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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第10章 エル・ファシル掃討作戦 中編-②

「第3中隊突撃!」
私は前方へ機関銃を連射する哀れな帝国軍兵士の背中へトマホークを振り下ろした!
狭い塹壕内で白兵戦が繰り広げられる。
中尉の階級章を付けた帝国軍兵士とつばぜり合いに
なかなかの剛腕で力負けしそうだ
私はそいつの足を払って、その流れで奴の頭部に一撃を加える…

宇宙歴793年 3月 
私たちはエル・ファシル南部大陸ウラジミール山脈で血みどろの戦いを繰り広げていた
潜伏する帝国軍の位置は分かったが、帝国軍指揮官は優秀なようで人口密集地のテロ拠点や郊外の前線拠点が制圧された時点で山岳部にある拠点防御を固め始めた。
そのため、一つの拠点をたたけば必ず2倍の戦力を持つ帝国軍を相手にしなくてはならなかった。
その時も第10山岳師団の部隊とともに山麓部にある帝国軍拠点の制圧にかかっていた。
結局頑固に抵抗する帝国軍の制圧を完了したのは作戦開始から4時間後で、損害も馬鹿にならなかった。
次の作戦は3月19日に企画された掃討作戦であった。

3月19日 0300時 第112航空基地
私たち第3中隊とブルームハルト大尉指揮下の第2中隊、第10山岳師団第77山岳猟兵連隊第1大隊が集合した。
その日の掃討作戦はD–22ポイントにおけるもので、偵察部隊による報告で判明した帝国軍宇宙基地および航空基地制圧作戦であった。
前述の通り帝国軍はワルキューレを1個航空団規模で、駆逐隊・ミサイル艇隊を数個隊かき集めた宇宙戦力を保有しており、上空に展開する同盟軍のスパルタニアンやパラシュート降下部隊へ果敢に攻撃を仕掛けていた。
同盟軍はこれを撃破すべく偵察部隊を派遣していたが、帝国軍のゲリラ攻撃や巧妙な擬装などでなかなか見つからなかった。
そこで業を煮やした同盟軍はシェーンコップ中佐の提案で特殊部隊とローゼンリッター連隊の一部で編成した第12偵察任務大隊を編成した。
この部隊には第1特殊作戦コマンドの中でも特に偵察任務に優れたチームCが参加し、ローゼンリッターからは各中隊の偵察小隊が引き抜かれた。
当時、この大隊の狙撃小隊指揮官を務めていたエミール・レイ曹長の回想録(「戦場の狙撃手」著:エミール・レイ退役中佐)の一
部を紹介する。
(以下引用)
「・・・
奴らは巧妙な狙撃手だった。
同盟軍のグリーン・デビルス(第1山岳師団)に少しも引けを取らなかった。
どこからでも撃ってきた
あれは作戦開始3日目のことだった
俺たちはデアデッケン大尉に率いられてスパルタニアンの航空写真に基づいて敵の航空基地発見任務を行っていた。
その時の編成は狙撃手訓練課程を修了したばっかりの新品狙撃手たちで編成されていた。
いつも一緒の隊員たちは心配してくれたが、なんとかなるだろうと思っていた。
その日行った地区はD-22地区
D-22地区は山岳部の中でも最も険しいところで、森林限界を超えているので我々を隠してくれるような草木はほとんどなかった。
俺の小隊の斥候分隊長であった、カナル・デューダー伍長が先頭を警戒しながら歩く。
歩くこと2時間
聞きなれない航空機の音がした。
するといきなり大尉が
「全員その場で伏せろ!」
と命令した
その場で伏せた俺はなんでだろうと思っていたがその疑問はすぐに解消された。
というのも、伏せてから15秒くらい後であっただろうか俺たちの頭上をワルキューレが4機編隊で飛び去っていったのだった。
航空機の音だけでワルキューレと判断した大尉もさることながら、航空基地が近いことは明確であった。
そして、起き上がった瞬間だった!
