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艦娘達の長い一日

作者:よろず屋
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橋を渡れ

道路

カタカタカタ、、、
カタカタカタ、、、
白露がハンドルを取るネイキッドバイクは、不気味な音を立てながら走る。
街の方から来る車とすれ違う。
暁「白露、バイク壊れちゃったんじゃない?変な音するわ」
無茶な運用で傷だらけになったバイク
さっきよりはいくばか、大人しめの速度
街の方から来る車とすれ違う。

白露「大丈夫だよー!この音は泥除けが外れそうなだけだよ!」
ガタつく前輪の泥除けをバキッとむしり取る。
白露「ほら、音がやんだでしょ?」
バイクは広い水溜まりの上を走る。
ほとばしる雨水!
白露「きゃあ!!」
白露はずぶ濡れになった。
暁「良かったじゃない。水も滴るいい女、クスクス」
白露「うえ〜ん」
街の方から来る車とすれ違う。

そんなやりとりをしている内に、街外れに着いた。
バイクを止める。
そこには見渡す限りの大渋滞
白露「街から出る方は空いてるけど、街で何かあったのかな?」
バイクから降り、最後尾の人に聞いてみる。
運転手「さぁね、前の方で事故でもあったんじゃないかな?
1時間くらい並んでるよ」
4車線ある道路は全て埋まっている。
座席に座った運転手は頭を掻いた。
暁「白露、これはもしかして、、」
街の方からプロペラ音が響いて来た
白露「暁、もしかしてかもだよ!早く乗って!」
バイクのエンジンを掛ける。

爆音と共に前方の車が吹き飛び、
敵艦載機が白露達の上を通り過ぎた。
運転手「ば、化け物だ!逃げろ!」
車を捨てて逃げ惑う人々、
道路に溢れる。
白露「しっかり捕まっててね!」
中央分離帯を乗り越え、
対向車線に乗り入れる。
暁「危ないっ!」
猛スピードで車が突っ込んでくる。
フルスロットルで車体の向きを変えた。
スレスレで衝突をかわす。
ミラーが吹き飛んだ。

暁「違反運転よ!」
白露「大丈夫、無免許だから〜」
タイヤを弾き鳴らし、対向車線を飛ばす。
高速で近づく車を右へ左へ避け走る。
急ハンドルをきった車は建物に突っ込んだり、
中央分離帯に乗り上げたりした。
暁「危ない!危ないよ!」
ぎゅーと白露に捕まる。
白露「アハハハッ!暁、楽しいよっ!
ほら目を開けて前見て!」
暁「見れないわよ!」
2人は橋に差し掛かる、
巨大なワイヤーが何重にも張られた頑丈な橋だ。
向う岸にビルが建ち並ぶ中街が確認出来る。
ここを抜ければ街の中心地に行ける。
2人を見つけた敵艦載機が高度を下げる。

敵艦載機「サッキノ、バイク、、ナカマノ、カタキ!」
敵艦載機は爆弾を橋に落とす。
白露「暁、攻撃がくるよ!」
暁「えっ!?」
風が鳴き、黒い塊が白露達の進行方向に落下してくる。
直撃と同時に衝撃波と共に橋が砕ける!
橋は真っ二つに裂かれた!!

暁「きゃーーー!!」
瓦礫が、白露達を襲う。
白露「暁!しっかり掴まっててね!」
飛び散る瓦礫がバシバシ体にぶつかる。
白露は痛みに耐えながらハンドルを握る。
フルスロットルで吹かした悪魔のバイクは、
炎を吐き、真新しい地獄の口を飛ぶ!
車と瓦礫を次々と飲み込む。
天をかけるバイクは、
崩壊中の向う岸に取り付いた。
暁「ぎゃん!」
衝撃でお尻を強打する。
目の前から、車の群れが雪崩れ込んで来る!
白露は巧みなハンドル捌きでかわしながら、
絶壁と化した橋を登る!
一際大きい地響きが鳴り、
最後に繋がっていた橋が力尽きる。

