FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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おかえりフロッシュ
前書き
54巻に載ってる『バトルフィールド』で、イシュガルの四天王+ジュラが東の防衛戦として出てくるシーン。あの少し前に出てくるカエルがフロッシュの着ぐるみと同じ色合いなのではないかと勝手に頭の中でイメージしている今日この頃。
グラシアンside
ギルドの一室、ここには今、剣咬の虎の全メンバーが集められている。
「天を轟かせ、地を沸かし、海を黙らせる。それが剣咬の虎だ」
全員と向き合うように椅子に腰掛け、そういったのは現在うちのマスターをしているスティング。彼の普段の優しげな雰囲気から一転、彼は眉間にシワをよけ、気難しい表情をしている。
「服を・・・脱げ」
「はい。仰せの通りに」
先頭にいる星霊魔導士。その女性はかつて、前マスターにも同じようなことを言われていた。彼女は頬を赤く染め、身に纏っている衣類を脱いでいく。
それを見た白き竜はニヤリと口角をあげる。だが、それだけでは終わらない。彼女の後ろにいる魔導士たちも皆、一斉に服を脱ぎ捨てたのである。その理由は・・・
「俺たちのプールが完成したんだからな!!」
「「「「「イエーイ!!」」」」」
「おめでとうこざいます!!」
服の下に着ていた水着になるため!!水着になった虎は皆、完成したばかりのプールに飛び込んでいく。
「はしゃぎすぎだ、スティング」
「てかさっきの・・・いる?」
長めの髪を後ろで束ね冷静を装っているのは三大竜の一人、ローグ・チェーニ。そして先程のよくわからない行動に突っ込みをいれるはもちろんこの俺、グラシアン・カイザーだ。
「この気持ちよさ、記憶にないね」
浮き輪に入り浮かんでいるルーファスがそう言い、プール発案者のスティングがおおはしゃぎで泳ぎまくっている。
「ギルドの中にプールなんて、誰も思い付かねえだろ!?」
「確かに、そんなギルドは記憶にないね」
「プールがあるギルドなんてうちだけだぜ!!」
ユキノの水を掛け合うスティングが大笑いしながらそう言っているが・・・俺の記憶だとずっと前にギルドにプールを作った荒くれ集団がいたような・・・言わないでおくか。
「ほおれほれ!!」
「よせ。ガキかお前は」
「お前が大人すぎなんだよ」
ローグと俺にもバシャバシャと水をかけまくるスティング。彼に呆れた様子のローグががそう言うが、プールなんだし面白ければいいだろう?
「スティングくん!!」
「グラシアン!!」
プールで大騒ぎしていると、入り口からスティングと俺を呼ぶ声が聞こえたため、全員がそちらを見る。そこには街に服を買いにいったはずのレクターとキセキが血相を変えてやって来ていた。
「どうした慌てて」
「あれ?フロッシュは?」
二人はローグの相棒であるフロッシュと三人で街に繰り出したはず。なのに帰ってきたのはたったの二匹。どういうこったぁ?