私の前にいたカナル伍長がいきなりこちらに倒れこんできた。
一瞬何が起きたかが検討もつかなかったが伍長の胸部を見た瞬間に全てが明らかになった。
誰かが
「狙撃手!」
と叫んだ瞬間に我々は岩の陰に隠れた
狙撃は単発的に撃ってきており
しかも、複数方面からであった。
しかし、そんなことで慌てる我々ではなかった。
デアデッケン大尉はすぐに対策を実行した。
大尉と俺を含めた7名の狙撃手が12.7mm大口径狙撃ライフルで射撃する傍ら足の早い1等兵2名が囮になって狙撃をおびき寄せるものだった。
残る隊員は援護射撃を行うことになった。
囮隊員のクライフ1等兵にゴーサインを出すと1等兵は全速力で岩の山道を遮蔽物の岩めがけて走って行った。
1等兵が走り始めてから3秒としないうちに狙撃手の位置がわかった
スコープが反射したのだ
条件反射的に狙撃ライフルをぶっ放す
しかし、弾丸は外れたようだった。
隣のいた観測手のグスタフ軍曹が報告してきた。
失敗だった
しかし、それから10秒後デアデッケン大尉の無線から俺が撃ち漏らした1名射殺を報告してきた。
開いた口が塞がらなかった。
早くそこから離脱したい一心で索敵する
敵がいそうな見当がついた草むらへ照準を合わせる
1等兵に再びゴーサインを出す
反応はすぐだった
草むらからギリースーツを着た帝国軍狙撃手が顔を出し、狙撃ライフルを構えた瞬間だった
俺は息を吸って止めて1、2、3と数えて奴の耳の下に照準を合わせて引き金を引いた!
風はほぼ無風
しかし、彼我の距離は2kmちょいだった
重力なども計算に入れてぶっ放した
そして、グスタフ軍曹が
「着弾!」
と報告してきた。
結局俺はその後2名を新たに射殺しデアデッケン大尉は3名を加えた
その狙撃手狩りは30分で幕を閉じたようにみえた。
デアデッケン大尉が前進を命じた瞬間だった!
いきなり大尉がこちらに倒れてきたのだ!
大尉は肩を負傷しており、俺は
「全員その場で伏せろ!
狙撃手だ!」
なのがなんだかわからなかった
結局隠れるまでとかくれたのちも4名が射殺された
大尉は負傷してるしこんなに死傷者が出たんじゃ溜まったものじゃないと思い撤退することになった
結局、新入り狙撃手を9名も射殺され、第3中隊のメンバーも2名が負傷した…」
(以上引用)
とあるようにこの地区では同盟軍は苦しめに苦しめられた。
それでもシェーンコップ中佐以下の隊員たちの巧妙な狙撃作戦によりこの地区の安全が確保され始め地区の全容ががわかり始めた。
偵察結果としてこの地区には擲弾装甲兵師団4個師団・航空基地が確認された。
これらを掃討すべくたてられた作戦はこの掃討作戦開始からもっとも大規模なものとなった。
私たちの部隊は第112航空基地から離陸後、攻撃目標へ直接ラぺリング降下し施設を丸ごと確保、破壊する。
また、周囲の援護する部隊は第2攻撃任務軍の第200白兵装甲師団、第9山岳師団、そして、第1山岳師団が投入され、航空兵力は第9艦隊第24・99空母打撃群が参加することになっていた。

そして、
0330時離陸
われわれを現地まで空輸するのは第111特殊航空作戦支援連隊という特殊作戦におけるヘリボン・ラぺリング作戦を支援するヘリ部隊であった。
彼らは特殊作戦部隊の一つであったのでなかなかお目にかかれる部隊ではなかったため、実態や実戦での戦績はよくわからなかった。
ブルームハルト大尉にどうなのかを聞いてみると、にやにやしながら
「まあ、みてろって。すごいから」
とのことであった。
そんなことをぼやぼや思い浮かべながら、ヘリは離陸した。
敵の警戒レーダーを避けるために断崖絶壁の谷を低空で抜けることになっていた。
地形図を見る限り並のヘリパイの腕では到底無理な航路であった。
その進入空域手前でパイロットが何やらしゃべり始めた。
「ご搭乗の皆様。
