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サックス

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第三章

「トムあのサックス欲しいよね」
「絶対にね」
「二週間経ってもだよね」
「欲しいよ」
 絶対にというのだ。
「そう思わない筈がないよ」
「その通りだよね」
「何でお母さんそう言ったのかな」
「お父さんにも話したの?」
「お父さんもお母さんの言うことならってね」
「そうしろって言ったんだ」
「そうなんだ」
 まさにというのだ。
「だからね」
「二週間後で」
「また言うよ」
 トムは怪訝な顔でチャーリーに答えた。
「その時にね」
「じゃあね」
「それでチャーリーは」
「僕は何かね」
 どうにもという顔での言葉だった。
「もういいかなってね」
「思ってるんだ」
「別にね」
 それこそというのだ。
「そう思うから」
「だからなんだ」
「もういいよ」
 こう言うのだった。
「楽器はね」
「そうなんだ、チャーリーは」
「けれどトムは、だよね」
「うん、絶対だよ」
 強い言葉だった、表情も。
「僕はあのサックス買うよ」
「そうするね」
「絶対にね」
 こう二人で話すのだった、そのうえで。
 この日は二人だけでなく皆で野球を楽しんだ、その次の日はバスケだった。毎日遊び倒していた。そうしている間にだった。
 二週間経った、その日トムが学校から家に帰ると。
 母のロザリーはトムにだ、こう尋ねて来た。
「それでどうなの?」
「どうって?」
「二週間経ったわよ」
 微笑んでだ、彼に問うのだった。
「もうね」
「二週間って」
「忘れたのかしら」
「ええと」
 首を傾げさせて言った彼だった。
「何かあったかな」
「サックスよ」
 母はあえて言った。
「サックス欲しい?」
「サックスって」
 具体的に言われてもだった、トムは。
 その名前のことを聞いてもだ、首を傾げさせるばかりだった。
「楽器の」
「あんた欲しいって言ってたわよね」
「そうだったかな」
「そうよ、それで二週間待ってって言ってたでしょ」
「そういえばそうだったかな」
「そうよ、それで今はどうなの?」
 母はまたトムに問うた。
「欲しいの?」
「ううん、何かね」
 首を傾げさせてだ、トムは答えた。
「別にいいよ」
「そうなのね」
「あの時は欲しかったけれど」
 それでもというのだ。
「今はいいから」
「そう、わかったわ」
「これでね」
「それじゃあね」
 こう話してだ、そしてだった。
 トムはいいとしてだ、そのうえで。
 この日はチャーリー達と一緒にバスケを楽しんだ、そしてだった。
 そのバスケをしながらだ、チャーリーに言ったのだった。
「新しいバスケットボール欲しいな」
「そうだよね、そろそろこのボールもね」
 チャーリーはボールを投げつつトムに応えた。
「古くなってきたから」
「結構使ってるからね」
「そろそろ新しいボール欲しいね」
「そうだよね」
 こう話すのだった、そしてだった。
 今度はバスケットボールを欲しがった、けれどそれはバスケが終わった時には忘れていた。トムは夕食の時にはケチャップが足りなかったのでそれを欲しいと言っていた。


サックス   完


                       2015・11・23 
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