戦国異伝
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第二百四十五話 夜においてその十
「民を勝手に奴婢にするなぞ」
「上様も同じお考えじゃ」
「では」
「魔界衆を倒し天下を収めてな」
「そのうえで」
「次は南蛮となろう」
「そうなりますか」
「そして南に出る」
海の向こうにある美麗の島や呂宋にというのだ。
「あの者達と戦い天下を手に入れるぞ」
「だからこれからも戦はある」
義弘も家久に言った。
「わかったな」
「よくわかり申した」
「我等もそれは同じじゃ」
「ですな、それでは」
「しかし。南蛮は」
ここで言ったのは義久だった。
「どうもな」
「好ましくないと」
「耶蘇教の者以外を奴婢にするとは」
こう元親にも言うのだった。
「あまり」
「神仏に違いはありませぬ」
義弘も言う。
「神も仏もです」
「共に敬うべきであってな」
「どちらかというものではないですが」
「しかしか」
「南蛮では違いますな」
「耶蘇教でなければか」
義久はまた言った。
「そうした者は」
「奴婢にしてもよいとなっておるとか。そして」
「さらにあるか」
「もっと言えば殺してもです」
「構わぬのか」
「それも獣に食わせたり生きたままじっくりと焼いたりとです」
「酷いな」
そうl聞いてだ、義久も顔を顰めて言った。無論他の者達も同じだ。
「それは」
「はい、そうした者達なので」
「やがてはか」
「我等ともです」
それこそというのだ。
「ぶつかるかと」
「そうであろうな」
「そういえば」
ここで言ったのは歳久だった。
「耶蘇教の坊主にはです」
「邪な者もおるか」
「そう聞いています」
「邪な坊主もおるのは日本も同じじゃが」
「はい、耶蘇教も同じでしかも」
「奴婢のこともか」
「集めておるとか」
「坊主がです」
「何という坊主達じゃ」
元親もその話を聞いて顔を顰めさせていた。
「その様な坊主達は流石にな」
「本朝にはいませぬな」
「はい、人買いですな」
「それを坊主がするとは」
「想像も出来ませぬ」
元親は歳久にも答えた。
「到底」
「しかしそれをです」
「南蛮ではですな」
「坊主がそうします、他にもそうした酷い行いもです」
「坊主達がしますか」
「自ら」
「そうした者達を放っておけば」
ここで言ったのは家久だった。
「天下は何処まで腐るか」
「うむ、だから南蛮はな」
「腐っておりますか」
「耶蘇教の坊主達はな」
「そうなのですな、では」
「やがて上様も断を下される」
間違いなくとだ、歳久は弟に話した。
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