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真田十勇士

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巻ノ三十一 上田城の戦いその十一

「何の心配もいらぬ」
「はい、若殿もご安心下さい」
「我等は殿も若殿もお護りします」
「そしてその時は悠々と逃れましょうぞ」
「さながら仙人が雲に乗って去る様に」
「うむ、頼むぞ」
 信之は十人に笑って応えた。
「これからな」
「わかりました」
「ではこれよりです」
「徳川殿の陣に入りましょう」
「そうしようぞ」
 こう話してだった。一同はその徳川の陣に入った。鳥居は使者が来たと聞いてまずはそれが誰かと尋ねた。
「誰が来た」
「はい、真田家のご子息が共に」
「信之殿と幸村殿がか」
「はい」
 そうだとだ、報をする旗本は答えた。
「それに傾奇者の様な変わった身なりの者が十人」
「そうか、しかしな」
「真田家のご子息が共にというのはですか」
「考えていなかった」
 とてもという返事だった。
「まさかな」
「はい、ですが」
「確かにじゃな」
「お二人です」
「そうか、それはまたかなりじゃな」
「それでどうされますか」 
 報をする旗本は鳥居に尋ねた。
「ここは」
「会うかどうかか」
「はい」
 この返事を確認する問いだった、旗本は鳥居にそれを問うたのだ。
「そのことですが」
「無論じゃ」
 鳥居は旗本に一言で返した。
「それはな」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
 このこともだ、鳥居は言った。それも周りの者達全てに。
「わかっておるな」
「はい、まだ戦にはなっていませぬ」
「弓を引く時ではありませぬ」
「それではですな」
「快くお迎えしろ」 
 信之と幸村達をというのだ。
「よいな」
「はい、武士としてですな」
「義を守り」
「そのうえで」
「殿はこの上なく律儀な方じゃ」
 家康のその気質も言うのだった。
「闇討ちやそうした策謀は好まれぬ」
「ですな」
「だからですな」
「ここは何もせぬ」
「一切」
「そうじゃ、手出しはならぬ」
 それも絶対にというのだ。
「殿のお名前を汚す様なことはするな」
「わかっております、我等も徳川の者」
「律儀の家の者です」
「そのことは守ります」
「必ず」
「そうせよ。敵であろうとも刃を交える時ではないからな」
 それ故にというのだ。 
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