フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち~
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ゼロの使い魔編
三章 王女からの依頼
宝探し
前書き
士「今度は宝探しか~。」
セ「ええ。ところでシロウ、貴方にとって宝とは?」
士「え?特にないけど・・・強いて言うなら、遠坂から貰ったペンダントかなぁ。そういうセイバーはどうなんだ?」
セ「フッ、そんなの愚問ですね。」
士「ああ、そっか。何せセイバーは本物の宝剣を持っているn」
セ「シロウのご飯です!!」
士「さいですか・・・。」
「では、認めるのですね。」
「はい・・・。」
トリステインの王都、トリスタニア。そこにそびえる王城の庭園で二人の女性がお茶会をしていた。
一人はトリステインの王女、アンリエッタ。そしてもう一人はトリステインの大后のマリアンヌである。元国王の妻であったが、崩御してからも女王になることはなく、王妃という身分に座り続けている。
お茶会と言ってもその話の内容は決して軽いものではない。マリアンヌの真剣な、そしてアンリエッタの沈んだ表情を見ればそれは容易に察せられる。
その内容とは、ウェールズ皇太子との関係、そして数日前にアンリエッタの独断で魔法学院の生徒数名をアルビオンに向かわせたことである。
「・・・先ほど、ゲルマニアから使者が来ました。今回の婚約はなかったことにすると。」
「申しわけ、ありません・・・!」
マリアンヌの言葉を聞いたアンリエッタは、より一層顔を暗くし頭を下げた。
今回のゲルマニアの政略結婚は、アルビオンに対抗するための重要な国事であり、それがダメになったということはもはや国家レベルの大問題である。
更にはアンリエッタの極秘任務の件も厄介だった。いや、任務自体は彼女が国を想っての事とも捉えられるのでまだ良い。だが誰にも相談せず、それもこれからの国を担うであろう貴族の子どもたちを利用したというのはマズかった。現に貴族の中にはアンリエッタの行為に異議を申し立てている者も少なからずいる。
「私の軽率な行いで…全ては私の責任です。どのような罰も受け入れ―――」
「アンリエッタ。」
マリアンヌのやや強めの口調がアンリエッタの言葉を打ち切った。ついビクリと肩を震わせる。どんな罰も受け入れる、その言葉と覚悟に嘘偽りはなかったがやはり恐いものは恐かった。
だが、
「顔をお上げなさい。」
次に彼女にかけられた言葉はひどく穏やかだった。恐る恐る顔を上げると、そこには口調通り優しく微笑むマリアンヌの姿があった。
「貴女はもう十分な罰を受けているではありませんか。」
「っ!」
―――――ウェールズという恋人の死。
その悲劇は、アンリエッタに深い苦しみを与えた。
スッと椅子から立ち上がりマリアンヌはアンリエッタの後ろにまわる。そしてフワリと優しく彼女を抱きしめた。
「過ぎたことにあれこれ言っても仕方ありません。全ては運命と受け入れましょう。」
「おかあ、さま・・・!」
耳元で囁くその声は太后と王女という身分を忘れた、母親のそれそのものであった。そしてアンリエッタもまた、娘として泣きつくのであった。
「だからアンリエッタ。あなたは新しい想い人を見つけなさい。」
「え?」
――――ドキリ
母からの言葉に、自身の心が今までとは違う反応を示したことにアンリエッタは気付いた。
――――新しい、想い人?
『だから・・・今はいいんですよ、我慢しなくても。』
不意に浮かび上がったのは一人の少年の姿であった。
自分の最も信頼している友であるルイズの傍らにいる少年。最初出会った時は自分に反発してきたりもした。だが、次に会った時はいま母がやってくれているように優しく抱きしめてくれた。
『貴女は王女である前に、一人の女の子なのですから・・・。』
――――ドクンッ
その温もりを思い出すと、何故だか頬が熱くなるのを感じた。
何でだろう。
自分はウェールズのことを今なお愛しているはずなのに・・・。
でも、
「(もう一度、あの声が聴きたい・・・。)」
カゲサワ・カケル
その真意がどうあれ、アンリエッタにとって彼は特別な存在になりつつあった。
「(あらあら。)」
マリアンヌは娘のその様子を見て苦笑した。
先程の自分の言葉を聞いて以来ずっと上の空である。
「(これは私が口にするまでもなかったようですね。)」
ならばしばし見守っていこう。一国の王族として、そして一人の愛しい娘として。
この子がどのような選択をし、進んで行くのかを。
「(でもウェールズ皇太子ほど心を許す相手っていうのも気になるわね。今度この子に密偵でもつけてみようかしら。後はその人の素性を根掘り葉掘り調べ上げさせて、それから・・・)」
さすが王妃。職権乱用もレベルが違う。
「宝探し?」
「そう、そうなのよ!」
あくる日の朝、いつものようにルイズが寝ている間に洗濯をするため外に出ていた架の元にやって来たのはキュルケだった。
用向きというのは架の言葉から分かるとおり、宝探しに行かないかという誘いだった。
「なぜまたそんな急に?」
「ほらこれ見て!前に城下町に行ったときに手に入れたのよ。」
と、キュルケが見せたのは数枚の地図であった。生憎この世界の地理に疎くしかも文字が読めない架だったが、どうにか何かを示す地図だということは分かった。
「カケルってば、まだこの国のことあまり知らないでしょ?だから観光しながらついでにお宝を探すってのも面白いかな~と思ったわけ。」
「ふむ・・・。」
キュルケの話は、架にとって魅力がないわけではなかった。
幼い頃、衛宮切嗣に助けられた彼はその後いろいろな場所に連れて行ってもらった。あの時に得た未知との遭遇による高揚感は、今でも鮮明に覚えている。あの高揚感をもう一度ここで味わえる、それは魅力的といえば魅力的であった。
しばしの間悩んだ架だが、しかし首を横に振った。
「せっかくだがなキュルケ。今の俺はルイズに仕える使い魔なんだ。行くかどうかは、まずあいつの話を聞いてからでないと。」
日頃の仲を考えて、キュルケの誘いにルイズが乗るとも思えんが、と架は付け加える。
するとキュルケは待っていたかのようにニッコリと笑ってみせた。
「そう言うと思ってたわ!」
「ん?」
「これを見なさい!!」
ばばーん!
