おたまじゃくし
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2部分:第二章
第二章
「何だよ。日本のお菓子なら食ったことあるぜ」
「ああ、あるんですか」
「日本に行ったこともあるからな」
それでだ。知っているというのだ。
「いい国だよな。優しい雰囲気でな」
「はい、それでその日本人がですね」
「日本人が。お菓子屋をはじめたのかよ」
「それが凄く面白いお菓子らしいんですよ」
「和菓子か?」
クラークはエミーの話を聞いてだ。まずはこう言った。
「和菓子屋でも開いたのかよ」
「詳しいことはわかりませんが」
「まずは行ってみろっていうんだな」
「そうです。どうでしょうか」
「じゃあ行ってみるか」
少し考えてからだ。クラークはエミーに対して答えた。
「その日本人の店な。ただな」
「ただっていいますと?」
「日本人って色々やってるよな」
クラークも日本、そして日本人についてはある程度だが知っていた。そしてこう言ったのである。
「だからあそこまでなったんだろうな」
「そうですね。あの国は」
「中の人達もな。ボルチモアまで来てか」
「まあそれでその日本人のお店に」
「行って来るな。今からな」
「じゃあ住所今からメールでお伝えしますんで」
「頼むぜ」
こうした話をしてだ。そのうえでだった。
彼はエミーから受けたその店に向かった。場所は彼の家、店も兼ねたそこから車で少し行ったところにあった。それでその店に行くとだ。
明らかに日本人のだ。アジア系の顔をした三十代の黒髪の女がいた。少し小柄で目は切れ長だ。その女が店にいてだ。こう客達に言っていた。
「はい、美味しいよお」
「買って買って」
ややたどたどしい英語で言う。そしてだ。
集っている客達に菓子をどんどん売っていた。店は繁盛していた。
クラークはその繁盛している店に来てだ。そしてだ。
並びそれからだ。菓子を買うのを待った。そして菓子を見るとだ。
「何だこりゃ」
思わずこう言ってしまった。何とだ。
菓子はチョコレートやクッキーといったオーソドックスなものだった。ボルチモア、そしてアメリカの何処にもある様なありふれた菓子である。
クラークの店でも売っている。どの菓子も。しかしだった。
彼はその菓子を見て目を瞠ったのだ。何とだ。
蒸しの形をしていたのだ。まずはチョコレートだった。
カブトムシやクワガタだった。それを見て言うのだった。
「カブトムシなんか食えるかよ」
「あはは、そう思ったよね」
日本人の方もだ。笑ってクラークに言ってきた。
「カブトムシだって」
「そうだよ。カブトムシにな」
「クワガタなんてな」
「こんなの食えるのかよ」
「虫の形だけれどね」
だがだ。それでもだというのだ。
「中身はチョコレートだよ。それにね」
「ああ、これもな」
クラークはキャンディを見た。そのキャンディもだ。
テントウムシだった。それを見てまた言うのだった。
「こんなのあるのかよ」
「面白いだろ」
「面白いっていうかな」
「驚いたんだね」
「ああ、そうだよ」
まさにそうだと答えるのだった。そしてだ。
とりあえず目についた菓子を買う。そしてだった。
そのうえでだ。こうも言った。
「それにしても変わってるな」
「そう思うね」
「思わない方がおかしいだろ」
日本人に対してだ。こうも言ったのである。
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