当機のご搭乗ありがとうございます。
只今より乱気流の中を飛行しますのでくれぐれも舌をかみ切ってあの世に召されることがございませんようにお気を付けください。
それと、飛行中は外を見ないほうがよろしいでしょう。
慣れないと ちびりますので。
くれぐれもお気を付けくださいませ。」
ふざけた交信内容のためか隊員たちはにやにやしながら聞いていた。
まあ、ヴァーンシャッフェ大佐が聞いたらブチ切れる代物なんだろうが
そして、パイロットが
「ショータイム!」
と叫んだ瞬間にいきなりヘリは急降下を始めた。
何が何だかわからなかったが降下したり上昇したり旋回したりを繰り返すこと20分
われわれは断崖絶壁の谷の難所を超えた。
何度か途中で頭をぶつけたりしたものの大丈夫だったようだ。
ヘリの窓から外をのぞくと後方に抜けてきた谷が見えた。
その幅はヘリ1機がやっと通れるスペースでそこを後続のヘリが抜けてくるのを見て
ただただ圧巻するしかなかった。
そして、そこから5分後
ヘリの機長が
「降下5分前!」
窓から見る外はただの岩山の風景だが前方500mほど先に大きく長方形に開いた航空機発着場が見えた!
隊員たちにいつもの手順で装備を相互チェックし降下に備える
「降下2分前!
ハッチ解放!」
冷えた空気が一気に入ってきた
「降下開始!」
私は
「いくぞ!」
と一言だけ言い放ちラぺリングロープを手に取って降下した。
着地した瞬間に防御陣形構築のためにライフルを構えて前進する。
後続の隊員が下りてきた。降下開始から15秒程度でほかのヘリからの降下も完了し警戒陣形で一気に攻める。
われわれが降下したのはワルキューレの露店格納庫の中
攻撃目標は敵の中央管制室と司令部
私はライフルを構えながら
「前進! 敵が見えたら一発でやっつけろ!」
と命じて先鋒で前進を開始した。
その時だった、
左腕についていたタブレットから警報音が鳴り始めた
見ると
「ゼッフル粒子高濃度散布の可能性あり。」
と書かれてあったのだ!
私はその時もしかしたらにやけていたかもしれない。
そうなったら白兵戦しかなかったからである。
私は隊員たちに
「全員ライフルからトマホークに持ち替えろ。
われわれの本領を発揮するぞ!」
後ろにいたグレン・カント准尉はにやけながら
「了解です。」
と言ってライフルのを背中に回し装着していたトマホークを取り出した。
私もトマホークに持ち替える。
「前進! 作戦通り第3小隊が先鋒だ! 第3小隊に後れを取るな! いくぞ!」
格納庫の施設内部へつながる通路に侵入する。
中央管制室はここから12ブロック直進したところだ。
全然いける。
血が騒ぐとはまさにこれであった。
走っていると前方から守備兵集団が見えた。
よほど白兵戦に自信があるんだろうか
一般守備兵であったがトマホークを持っていた。
雄たけびをあげながらかかってくる敵兵
上段の構えで振り下ろすが脇が甘い
貫胴で仕留める。
人を切り裂く感覚が手から伝わってくる
1人目
次の奴はさすがに流れるようにとは言えなかったが、つばぜり合いの時点で奴の運命は決まっていた。
得意技の胴フェイント面で仕留める。
2人目
次の奴はトマホークの先のやりでついてきたがトマホークごとはたき落して頭部をはたききる。
3人目
正直、数の上で銃撃戦になってたら苦しい戦いになっただろうが白兵戦なので優位に戦いを進めた。
最初の交戦から5分程度で最初の一団を制圧し、次のブロックへ向かった。
第4・狙撃偵察小隊が通気口から侵入し今頃は司令部を制圧しているはずだ。
まさか敵もこんなに迅速に攻めてくるとは思ってないだろう。
その速攻の秘訣は同盟軍情報部と同盟軍技術研究開発本部にあった。
彼らは今回の作戦でとても重要な役割を果たしていた。
それは
偵察ロボットの開発と運営である。