「大変なんだよ!!」
「買い物の途中でフロッシュが行方不明になっちゃいましたぁ!!」
「マジか?」
「フロッシュ様が!?」
「おいおい」
なんとフロッシュが少し目を離した隙にどこかにいってしまったらしい。当然、それを聞いたこの男が黙っているはずがない。
「なんだと!?レクター!!キセキ!!お前たちがついていながらなんでそうなる!?」
「ごめん!!」
「すみません!!」
二匹に怒りの形相で迫るローグ。それを見たスティングが興奮状態の彼を押さえようと割って入る。
「おいローグ。二人を責めるのは筋違いだろ」
「フロッシュはな!!道が覚えられないんだ!!」
「それはレクターのせいじゃねぇだろ!!」
額をぶつけ合い睨み合う竜。この二人を止めれるのは、あいつしかいないだろう。そう考えた俺は、その人物へと変化する。
「二人とも!!ケンカしちゃメッ!!ですよ!!」
「「!?」」
俺が変化したのはローグの想い人「違うわ!!」こと妖精の尻尾のシリル。ちょっと女の子らしくウインクしながら二人にそういうと、口論していた彼らは止まった。
「「わ・・・悪ぃ・・・」」
思った通り効果は絶大。これ作戦今後も使えるな。
「グラシアン様。ニヤニヤしてないで早くいきますよ」
二人のケンカを止める術を手に入れたことでニヤリと笑っていたら、いつの間にか二人はフロッシュを探すためにプールから上がっていたらしい。というわけで、三大竜とユキノ、それにレクターとキセキの六人で迷子になったフロッシュを探すことにした。
「フロッシュ!!」
「どこだ!?」
「フロッシュ様!!」
「いるなら返事しろ!!」
街へとやってきた俺たちは、まずはフロッシュがキセキたちとはぐれた場所で声を出して探してみることにした。だが、案の定フロッシュの姿はない。
「先程もあちこちで尋ねてみたのですが・・・」
「さすがにこの人の数だと難しくて・・・」
自分たちのせいだと思い込んでいる二人に気にしないように声をかける俺とスティング。だがさすがにノーヒントじゃちと厳しいかね。
「あら?あそこにいるのって・・・」
すると、ユキノが誰かを発見する。そこにいたのは、売り物である鉄製の鎌をバリバリと食らっているガジルの姿だった。
「ガジルさん!!」
意外な人物にあった俺たちは彼の元へと駆けていく。彼はスティングの声に気付いてこちらを振り向くと、いきなり胸ぐらを掴まれる。
「おい!!この辺でフロッシュを見なかったか!?」
「なんだいきなりてめぇ!!ケンカ売ってるのか!?」
冷静な判断をすることができないローグ。ガジルと一触即発になりそうなところを俺とスティングで彼を羽交い締めにして落ち着かせる。
「すみません」
「実は聞きたいことがあって」
「フロッシュが迷子になっちゃったんですよ」
「それで見てないかなぁ?と思って」
スティングが簡単に謝罪し、俺とレクターとキセキでガジルに声をかけた理由を話す。
「フロッシュ?あのカエルか?」
「猫だ!!」
「どっちでもいいわ!!」
腕を組み大魔闘演武の時にいっていた間違いを繰り返すガジルに興奮しているローグが怒る。正確にいうとエクシードと呼ばれる種族らしいが、今はそんなのどうでもいい。
「そうか、あれは迷子だったのか」
「「え?」」
その話を聞いたガジルの相棒・・・リリーだっけ?がどうやらフロッシュを見かけたらしい。
「いや、十分ほど前に、そこの角の公園で見かけたのだが」
それを聞いたレクターとキセキは有力な情報に思わず顔を緩ませる。
「恩に着ます!!」
「急げ!!」
情報を得たと同時にすぐさまリリーが指さした方角へと走り出すスティングとローグ。
「さっきは悪かった」
「あの・・・ありがとうございます」
謝罪も礼もちゃんとやっていない二人。仕方ないので俺とユキノがきっちり挨拶してから二人の後を追いかける。
シリルside
「じゃ~ん!!」
一種類の水着を手に取り、俺の方へと見せてくるのは同じ滅竜魔導士である少女。
「これなんかどう?シリル」
今日俺とウェンディは、近くの街に繰り出しているのである。途中までシャルルとセシリーもいたのだが、誰か知り合いを見つけたらしくどこかにいってしまい、今は二人きりになっている。
それでウェンディが露店で売っていた水着に目を奪われ、それを見ているのだが・・・
「う~ん・・・」
今ウェンディが持っているのは濃い目のピンク色をしたトップがチューブタイプのビキニ。俺はそれを着たウェンディを頭の中で想い描いてみる。
『シリル!!早く泳ご!!』
ちょっとセクシーすぎる気もするけど、全体像的には悪くない。少々胸が足りない気もするけど、それはそれでありだろう。
と思っていたのも束の間、すぐにこの水着の欠点に気付いてしまった。
『シリル・・・水着流されちゃった・・・』
普通水着は首にかける紐もあるのだが今見ているものにはそれがない。だとバストの締め付けがものをいうのだが、ウェンディはまだ成長しきっていない。そんなのであんなの着たら、流されちゃうよね?
