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魔法少女リリカルなのは ~最強のお人好しと黒き羽~

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プロローグ1 高町 なのは

 
前書き
どうも、IKAと申します。

この作品が初めてという方は以後お見知りおきを。

私の別作品から流れ着いた方はご無沙汰しております。

この作品を見ていただきありがとうございます。

今作は王道二次創作を私の中でのコンセプトとしておりまして、難しいことは取り敢えずほっぽって書きたいように自由に書くことを目標にしております。

王道二次創作と言えば、鈍感で一級フラグ建築士で最強の主人公がハーレムを作る! だと思います。

私自身、そう言う作品にはどこか飽きを感じていたのですが、最近になって王道の良さを思い出しました。

なので今書いている他の作品よりも更に王道の、こってこての王道小説にしようと思っています。

キャラ崩壊平気で発生するので、ストレスを感じた方は真っ先に別の作品へ移動することをお勧めします。

ついてこれる奴だけついてこい!!

 

 
 ――――その日の夜、彼女/高町 なのはは夢を見た。

 真夜中の森。

 それは月明かりすら届かない漆黒の世界。

 野生の生き物の鳴き声。

 風で木々がざわめく音。

 自然に存在する当たり前の音だけが響くはずだった。

 そんな世界で小さな発光が起こる。

 蒼い光。

 人工的ではない、しかし蛍などではないその光は黒く蠢く“何か”と共に森の中を駆け巡る。

「はっ、はっ、はっ……!」

 次に、息を荒げながら走る声と音が聞こえた。

 幼い少年の声。

 見慣れない衣服に日本人ではない髪色、瞳の色をした少年が、黒い何かから逃げるように走っていた。

 森を抜けた先に、小さな湖があった。

 釣り堀なのか、小船がいくつか置かれていたそこで、彼は立ち止まった。

 それ以上先へは進めない。

 逃げることを諦めた少年は振り向き、立ち向かう選択をした。

 すでに全身は砂埃や擦り傷などで汚れ、満身創痍。

 しかし彼の瞳は決して諦めている人のそれではなかった。

 ポケットの中に右手を入れ、“それ”を取り出すと、迫る黒い何かに向けて伸ばす。

 ビー玉のように小さな、しかし真っ赤な輝きは小ささを感じさせない程の存在感を放つ球体を出すと、それは強い光を放った。

 それに次いで少年は何かを唱えた。

 聴き慣れた日本語の言葉なのに、その意味はわからない。

 わかるのは、その言葉を言い終えた所で黒い何かは強い光と共にその形を失い、霧散していったこと。

 蒼い光を放ったひし形の宝石だけを残して、少年も倒れたと言うこと。

 それが高町 なのはの見た、不思議な夢だった――――。


*****


 家族がいて、

 友達がいて、

 お家とベッドとご飯の心配をしてなくてよくて、

 学校だって楽しいのに、

 平凡な日常を幸せに、楽しんで生きてるのに――――

 なんでなのかな?