彼らが開発した手のひらに乗るネズミ型の偵察ロボットで掃討作戦前にシェーンコップ中佐の要望でルイ・マレン技術大佐指揮下の研究チームが開発した。
シェーンコップ中佐としては都市部のテロ組織を偵察する際のロボットとして開発要請をしてた。
これを使って実に7日にわたる偵察により基地内の地図が完成した。
この地図を使って私たちは作戦を立案した。
侵入から10分後
第4小隊長のグレン・クライスト准尉が司令部制圧完了とこの基地の司令を捕縛したと報告してきた。
本人いわく「楽勝」だったそうだ。
あとは中央管制室制圧だけであった。
残り5ブロックに迫ったところで西の通路からブルームハルト大尉の率いる中隊と合流した。
ここまでこれば作戦も何もあったものではなかった。
ここまでとにかく突撃と司令部確保を気にしながらの作戦であったが
ここからは速攻と突撃特に前者が要だ。
返り血で血まみれになった大尉に敬礼すると
「おう!
正直楽勝だな。いくぞ!」
と言って並んで走る。
通路の向かいからは1個大隊程度の敵兵が流れ込んでくる。
最初のひとりがトマホークをふるってくるが、よけて延髄へトマホークを振り下ろす。
2人目以降はほとんど流れ技であった。
貫胴
真正面からの胴フェイント面
などなど
流れ技があまりにもきれいに決まった。
10人目の面切り返し胴が決まってから防御プラスチックを跳ね上げる。
すると、そばに倒れている私が無力化した兵士が私の腕についている部隊章を見て
「ロ…ローゼンリッター連隊!?」
とつぶやいた。
一瞬にしてその場にいた帝国軍兵士の動きが凍る。
するとブルームハルト大尉が
「そうだ。われわれはローゼンリッター連隊だ!
いつでもお前らの遺書をお前らの血で俺たちが代筆してやる。
かかってこい!」
と言い放つと帝国軍兵士たちは後ずさりをし始めた。
ブルームハルト大尉はにやにやしながら
「いくぞ!」
とトマホークをもって突撃していく。
私もそれにつられて
「第3中隊後れを取るなよ!いくぞ!」
というと先鋒第三小隊の小隊長マースト・リヒトフォーヘン少尉が
「第3小隊!先鋒前進!」
と叫んで突進する。
私は突進しながら前方で迎撃態勢を取るまだ年若い兵士の無防備な胸部へトマホークで一撃を加えた。
と、思ったが彼は私の攻撃をさらっとかわして私の後頭部へトマホークを振り下ろそうとする。
私は急いでその振り下ろされたトマホークをなぎって少尉の階級章を付けた彼の懐に飛び込みコンバットナイフで頸動脈に一撃を加えた。
すぐさまナイフを引き抜き次の目標に向かった。
次の奴とつばぜり合いをしながらさっきの少尉を見るともだえ苦しみながら咳をしていた。
肺の中に血がたまっているのだろう。
長く持たない。
大量出血であと3分も持たないうちにあの世行きだろう。
私は腹を決めた
つばぜり合いをしている敵兵を胴フェイント面でやっつけてからコンバットナイフを引き抜き倒れている少尉へ近づいた。
彼は咳をしながら私のほうをにらみつける。
私が憎いだろう。
しかし、私だって帝国が憎い
私の父を陰謀にはめ
母を殺し
兄を連れ去り
叔父を戦死させ
部下を大勢殺された
しかし、個人自体はにくいと思ったことがなかった
目の前に倒れている少尉は年端から見て19ないし18歳
茶髪の端正な顔をしていた少年であった
もう助からないな
実力の差でこうもなるのか
自分も明日は我が身の可能性をぬぐえないまま戦い続けている。
そんなことを考えながら彼のトマホークを彼が持てないように遠くへ蹴って、彼のそばしゃがむ
私はは自分に言い聞かせた
迷うな。
一撃で彼を苦しみから解放させる。
それだけだった。
彼は咳をしながら私を見て私の手を握っていた。
彼は帝国語で一言
「くたばれ」
とののしって最後の力を振り絞って腰に挿していたナイフを抜き取ったのだ!