「絶対ダメ。俺は許さない」
流されたら絶対好奇な目で見られる。俺はそんなことは絶対許さない。もっと安全な奴にしてくれないと―――
「私じゃなくてシェリアになんだけど・・・」
それを聞いた瞬間、頭から湯気が出たように感じた。なんということでしょう・・・俺は完全に思い違いをしていたようだ。
「そ・・・そういうことか・・・」
「何を想像してたの?」
我ながら恥ずかしい。そういえばウェンディはリュウゼツランドで新しい水着着てたじゃん。また買うなんてするわけないよね?
「それで?どうかな?」
改めてこの水着を着たシェリアをイメージしてみる。色合いといいボリューム的なものといい、似合っていると思う。
何より、ウェンディが着ると大体隣にいるのは俺だが、それだと子供二人が背伸びして大人のフリをしているように捉えられる。だけど、シェリアの隣に立つのはレオンのはず。このペアなら、多少幼さが残るとはいえ、十分に大人の魅力もあると思う。
「うん!!いいと思う」
「でしょ!!」
俺に認められたことが嬉しかったのだろうか、かなりキラキラした笑顔をしているウェンディ。そんな彼女に見惚れていると、公園が急に騒がしくなる。
「あれ?セイバーの皆さん!!」
「どうしたんですか?」
そこにいたのはスティングさんやグラシアンさん。彼らは俺たちを見つけると、すぐにこちらに歩み寄ってくる。
「シリル様!!ウェンディ様!!」
「オオッ!!いいところに!!」
「一番まともそうなのきたな」
いいところに?ってどういうことかな?俺が何か困っている様子の彼らを見て首を傾げていると、ウェンディがペコリと頭を下げる。
「大魔闘演武では、お世話になりました」
「お世話しました」
「それは違うだろ!!」
先日の大魔闘演武で知り合った剣咬の虎の皆さん。ウェンディは礼儀正しいので、敵であった彼らにもちゃんと敬意を持って挨拶していた。だから合わせて挨拶したのだが、グラシアンさんに突っ込まれてしまう。ちょっと間違えた気もするので、何も言い返せない。
「あの・・・ちょっと聞きたいことが・・・」
申し訳なさそうにそういったのはマスターになったスティングさん。だが、彼が言い終わるよりも早く、一人の男がウェンディの目の前に迫り来る。
「おい!!この辺でフロッシュを見なかったか!?」
「あわわわ!!」
あまりにもいきなり、それも鬼のような形相で少女に迫る影。それにより、少女は怯えているのがありありと見えた。その刹那、三頭の竜がそれを止める。
「近い!!」
「少しは落ち着け!!」
「少女相手にむきになんな!!」
「す・・・すまない」
三人の拳が見事に影の竜へと食い込み、飛ばされた彼は街灯にめり込んでいる。
冷静になってみると、もっと別な止め方があったのではないのだろうか?
「フロッシュですか?」
「それなら、あっちの方でさっき見かけましたよ」
フロッシュならさっき見かけた。どこかにフラフラっと歩いていくようだったから気になっていたので、記憶の中に残っていた。それを聞いたスティングさんは意識が飛んでいるローグさんの首もとを掴み、礼をいいながら走り去っていく。
「さっきはすまん」
「いえ!!大丈夫ですから」
怖い思いをさせたと思ったグラシアンさんが謝罪をしたあと、ユキノさんと共に彼らを追いかけていく。
「なんだったのかな?あれ」
「さぁ?」
砂煙を巻き上げながら走り去る彼らを呆然と見送ることしかできない俺たち。本当に、一体なんだったのだろうか?