効果音がつく勢いで掲げたのは一枚の手紙であった。しかし・・・
「・・・すまんキュルケ、俺は文字は読めないんだが。」
「え・・・あ、ああそうね!えっとね・・・」
慌ててキュルケは手紙を読みだした。
「『今日は用事があるから好きになさい。キュルケの言うことに従っていればいいから。 ルイズ』・・・ですって。」
「む?」
果たしてルイズがそんなことを言うだろうか?あれだけ自分とキュルケがくっつくのを嫌がっていた彼女が。
だが、文字こそ読めないがその筆跡は見覚えがある。それに使い魔の自分にも介入できないほどの用だと言われれば、架も引き下がるほかはない。
やがて架は観念したように言った。
「なら、同行するとしようか。」
「ホ、ホントに!?やったー!」
「(そんなに宝探しをしたかったのか?)」
心底嬉しそうにはしゃぐキュルケ。それを見た架は全く見当違いなことを思いながら「少し待ってろ。」と言い、一旦部屋に戻っていった。
もし、彼が主君のルイズ以外に興味がないような人であれば、今回の話も一蹴していただろう。だが、それではせっかく自分の為に宝の地図まで用意してくれたキュルケに申しわけない。
早い話が、架もまたどこぞの正義の味方を志す少年と同じように、頼まれると中々断れない性格なのである。
部屋に戻ると、ルイズはまだベッドで眠っていた。
ならばいつ手紙を書いたのかなど、やはり疑問は残るがそれでも架はルイズの頭を撫でながら囁いた。
「少し出かけてくるぞルイズ。お前も用事とやらをしっかりな。」
ここで架が魔術師として優秀であれば気付くことはできたであろう。
ルイズには催眠魔法がかかっていることに・・・。
「うふふふふ、上手くいったわ~!」
自分の思い通りに事が進んで、キュルケは大満足であった。
彼女の立てた作戦はこうだ。
架とどうにかお出かけしたいが、ルイズがそれを認めるはずがない。また架自身も、自らルイズの元を離れることをしないだろう。
ならば『ルイズが架に指示をした状況』をつくればいいのだ。
ということで、寝ているルイズに催眠魔法をかけ、キュルケとともに行くよう手紙を書かせたのであった。因みに肝心なところで邪魔をされないように後3時間ほどは目を覚まさないようにしてある。
「ホント協力ありがとね、タバサ!」
「・・・べつに。」
と、キュルケは魔法をかけた張本人のタバサに礼を言う。背後から抱き着かれたタバサはやはり無表情で答えた。
「しかしホントに大丈夫かい?ばれたらきっと、怒られるどころじゃないと思うんだけど・・・。」
心配そうな声を出すのはギーシュだった。もしお宝が宝石の類であれば、彼の使い魔の力が必要になると、今回の一行に参加させられたのだ。
ギーシュの言葉に「ま、そん時はそん時よ。」と適当に返す。
こうして、架やキュルケたちをはじめとした4人はシルフィードに乗って学院を出発したのであった。
天空に浮かぶアルビオン王国。
現在は王家であるテューダー家はレコン・キスタによる反乱によって滅ぼされ、神聖アルビオンを名乗っている。
「フ、フフフフ、素晴らしい!」
王城のとある一室で、レコン・キスタの指導者、クロムウェルは自身の指に付けている指輪を掲げながら高笑いをしていた。
「これが、これが『アンドバリの指輪』の力か!フハハハハ!全く持って素晴らしい!!」
指輪の名はアンドバリ。
以前ラグドリアンと呼ばれる湖から奪った代物である。人の意識を奪い、こちらの思いのままに操れる力が宿っているが、実はもう一つ効果があり今日はそれを試したのだった。
結果は成功。ものを言わない死体が指輪を翳すとムクリと起き上がり、こちらに跪いたのである。
これを目の当たりにしたクロムウェルは、傍らにいたもう一人の人物に振り向いた。
「ご覧いただけましたでしょうか、『先生』!!」
「ええ、本当に見事なものです。」
『先生』と呼ばれたのは、白衣を着た青年であった。肩まで届きそうな金髪に眼鏡をかけている。クロムウェルに微笑みながら返事をする様子はいかにも好青年といった印象だ。
ただ唯一、額に刻まれているルーンが、この男が普通の人間ではないことを物語っていた。
「まったく、あの時はこれを奪うのに協力していただき感謝いたしますぞ。」