私は衝動的に立ち上がりストレートに彼のコンバットナイフをもっと右手を踏み潰してそのまま自分のコンバットナイフを彼の胸部へ突き立てた
彼の胸部から血があふれ出す。
すると彼は動きを止め
そのまま目を閉じた
私はすぐさま立ち上がって次の標的へ向かった
頭の中が混乱していた
なぜそんなことをしたのか
なぜ一撃でできなかったのか
そんなどうでもよいことが頭の中をくるくる回っていた。
結局15分にわたる白兵戦を制して我々は前進を開始した。
目標まであと2ブロックに迫ったところでわれわれはさっきのとは異なる抵抗にあった
なんとそこには擲弾装甲兵部隊がおりそれもわれわれの2倍はいた。
しかし、そんなことでくじけるわれわれではないのですぐさま撃破すべく果敢に攻撃を開始した。
一人目の伍長は貫胴で
2人目はその流れで面を一発で決める。
5人目までは流れで行けたがそれ以降の兵士とくに14,5人目は特に手強かった。
私の背より10㎝近く高い中佐の階級章を付けた若い士官であった。
少しでも気を抜けば負けてしまうこの白兵戦。
そして、われわれはお互いに同じ騎士であるという意識がある。
だからこそお互いに最大の敬意をもってトマホークをふるう。
また火花が散る
お互いに距離を取ってにらみ合う。
私は上段の構えを
彼は下段の構えを取る
幾分の隙もない
お互いに防御プラスチックの内側からにらみ合う。
どこからでも来いという感じであった
お互いに敵の隙を探す。
私は彼の足に注目した
ふつう相手に突き倒されないために足は前後に開くべきだった。
彼は確かに開いていた。
しかし、その幅ではローゼンリッター連隊の隊員のタックルは耐えきれない。
われわれは状況打開策の一つとしてタックルを決めて懐に入り込んで急所を狙うように訓練されていた。
私はそれを実行に移した。
じりじりと敵に近寄りながらチャンスをうかがう。
士官学校時代はアメフトでレシーバーをやってたがタックルだって悪くないくらいまではできる
なめるなよ
と思って一気に低姿勢で足元にとびかかる。
トマホークで頭部をやられないように自分のトマホークで防御しながら思いっきりとびかかる。
そして、敵の足にしがみつきそのまま突き倒す。
そしてすぐさま彼に馬乗りになりコンバットナイフを抜いて彼の頸動脈を狙う。
しかし、彼は怪力で私の腕をつかみナイフを防ぐ
力の押し合いになる
ここで負ければ死がお互いに待っているだけであった。
私は前方にさっきを感じすぐさま飛び跳ねるようにして後退した。
目の前には擲弾装甲兵が4名もおりそのうち1人がトマホークをふるったらしかった。
そして彼らはトマホークを構えこちらに走ってきた。
上等だかかってこい
私と隣にいた第1小隊長クレメンツ・ホリー予備役中尉とともに打ってかかった
まず一人目貫胴で仕留める
その後ろにいた兵長はボウガンをもって私を狙ってボウガンを撃ってきたが私はトマホークでそれをなぎって一気に接近した。
奴はボウガンで私のトマホークを防御しようとしたが私は容赦なくボウガンと彼ごと切り裂いた。
クレメンツ予備役中尉も2人をやっつけたらしくトマホークを構えた状態で待機していた。
さっきの中佐が周りに2個小隊ほどまでにうち減らされた擲弾装甲兵集団を先頭に仁王立ちしていた。
彼らの1ブロック後ろには中央管制室の扉がある
ブルームハルト大尉、私、クレメンツ予備役中尉といった感じでトマホークを構え敵の動きに即応する準備をする。