シェリアside
今日はレオンとお買い物!!なんでも彼がどうしてと買いたいものがあるらしく、ラウルと二人で出掛けようとしているところにあたしがくっついてきちゃったの。
ちょうどいい機会だし、レオンと、ウェンディとシリルみたいに“愛”がある関係になりたいなぁと思って三人で出掛けていたら、ラウルが知り合いを見つけたらしくどこかにいってしまい、今は二人っきりになったの。つまりこれって・・・
「大チャンスなんじゃないかな?」
レオンのそばにはいつもラウルがいる。だけど、最近彼はシャルルやセシリーと仲良くなったこともあり、時おり別行動を取ることが多いのである。だから鈍感なレオンにあたしの気持ちに気付いてもらうには、こういうときしかない!!
「おっ!!あったあった」
一人そんな決意を胸にしていると、レオンの目的地へと到着する。そこは・・・ケーキ屋さん。
「スペシャルショートケーキをくれ」
店の前に来るなり、唐突にそういうのはもちろんあたしの幼馴染み。そういえばスイーツの本でこの街のスペシャルショートケーキがおいしいって見たことある。あたしも食べてみたかったんだぁ。
「おいくつですか?」
「14だ」
その瞬間、あたしと店員は思わず吹き出してしまった。レオンの年齢はあたしの一つ下で14 歳。つまり、彼は年齢を答えてしまったのである。
「失礼しました。お客様の年齢ではなくケーキの数をお聞きしたのですが・・・」
予想だにしなかったお客のミスに慌てて訂正する店員。おそらくレオンは自分のミスで恥ずかしくて顔を赤くするだろう。と、思い新鮮な顔をするであろう彼を見ていると、少年は不思議そうな顔をしてそれに答える。
「だから14個と・・・」
彼は初めからケーキの個数をいっていたらしい。だけどレオンが買おうとしているのはどう見てもホールケーキ。そんなに食べて大丈夫なの!?というかなんでもっと切りがいい数字にしなかったの!?長い付き合いのはずなのに、あたしにはレオンがわからない!!
「フロッシュ!!」
購入したケーキをラッピングしてもらっていると、後ろから聞いたことのある声が聞こえそちらを向く。そこには大魔闘演武で戦った、セイバーの人たちがいた。
「ん?何してんだ?」
「さぁ?」
辺りをキョロキョロ見回す彼らが何をしているのかわからないあたしたち。すると、こちらの視線に気付いたスティングたちが、こちらにやってくる。
「シェリア様!!レオン様!!」
「またいいところにいいやつがいるな!!」
ユキノのグラシアンがそう言うと、あたしの目の前に突然黒い影が姿を見せる。
「おい!!この辺で―――」
「近い」
「グホッ!!」
あたしの肩を掴んだローグ。だけど、彼がいい終わるよりも早く、レオンがデコピンで彼を吹き飛ばしてしまう。
「おま・・・それはひどくね?」
「?今のは近すぎでしょ?」
思いきり地面にめり込んでいるローグを見て変な汗をかいてるグラシアン。だけど、レオンは全く悪いと思っていないみたい。確かにびっくりしたけど、あれはやり過ぎ・・・いや、だからデコピンにしたのかな?力加減ができてないだけで、実際はかなり相手を配慮してるものだもんね。
「それで?何が聞きたかったの?」
「ふ・・・フロッシュを見なかったか?」
かなり負傷しているように見えるローグが聞きたかったことを質問する。フロッシュって・・・あのカエルのことだよね?
「それならさっきあっちにいくのを見たよ」
「一人みたいだったけど」
「ありがとう!!」
それを聞いた途端、すぐさま駆けていく剣咬の虎の人たち。フロッシュがどうしたのかな?もしかして迷子とか?