「いえいえ。私もトリステインに伝わる秘宝の力を拝見してみたかったので。・・・それでクロムウェル殿。以前から申しあげていたその協力の報酬についてなのですが。」
「おお、そうでしたな!私としたことが失念していた。どうぞ、私に用意できるものでしたら何なりと。」
先生の言葉にクロムウェル思い出したように声をあげ、胸に手を添えながらこちらに恭しく頭を下げた。
仮にも組織のトップが先生と呼びここまで謙るのだから、この男もしくはこの男のバックは相当なものであることが窺える。
一方先生は「いえ、報酬というほどでもないのですが」と前置きすると、今だ跪いたまま微動だにしない男を指さした。
「まず一つ目ですが、彼の身柄をこちらで預からせて頂きたい。」
「?彼ですか。まあ、こちらとしてはもう必要ありませんが・・・。しかしなぜ?」
クロムウェルは訝しげながらも了承した。
疑問に思うのは無理もない。彼は偽りの命を吹き込まれたいわば人形なのだ。それを引き取ってどうするというのか。
すると先生は片目を閉じながらニヤリと笑ってみせた。
「何、これはいずれ役に立ちますよ。何せ彼はトリステインの・・・」
そこまで言われてクロムウェルも察した。そして目の前の男同様ニヤリと笑ってみせる。
「ククク、なるほどぉ。先生も中々面白いことを考えますな。」
「フフフ。」
「して一つ目、ということは他にも何か?」
「ええまあ。もう一件引き取りたいことがあるのでその提供とそれを運ぶための人員を少々お借りできないかと。」
わざわざ『引き取る』という言い方をするということはこちらもクロムウェルにとって要らないものなのだろうか。
「一体何を・・・。」
「実は・・・」
「まったく、あの男の考えていることはよく分からん。」
先生が帰っていった後、一人になった部屋でクロムウェルは呟いた。
いかに奇怪な人物でも彼の背後にはあの大国があるのだ。あまり無下にはできない。まあアンドバリの指輪を奪取するのに協力してもらったのも事実であるわけだし。
「しかしあんなものをどうするというのだ。」
“此度の反乱によって生じた死体を敵味方問わず全て回収し持ち帰りたい”などと・・・
コンコン
「失礼致します、クロムウェル様。」
「何だね。」
「こちらを。」
入ってきた部下に手渡されたのは一枚の手紙だった。「ご苦労」と部下を下がらせ手紙の中身を見てみる。
『我ら、トリステインの侵入に成功』
たった一文だけであった。しかし命じた本人のクロムウェルは誰からのものかはすぐに分かった。
「フフフフフ、良いぞ!全てが順調だ!世界は私のために回っている!フハハハハハハハ!!!」
薄暗い部屋でクロムウェルは再び高笑いをするのであった。
「う~ん、あれ今何時よ・・・?」
日がすっかり高く昇った頃、ようやくルイズが目を覚ました。
何だか深く眠っていたような気がするが・・・。
ぼんやりと時計を見やったルイズだったが、直後ガバリと跳ね起きた。
「ってもう昼じゃない!?カケルってば何してるのよ!?っていうかいないし!!」
いつもなら起こしてくれるはずの彼の姿はなかった。とにかく着替えようとしたルイズは、ふと机に何か置いてあるのに気がついた。
「なにこれ?手紙?・・・タバサからだわ。」
『貴女の使い魔をキュルケと一緒に連れていく。追い付きたければ、いずれタルブという村に行くことになるからそこに来て。』
「キュゥゥゥゥゥゥルゥゥゥゥゥゥケェェェェェェェェェゥゥゥゥウウウウウォォオオオォオァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!」
その怒号と気迫を感じとったヴァロナは後にこう表現したという。
『だれかバーサーカーでも召喚したのかと思った・・・。』
まあ無理もないよね~
後書き
またも二か月ぶりで申しわけありません!
現実の零水はちょっと人生の山場的な状態でして、今後もこんな不安定さが続くかと・・・。
前回も言ったけど、七人そろうのはいつの日か~。
あ、それでも感想、評価はいつでもウェルカムです!!
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