 寂しくなる理由なんて、どこにもないのに。

 悲しいような、苦しくなるような、

 行き場のない気持ちが――――胸の奥から出て行かない。

 私/高町 なのはは海鳴市の海岸沿いで、大声で叫んだ。

 言葉じゃない。

 ただただ、胸から出したかった感情を声に乗せただけのもの。

 誰もいないから、気にせずできた。

 スッキリしたいのに、涙が流れてきた。

 怒りのような寂しさは、波のように叩きつけてきて。

 それなのに、どうすればいいのか分からないもどかしさが、ストレスとなって再び溜まりだす。

 叫ぶ。

 叫ぶ。

 ただただ、叫び続ける。

 波が防波堤を叩きつけた音でかき消されたとしても、私は叫び続ける。

「はぁ……はぁ……っ!」

 一体、どれだけ叫んだんだろう。

 喉は痛くて、息も上がってる。

 声の出しすぎて頭がぼーっとして、立っているのも辛くなる。

 いっそ倒れてしまえば楽なのに、私は強がって立ち続けようとした。

 この強がりだって意味がないことなのに、それでも私は倒れたくなかった。

 だけど、

「ぁ―――」

 だけど疲れ過ぎたのか、限界を迎えていたのか、私は遂に後ろに倒れ――――、

「――――っと、大丈夫か?」

「え……?」

 倒れかけた私を、優しく抱きとめてくれた男の子。

 心配そうな表情で、しかし動揺や不安を感じさせない落ち着いた優しい声で、彼は聞いてくれた。

「具合が悪いなら、家まで送ろうか?」

「……」

 なぜか、言葉が見つからなかった。

 声を発しようとしたら、なぜか息を飲んでしまった。

 出そうとしたものを、なぜか飲み込んだ。

 なぜだろう。

 声を出したら、この瞬間が終わってしまう。

 それを、嫌だと思った。

 銀の髪に黒い瞳。

 整った顔立ちの彼に、なぜか私は釘付けになっていた。

 抱きとめられている体勢が恥ずかしいのに。

 今すぐにでも顔をそらしたいのに。

 なぜか身体は言うことを効かなくて、彼の瞳から目を逸らせなかった。

 彼の――――寂しそうな瞳を。

「……えっと……?」

「あ、ご、ごめんなさい!」

 どうしたのだろう? と言わんばかりに首をかしげる彼に、私はようやく我れを取り戻した。

 慌てて飛び退き、彼に深く頭を下げる。

「あと、助けてくれてありがとうございます!」

「ああ、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です!」

 動揺が消えなくて、声が上擦る。

 それもまた恥ずかしくて、私は視線を落としてしまう。

 上下白の制服に、茶色のカバン。

 黒いシューズを履いている姿を見て、ふと思う。

 彼のその制服には、見覚えが……と言うよりも、今の私と同じ服装だった。

「あの、もしかして私と同じ学園の人ですか?」

 少し落ち着いた声でそう聞くと、彼は多分ね、と曖昧な笑みを浮かべながら答える。

「俺、丁度さっき転入手続きしてきたばかりなんだ。 だから正式に生徒になるのは明日だ」

 そう言われて納得したことがある。

 彼の制服は新品だった。

 改めてよく見れば、洗濯をした時のような毛玉の跡すら残らず、折れ目やシワも一つとして見当たらない。

 春休みが終わってしばらく立つからクリーニング屋さんに出すわけもないし、変だなー程度に思っていた。

 それが転入生と言うのであれば納得がいった。

 そう思っていると、彼はあっ、と何かを思い出したように咳払いをした。

「そういえば、まだ自己紹介をしてなかったな」

 彼は姿勢を正し、真剣な表情になって挨拶をする。

「俺は小伊坂 黒鐘(こいさか くろがね)。 明日から私立聖祥大学付属小学校の四年生として転入することになった。 よろしくな」

 そうして左手を差し出す彼に、私は反射的に答えた。

「私は高町 なのは。 私立聖祥大学付属小学校の三年生です。 こちらこそ、よろしくお願いします」

 彼の左手を握り返すために、私も利き手である左手を差し出し、彼と握手をした。

 その時、私の中で小さな何かが生まれた気がした。

 小さな違和感。

 気にしなければ、本当に気にならない程度の存在。

 雲のようにふわふわしてて、曖昧で、形すらないそれに、名前なんて無くて。

 けれどそれは確かに存在して、小さな熱を帯びていた。

 胸の中に生まれたそれに疑問を抱きながらも、私は彼を……小伊坂君のことを見つめた。

 さっき見た、寂しそうな瞳はもう見えない。

 けれど私は驚かされた。

「それで、高町はどうしてあんな寂しそうにしてたんだ?」

 ――――私のほうが先に、寂しそうにしている理由を聞かれたから。

 だけど、驚いたと共にある疑問に納得した。

 なんで私が、彼の瞳に釘付けになったのか。

 それはきっと、目を離せなかったからじゃない。

 彼が、目を離してくれなかったから。

 まるで心を覗き込むような瞳は、私の中に入り込んで離れなかったんだ。

 私の心を読まれた。

 そう思うと、羞恥で顔を赤くしてしまう。

「……ああ、ごめん。 気が利かなかったな」

 そんな私の心情を察してか、彼から先に折れてくれた。

「初対面の相手にそんなことを聞くなんてどうかしてるよな。 今のは気にしなくていいから」

「は、はい……分かりました」

 苦笑気味に謝る彼に、私は上手く返事ができず、顔を逸らしてしまう。

 こんな経験は初めてだった。

 人と話すとき、ちゃんとその人の言葉が聞きたくて、私は相手の顔をしっかりと見る癖をつけていた。

 なのに、こうして目を逸らしてまともな返事もできない自分は、初めてで、訳が分からなくなりそうだった。

「……と、ごめん。 これからちょっと用事があるから俺はこれで失礼するよ」

 何か言わないと、と思っていた所で先手を打ってくれたのはまた彼だった。

 少し駆け足でその場を去ろうとしながらも、こちらのことを笑顔で見つめてくれる。

 結局、最後まで気を使われてしまった。

 罪悪感ばかりが生まれてしまっていた。

「あ、あの!」

 そう思ったら、私は大声で離れて行く彼を呼び止めた。

 彼は立ち止まり、なんだ? と返した。

「その……ま、また会えますか!?」

 こんな終わり方は、納得したくなかった。

 このままでは、後悔だけで終わりそうだったから。

 だから今度は、ちゃんと私の言葉を届けたかった。

 なぜか、不思議とそう思ってしまった。

 変なことを聞いたと、後々になって後悔した。

 けど、彼はそんなことも気にせず、

「ああ、絶対に会えるさ!」

 屈託のない笑みで、私に希望をくれた。

 それが私と小伊坂君の、最初の出会いだった――――。 
 

 
後書き
というわけでなのはsideのお話を書かせていただきました。

いきなりですが謝罪です。

このお話しでお気づきですか?

高町なのは、9歳です。(おいおいとかのツッコミ待ちではなく)

9歳の心理描写にしては細かすぎました、と言う反省です。

リリカルなのはと言う作品自体、心理描写が大人びてる所があるので気にならない人が多いと思いますが、私が書くとさらに多かった気がします。

なので心理描写は言葉は多いけど、『なぜか』と疑問系のような心理描写を中心にしてみました。

色々と感情や想いが生まれる。

しかしそれに名前や言葉を付けると、なんて言うのか分からない。

そんな未熟さや幼さを残せれば……と思いました。

今回は以上です。

次回、お楽しみに。 
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