「お客様、こちらになります」
あたしたちが一悶着していると、どうやらケーキのラッピングが終わったらしい。それに気付いたレオンが氷の造形でソリを作り出し、箱に入れられたケーキたちを崩れないように重ねていく。
「さて、ラウルをどこかで回収しないとな」
「そうだね」
誰かを見つけた途端にいなくなってしまったラウル。もしかしたら彼も迷子のようなものなんじゃないかな?フロッシュとラウル・・・抜けてる感じが、なんとなく似てるかも。
グラシアンside
「フロッシュ!!どこだぁ!!」
レオンとシェリアから聞いた場所にいってみたのだが、そこにもフロッシュはすでにいなかった。ちょうど天馬の一夜がいたから彼にも聞いたが、全くヒントにならずに時間だけがすぎる結果になったのはもったいない。
「あ!!見てください!!あそこ!!」
近くの人が大勢いる公園までやってきた俺たち。すると、ユキノが何かを見つめているフロッシュを見つけたのだった。
「いた!!」
「フロッシュ!!」
「よかった!!」
無事にフロッシュを見つけることができ、ホッと一安心。すぐさま彼の元に駆け寄ろうと俺とスティングが動く。だが、肝心な男が動かない。いの一番にフロッシュの元に向かいそうな奴が、全く動こうとしないのである。
「おい!!」
「何やってんだローグ・・・」
振り向いた俺とスティングは、後ろの二人を見て固まってしまった。なぜなら、ローグがユキノの大きな胸を鷲掴みにしていたからだ。
「何してんだよ!!」
「こんなときにてめぇは!!」
すぐさま変態にブレスをぶちこんでやると、ローグは地面に頭から食い込んだ状態になる。本日何度目かすら覚えていないが、全て自業自得だからしょうがないと思ってくれ。
「待ってくれ・・・あれをよく見ろ・・・」
ユキノに簡潔に謝罪したローグは、フラフラとした様子でフロッシュが見ているものを指さす。それは、この街の地図が書いてある看板だった。
どうやらフロッシュは一人でギルドに帰ろうとしているようだ。それを感じたローグは、心を鬼にして見守ることにしたらしい。
はっきりいうが、俺たちはあいつが一人でギルドに帰れるとは到底思えない。だが、ローグかできると言って聞かないので、しばらく様子を見てみることにした。
「お?歩き出した」
ゆっくりとどこかに歩き始めたフロッシュ。その方向はうちのギルドがある方角。合ってる。合ってるぞフロッシュ。
・・・と思ったのも束の間、目の前にカエルが飛んでいるのを見かけた奴は、それを追いかけ始めてしまった。そして、そこからは本当に色々と大変だった。
暴走した馬車がフロッシュに突っ込みそうになり、それを見たローグが影になり馬車に乗り込んで止めようとしたが例によって乗り物酔いで意識を失った。だが、結果的にはそれが幸を奏してフロッシュを救う結果になった。ローグはまたしてもボロボロになったが。
それからしばらく様子を観察していると、今度は人魚の踵のカグラ、ミリアーナ、ソフィアにあった。
「お前、私のところに来るか?」
「何!?」
するとどうしたことか、カグラがフロッシュを抱えてそんなことを言い出した。なんでも彼女は妹がほしいらしい。そもそもフロッシュの性別がどっちなのかいまいちわからないが、一つ言えるのは・・・
「ソフィアでいいだろ、妹は」
年齢的なものと生物学的なものでフロッシュよりもソフィアの方が妹としてはあっていると思う。一人でなんともしょうもないことを考えていると、なぜかものすごいプレッシャーを放つ三人の女性。
理由は単純、全員がフロッシュをほしいと考えたからだった。
カグラは妹として、ミリアーナは猫として、そしてソフィアは抱き枕として。戦いをおっ始めるかと思われた人魚たち。だが、誰の元にいきたいか本人に聞こうとなってその場は収まったのだが、肝心のフロッシュがどこかに消えてしまっていた。
「おいおい!!俺たちもフロッシュを見失ったぞ!!」
「匂いだ!!匂いで追え!!ローグ!!」
「任せろ!!」
フロッシュと付き合いの長いローグの鼻を便りに居場所を突き止めようとする俺たち。その甲斐あってか、フロッシュはすぐに見つかった。おかしな奴等に絡まれていたが。
