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戦国異伝

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第二百四十五話 夜においてその四

「だからよいな」
「はい、滅ぼしましょうぞ」
 次になろうともとだ、明智も言った。そしてだった。
 荒木はだ、瞑目する様にして言ったのだった。
「いや、まさかここまで長い戦になるとは」
「思わなかったな」
「はい」 
 そうだとだ、荒木は信長にも答えた。
「実は九州の平定が成り」
「それでじゃな」
「はい、これで終わったと思いました」
「後は天下の政と思っておったが」
「松永めが謀反を起こしそれがしも不覚ながら」
 苦々しい顔もだ、荒木は見せて語った。
「あ奴等に操られ」
「そのことはもうよい」
「左様ですか」
「そうじゃ、しかし戦は実際にな」
「今も続いております」
「うむ、こうしてな」
「そう思いますと」
 あらためて信長に言うのだった。
「長い戦です」
「うむ、しかしな」
「間も無くですな」
「本朝の戦は終わる」
 日本でのそれはというのだ。
「あ奴等を滅ぼしてな」
「そうなりますな」
「さて、ではな」
「はい、これよりですな」
「あ奴等が妖術を出して来るが」 
 それをわかっての言葉だった、既に。
「しかしな」
「その妖術を旗の呪文で破り」
 蒲生も言って来た。
「そのうえで」
「うむ、敵を倒すぞ」
「ですな、術が効かぬだけでなく」
「そのことを見せて相手が衝撃を受けている時にな」
「さらにですな」
「攻めて」
 そして、というのだ。
「勝つのじゃ」
「相手の切り札を破りそこで驚いている時にさらに攻める」
「これで勝てぬ筈がない」
 間違いなく、といった口調での言葉だった。信長は相手の切り札を破ることの効果を完全にわかっていた。
 それでだ、ここでもというのだ。
「我等から攻めるぞ」
「明日の明け方になれば」
「今日は全軍お互いに夜明け前から激しく戦った」
 それこそ日没までだ。
「用心はするが」
「それでもですな」
 今度は家康が言って来た。
「夜襲はありませぬな」
「傀儡を出すにしても妖力を使う」
「しかし今日はこれまで戦い」
「その妖力も使っておる」
「妖力にも限りがありますな」
「限りのないものはない」
 この世の全てのものにだ、それがあるというのだ。信長はこの世に無限というものがないこともわかっているのだ。
 それでだ、こう言ったのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「今夜は相手も休む」
「明日に備えて」
「明日妖術をこれでもかと出す」
 そうすることをだ、信長は読んでいるのだ。
「その為に夜はな」
「傀儡も出さずに」
「攻めて来ぬわ」
「左様ですか」
「だからな」
「敵も攻めない」
「お互いにゆっくり休みますか」
 織田軍だけでなくだ、魔界衆もというのだ。 
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