すると、帝国軍中佐はトマホークを前にほっぽり出して手に黒い物体をもってその右手を高々と上げた。
手榴弾であった
帝国軍中佐はしゃべり始めた
「私は、エル・ファシル駐留軍 第22擲弾装甲兵師団所属 マースト・フォン・シュナイダー中佐だ。
また、この基地の防衛副指揮官だ。
ここにてわれわれは降伏する。
しかし、条件がある。
同盟・帝国相互交戦規定第91条に基づきわれわれ生き残った兵士を帝国へ解放しろ。
卿ら常識ある薔薇の騎士たちにこれを判断してほしい。
もし、条件を拒否する場合はこのゼッフル粒子手榴弾を爆散させる。
以上だ。」
隣にいたブルームハルト大尉は
「われわれはローゼンリッター連隊だ。
私はライナー・ブルームハルト大尉だ
貴官らの条件を検討したい。
連隊長と交渉する時間をくれ。」
すると瞬時に中佐は
「拒否する。
貴官らで考えてほしい。」
すると大尉はこっちを向いた。
私はうなずいて
「捕虜を養えるだけ同盟軍は金持ちじゃないですから。
しかも、この基地司令の大佐は捕縛しました。
十分でしょう。」
大尉は
「そうだな。俺も同感だ。」
そして
「了解した。
貴官らを解放する。」
すると中佐は
「感謝する。」
と言って手榴弾をおろし、部下に帝国語で武器を捨てるように命じた。
帝国軍兵士たちは安心した表情で武器を捨て始めた。
ローゼンリッター連隊側は状況が呑み込めずそのまま武器を構えていた。
すると、中佐が歩いてきて
「中央管制室はすでに武装解除済みだ。」
と言って中に案内した。
私たちは敵の罠の可能性ありとして本人たちには形式上とはいったもののとりあえず手錠と監視兵を置いた。
中佐についていって中に入る。
そこには降参を示すために手を挙げた帝国軍の航空管制官たちが20名ほどいた。
本来殺す相手をまじまじと見るのは変な感じがした。
私は連隊本部に作戦完了を報告し、捕虜の取り扱いについても報告したところいきなり
「バカヤロー!」
とヴァーンシャッフェ大佐が怒鳴り散らしてきた
びっくりして無線機を落としそうになった
その後20分近く、指揮権の越権行為だのどうだのと騒ぎ始めいきなり
「この時刻をもって貴様の第3中隊指揮権を剥奪する。」
と宣告され、30分後に憲兵隊が私を連行することになってしまった。
ブルームハルト大尉が割って入って事情を説明したが大佐は「無理」とか「貴様に関係ない」だのいろいろと言って大尉を退けた。
そして、第2攻撃任務軍のベイ少佐に率いられた憲兵隊が私を逮捕しに来た。
この少佐は大尉時代の時に私の士官学校教官の人で良い教官だった。
少佐は形式的にいろいろと条文を読み上げると私を逮捕したが、耳元で
「お前が悪くないのはわかってる。
どうにかするから待ってろ。」
とアルレスハイムの時アーロン少佐に言われた時と同じことを言われた。
中隊員たちが心配そうにこっちを見ている。
私は連隊本部のヘリに乗せられる前に笑って彼らに言った
「必ず無罪を証明して戻ってくる
それまで生き残れ!」
中隊員たちは整列して敬礼を返してくれた。
こうして私にとってのエル・ファシル掃討作戦における3つの山のうち1つは越えた。
当時の私はまだ2つの山があることなど知らず、知るはずもなかった。

宇宙歴793年 3月19日のことであった 
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