白露「いっちばーん!!」
火を吐くバイクは渾身の力を込め、
橋を登り切った!
暁「わぁーーー!!」
空中で一瞬静止し、
渋滞中の車の屋根に乗る。
グシャリと屋根が潰れ、ガラスが飛び散る。
敵艦載機はそのまま飛び、大きく旋回飛行を始めた。
敵艦載機「ヌケタダト!?シブトイヤツメ!」

白露「このまま行くからね!」
車の屋根をバイクで走る。
暁「あぐん!あぐん!」
屋根からボンネット、ボンネットから屋根
走る度にバイクは大きく上下した。
タイヤ痕を残し、ガラスを蜘蛛の巣状に割り、バイクは進む。
運転手「おい!コラ!!
車の上走るな!」
運転手「馬鹿っ!弁償しろ!!」
車から顔を出す運転手から口々に非難を浴びるが、
聞かずに街に入る。
白露「艦載機は街の中までは来れないはず」
橋を渡り切った2人はそびえ立つビル群の中に入って行った。




白露「ひどい、街がメチャクチャ、、」
街に入ると、渋滞の原因が、
敵の攻撃によるものだと分かった。
渋滞の最前列は、数台の車による玉突き事故
最前列の車は瓦礫に押し潰されていた。
辺りの人は手を貸し合い、怪我人の救助をしている。

「ううっ、私の事はどうなっても構わないから、この子だけは、、」
苦しそうに声を絞り出す蒼白の母親
車の窓から体の半身を出しているが、巨大な瓦礫は窓のフレーム歪めており。
母親は胴を分断され、辺りはおびただしい血だまりが広がっている。
長くは持たない事は明白だった。
車の中からは赤子の泣き声が響いてくる。
数人の男が潰れた車を広げようと鉄パイプを突っ込み、踏ん張っていた。
「ふん~!とてもじゃないが、上がらないぞ」
「諦めるな、まだ中に赤ちゃんがいるんだ!
いいか、もう一度!」

そんなやりとりを見ていた暁達
暁「白露、ここは、、」
同情の眼差しを向ける暁
白露「わかってる。」
暁が言い終える前に、白露は潰れた車に手を掛けた。
いつになく真剣な表情
「ちょっと、そこの女の子!危ないから下がって!」
作業が止まり、おじさんが手を振る。

白露「大丈夫だよ、私は艦娘だから」
ゆっくりと白露が持ち上げると、
車はミシミシ音を立て大口を開けた。
「おおっ!艦娘だったのか!」
「おい、早く助けだせ!」
おじさんは中の赤ちゃんを抱き寄せると、すぐに出た。
母親も男達が引きづり出す。
赤い大きな筆跡が出来る。
「はぁはぁ、良かった、、」
安堵の表情を浮かべる母親に、
おじさんは赤ちゃんを手渡す。
赤ちゃんは泣き止み、安心した様で母にすがる。
「お母さんは、、もう逝ってしまうけど。
あなたは強く生きて、、」
涙が溢れ、頭を撫でる手が、か細く震える。
「この子の事を、、どうか、、お願いします。」
母親はそう言うと、
暁に赤ちゃんを差し出し、、事切れた。

暁「、、、」
涙を浮かべる暁は、
胸が張り裂ける思いであった。
母親の目を見つめ、頷くと赤ちゃんを受け取った。
赤ちゃんは再び泣き始める。
白露「可哀想に、、私達がもっと早く来ていればこんな事には、、」
悲痛な思いが後悔を溢れさせる。
「この場に来てくれただけでもありがたい」
「俺達だけじゃ、この子は助けられなかった」
皆、口々に白露達の所為では無いと言ってくれている。
少しだけ、気持ちが楽になる。
それと同時に、この事態を早急になんとかしなければという使命感が沸き起こってきた。

「その赤ちゃんは怪我をしているみたいだ。
すまないが、病院まで連れて行ってくれないか?」
暁は赤ちゃんを見ると、
腕に切り傷が出来て、血が出ている。
暁「大変!早く行かなきゃ!」
慌てて、バイクの後部座席にまたがる。
艤装を背負っているので、赤ちゃんを胸に抱く。
白露「分かったわ、道路の状況が悪いから、気を付けてね」
バイクに跨りエンジンを吹かす。
車で混みいる瓦礫だらけの道路を、
ゆっくりと気遣いながら、進めた。 
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