敵は自称カエル専門トレーナーなる連中らしい。色々と突っ込みたいのは山々だが、今はそれどころではない。捕まりそうになっているフロッシュを助けようとした。だが、なぜか奴等は近くにいたルーシィを網で捉えていた。
「よぉ、フロッシュじゃねぇか」
なんという偶然なのだろうか、その場に居合わせたのは同じ滅竜魔導士のナツとハッピー。その場に居合わせた彼らが、カエル専門トレーナーを撃破。同時に街の一部も大破。
「ここまでやるか?」
「さすがナツさん!!いつも全力でカッコいい!!」
「そ・・・そうか?」
ただ力をセーブする能力がないだけではないのだろうか。だったらレオンやジュラみたいに相手の力量に合わせて戦ってくれる奴等の方がカッコいいと俺は思う。
その後もフロッシュは様々な冒険?をした。グレイとジュビアに遭遇し、事情を話すことに成功したフロッシュは、彼らの提案でギルドまで送ってもらえることになりそうだったのだが、セイバーの一員としてギルドに一人で帰れるようになりたいと考えたらしくそれを断った。グレイもジュビアもせっかくの好意を断ったことに嫌な顔ひとつしないでくれたので、内心安心したのは俺だけじゃないはず。
その次にあったのはエルザ。彼女には道を尋ねたらしく、エルザも上手に教えてくれたようで理解するのも早かった。
「ところで、何を買ったんだ?」
「お揃いなの。着てみる?」
そういってフロッシュが取り出したのは自分が着ている着ぐるみの人用のサイズ。それをなんと、ローグに着せようとしているらしい。
「フロッシュー!!」
「お前・・・あれ着るのか?」
「キャラ崩壊だな」
自分のために友が買ってくれたもの。嬉しくて号泣する気持ちもわからなくはないが、こいつがあれを着ると思うと色々と大丈夫なのかと心配になる。
エルザに誉めてもらい満足したフロッシュは、彼女から教えてもらった道をゆっくりと進んでいく。
街の中の噴水の脇を通り抜け、山を越え、ボコボコとした道を進んでいく一匹の猫。いつもは頼りなく、二匹の友にベッタリのそいつが一人で目標を持って進んでいるのを見ると、どこか感慨深いものがある。
山を越えてついた街。その時にはすでに日も落ち、彼の疲労もピークに達していた。目を閉じ、眠りながらも歩を進めるフロッシュ。今の彼は、仲間たちが待つギルドに帰ることで頭がいっぱいなのだろう。
「頑張れ、フロッシュ」
それを見ている全員が、自然に応援していた。
「フロッシュ・・・よくこんなところまでたった一人で・・・」
相棒の努力を根気強く見ていたこの男は、涙ながらにそれを見ている。まるで、自分の子供を見ているかのような、そんな感じで。
「わぁ!!着いた!!」
目の前に建つ巨大なギルド。おそらくエルザから聞いた道順通りにやって来たのだろう。それを見たフロッシュは、ようやく達成したことに両手を上げて喜んでいた。
(今すぐ飛び出してやりたい・・・そして、こういうんだ)
ようやく目的を果たした彼を見て、ローグは顔をあげる。その目に映るのは、妖精の形を模したような、そんなギルドマークが描いてある旗。
「ここじゃねぇ!!」
「フローもそうもう」
俺たちが着いたのはマグノリアにあるギルド、妖精の尻尾。全く検討違いのその場所に俺たちは来てしまったのである。
てか山を越えた時点で気付けよ!!街から出てないんだから山越えるわけねぇだろ!!
そのあと結局、疲れたフロッシュはローグの背中で寝息を立て、ギルドへの帰路へとついた。
「よく頑張ったな、フロッシュ」
起こさないような小さな声で呟く影竜。なんだかさらに深まった二人の愛に、付き合っていた俺たち全員、疲れも吹っ飛んだのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
余談ですがシャルルとセシリーが見つけた知り合いは察しの通りラウルです。本当は彼女たちも出そうかと思いましたが、面倒になりやめてしまいました。
次の話はアニメだと「ムーランルージュ」でしたけど、これはやりません。シリル絡まないし。
あえてグレイたちとビリヤード対決でもしますか?どこかの王子様たちみたいに。
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