想い人
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2部分:第二章
第二章
「百回のうち九十九回ね」
「つまり夜はいつも将軍様と一緒なのね」
「目を閉じれば瞼に」
「うんざりだわ」
心底だ。静はこう思っていた。
「正直何かって思ってるわ」
「あんなの好きな人いないしね」
「独裁者だわ女好きだわ」
「しかも自分だけ贅沢して国民餓えさせてるわ」
自己中心的やそういった次元ではなかった。
「おまけに拉致するしテロするし」
「最低人間の中の最低人間だしね」
「菅直人とどっちが下かって位のね」
「本当に最低な人間だから」
誰も好きだとは思えなかった。そのことはだ。
それでだ。彼女達も静に言うのだった。無論彼女達も飲んでいる。それぞれの手には大ジョッキのビールがありそれぞれ皿がある。
カウンターに並んで座ってだ。彼女達は言うのだった。
「そういう時はあれよ」
「もういいことを思って寝るとか」
「あと枕に動物のバクの写真入れるとかね」
「それか彼氏と一緒に寝るとか」
「一応同居してるわよ」
バクはともかくそれは既にだというのだ。
「一緒のベッドにも毎晩寝てるし」
「ふうん、することもしてるんだ」
「そうなのね」
「してるわよ」
一応こう言う静だった。
「だって付き合ってるんだし」
「けれどあんたいつも飲んでるじゃない」
「それでそういうのできるの?」
「飲んでべろべろになって」
「それでもできるの?」
「時々ね」
ここでだ。静はバツの悪い顔になった。黒のロングへアの中の大きな目を持ちわりかし整った顔でだ。こう同僚達に言ってみせたのである。
「してるわよ」
「時々ねえ」
「じゃあ飲む方が多いのね」
「そうなのね」
「趣味はお酒だからね」
悪びれずにだ。静は言った。
「そうしてるのよ」
「いや、それって駄目でしょ」
「お酒ばかり飲んでても」
「大体仕事が暇だったらいつも飲んでるじゃない」
「週に何回も」
そこまで飲んでいるのだった。
「部屋でもそうなの?帰ったら?」
「やっぱり飲むのね」
「飲むわ。っていうか毎日飲んでるわよ」
静はここでも悪びれない。
「私の血はビールと日本酒とチューハイでできてるのよ」
「で、時々彼氏としてなのね」
「それで夢に出るのは将軍様ばかり」
「そうなってるのね」
「お酒はいいとして」
それでもだというのだ。
「夢はどうしたものかしら」
「将軍様ねえ。どうなのかしら」
「本当に枕にバクの写真入れてみたら?」
「そうしたら悪夢は消えるからね」
「それしたらどうよ」
「それも手かしら」
考える顔でだ。静は飲みながら言った。
「っていうか彼氏は見ないのよ」
「見るのはあんただけなの」
「そうなのね」
「お酒に関係あるのかしら」
いい加減だ。静もこう考えだした。とはいってもジョッキは手から離さない。
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