とある地下の暗密組織(フォートレス)
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第1話
ep.005 『赤く染まる幼い少女編 3』
「おい、夢絶。」
話しかける。
反応など決まっている。
「あぁ?」
威嚇。ヤンキー顔負けの鋭い眼に、独特の首の倒し方、不良そのものだった。
「仕事だ。 早く支度をしろ。」
動じず、焦らず、響かず、反応さえしていないような対応。見えていなかったかのような回答を返す。
「断ったはずだろ? 今日はここで仕事んどくんだからよ。」
ポケットに手を入れて、
「なら別にいいんだぞ。 せっかく島崎 向子に頼んで良いモノを取り寄せたというのに・・・・・・、残念な奴だ。」
取り出し、
「この写真はお前から没収したことにして、御臼に差し出すとするか。」
見せる。
島崎 向子が持ってきた取って置きの一枚目。風呂場で服を着ている最中の御臼。来ているのはパンツのみ、上着を着ようとしている最中の一枚。
こんなおいしすぎる写真に夢絶が食いつかないわけがない。
ビリビリ
「よし、仕事の話をしようか。」
一か月間の無料使用権の紙を破きながら。
(これだと、もう一枚は必要なさそうだな。)
「ん? ポケットの中のもう一枚も寄越せよ?」
鋭すぎる勘だ。
「どんな感覚してんだよ。」
呆れながらも写真を渡した。
「んで、仕事ってなんだっけ?」
二枚目の威力に鼻にティッシュを詰めている最中の夢絶が言う。
「排除だ。 今回の任務では明らかに警備員に扮した敵の特殊部隊がいる事が分かっている。」
「ならなんで会議の時点でそれを言わなかったんだ?」
正論な質問。
「お前がもしあの時点で働いていたなら別にいう必要も無かったからだ。」
正論な回答。
「ハイハイ、そりゃあすいませんでしたねぇ。」
「行くな?」
叶世の真剣な一言がゲームセンターの賑やかな空間に穴をあける。
「行くに決まってんだろ。」
と夢絶が何故か不気味に、笑みを浮かべている。それも見ていて不快にならない笑みを。
「さすがに写真の向こう側の存在にでもなられたら、たまんねぇからな。」
吐く。
一方の3人組はというと、
とある小さない部屋の中。金属製の机に隠れる3人と少女。
「どうなってるんですかっ! さっきまで誰もいなかったのに何でっ!?」
鳴りやまない細かな火薬の音。一つ一つが大きいのにも関わらず、それが絶えず聞こえてくる。
「俺がやる。」
ルレシオ・ジン・シェイリアスの能力、闇暗漆黒。誰がどう聞いても厨二病患者の様にしか思えないだろうが、この名前は彼がつけた訳でなく、この能力の製作者である。まあ、その製作者がおかしかったのであろう。
球体。
真っ黒い球体が彼の手の中から出てくる。見方によっては生まれてくるというのかも知れない。
「いけ。」
球体は机の上に向かい円を描きながら、そのまま出口に向かい一直線、そして銃を持つ奴の胴めがけ突進。来ていた重みのある衣類から始まり肉体を抜け、また衣類を抜ける。音もなく何事も無かったかのように通り過ぎると、今度は何事も無かったかのように風に消えた。
「まずは一人。 次は・・・・・、・・と言うよりなんでこんなにもいる!」
ルレシオがキレる。腕を上げる事も出来ない現状暴れる事が出来ず、ただ噛みしめる事だけした。
ドゴンッ!
爆発、と言うよりは崩れるような音。銃声は鳴りやみ、代わりに礫の音がしている。
「おいおい、入ってすぐに攻撃とかマジ勘弁してくれよ。」
聞き覚えのある声。つまらなそうな感じがするトーンで言っている。
銃声はというと全くに聞こえなくなり、ただ一つの足音だけがコツコツと鳴り響いていた。
足音が鳴りやみ、もう扉の無い部屋の光に入口に人影が見える。
「オイコラー、撃たれてたヤツラ―。 もう片付いたから出てこーい。」
全員机から顔を出し、確認する。少しだけ見たくない気もするその人物は『知ってた。』と言いたくなるが、夢絶であった。
「よ。 結構元気そうだが、大丈夫か?」
中に入り言ってくる。
全員、唖然。あまりの急展開に少しばかり脳の速度が追いつかない、訳ではないが理解したくない。
あの働かない星人である『夢絶 叶』がそうやすやすと仕事をするわけがない。
「どうしたんですか? なんでここにいるんですか? なんかゲームの大会だったんじゃないんですか?」
御臼の口からそんな言葉が延々と出てくる。
答える。
「いやぁ、ゲームの大会が終わったんで暇だし(臨時報酬あったし)、御臼ちゃんもこっち居るし(セクハラ出来ないし)、転移門くぐらされたら此処にいたんでさすがに、仕事やるしかなくなった。」
かっこの中は、心のみで話している部分である。
「んで、どこに行けばいいとか、もう分かってたりする?」
夢絶が久しく働いているのだ。いっそ全部任せよう。
「はい。 ここはいわゆるダンジョン方式の施設です。」
御臼が話を始める。
「階段を下りる度に迷路が展開されていて、その中から階段を探さなければいけないんです。」
得意げな説明の語り手代わり、千尋。
「ですので、下っていけばいいはずです。」
顔の横でピストルの手の形を上に向け付け足し、
「あと、さっきここの警備員、傭兵? に脅して聞いたところ、地下は6階まであるそうです。」
「ここは地下二階なので、あと四階降りれば大丈夫です。」
と、御臼がもう一度話す。
「オーケー。 お前らはもう帰れ、あとは俺一人でどうにかなる。」
三人の目を見ながら言う。もう大丈夫だ、とその目で言っている。
「なんかの女の子も俺がどうにかして連れて帰るから、お前らは先に帰れ。」
今回ばかりは、夢絶も真剣だ。それほどに危ないものがこの移設にあるのだろう。
三人は承諾する。と言うよりかは、丸々任せる。本音は、たまには働けと言いたいくらいだ。
「あ・・・・・、あの・・・・・・・・・。」
また机から頭が出てきた。小さな女の子。
少し悩んだが、ここの施設にいた少女という事で、この子も運んでもらうとするか。
「よじ、じゃあ4人を転移してもらうか。」
と、電話を取り出す。そして、電話帳の一覧から名前を探す途中、着信がきた。
「スゲーな、あいつ。まるで何処かから聞いてるみてーじゃん!」
でる。
「もしもし、あの頼」
『ハァイハァ~イ。 じゃあ4人運ぶからそこでじっとしててねぇ~。』
少しだけイラッときた。
4人と机の下に転移門が出現する。4人はいきなり足場が水になったような感覚に襲われながら落ちていく。
『一応、目的区の入口に送っておいたよぉ~。感謝してね、カナ☆リン。』
そう言えばおかしい。電話の向こうから聞こえてくる声が、少し二重に聞こえる。
『カナ☆リンは私に一生感謝するか、私に一生脛かじらせるかしてもらわないといけないんじゃないかなぁ~。』
右を向いて壁の向こう、微妙に薄そうな壁。
壊す。
「よぉ、こんな場所で何してるんだ?」
「あれぇ~、もうばれちゃったぁ~?」
『あれぇ~、もうばれちゃったぁ~?』
やはりだった。
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