまう。自分のなかで、彼の存在がどれだけ心を占めているのかを。
寂しさに彼のぬくもりが残っているであろうベッドに身を埋める。しかし、そんなことをしても心が満たされることはなかった。



マイホームを出て転移門に向かって歩いているソレイユ。そのペースはゆっくりとしていた。それでも待ち合わせには間に合うくらいの余裕はある。しかし、今のソレイユにそんなことはどうでもよかった。ソレイユの心を占めるのは先ほどまでのルナのことであった。本人は隠しているつもりだろうが、ソレイユには分かった。解ってしまった。彼女が抱える寂しさや不安を。今すぐに身を返してそばにいたいと思う。心ではそう思っていても、頭がそうはさせてくれなかった。わかっている、わかってはいるのだ。しかしだからと言って、割り切れる思いでもなかった。

「末期だな・・・」

人知れず呟かれた自嘲気味であった。まさかここまでの気持ちを彼女に持つとはおもわなかった。ルナの存在はソレイユの心の中の大部分を占めてしまっている。それが悪いとは微塵も思わないが、だからこそルナを一人残してしまっているこの状況に悪態をつきたくなる。

「あ~あっ、いっそのこと剣を捨てようかな~」

呟いてから苦笑いをして頭を横に数度ふるい変な方向に流れた思考を中断する。捨てられるはずがないのだ。ソレイユにとって、それを捨てると言うことは誇りを捨てるということになってしまうのだから。そしたら、ソレイユがソレイユでなくなってしまう。
不意に空を見上げるがそこにあるのは無機質な石の天井だった。それでも、ソレイユは天井を見上げながらここにはいない彼女に向かって呟いた。

「はたして、このゲームの真実を知っても君は君のままでいてくれるだろうか?知っていながらその事を話さないおれを君は許してくれるだろうか?」

その疑問に答えるものはいなく、風に流され消えていった。
 
 

 
後書き
ニシダさんイベントは飛ばさせていただきます・・・すみません・・・orz
そして、なんで新年早々こんな雰囲気の話しを書かなくちゃならないんだよっ!!

ソレイユ「自業自得だ」

はいはい、そうですよ~、自業自得ですよ~だ・・・
そんなことより、今をもって2013年ですね!2012年は色々ありましたから今年は良い年にしたいものです。

ソレイユ「そうだな・・・この小説もがんばっていきたいな・・・」

そうですね・・・
では、皆様・・・新年あけましておめでとうございます!!今年も漆黒の剣聖ともどもよろしくお願いします!!

漆黒の剣聖オリキャラ一同「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
 
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