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イン『スペクター』

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第五章

「ポルターガイストね」
「本当にあるんですね」
「ええ、心霊現象としてはね」
「オーソドックスとか」
「そうよ」
 その通りだというのだ。
「私のお仕事の中でもありきたりよ」
「そうなんですね」
「そうよ、幽霊が起こすものよ」
「ううん、それでなんですか」
「普通は一般の霊能力者や宗教関係者が受け持つ話だけれど」
「どうして警視が」
「このポルターガイストが刑事に関するものだからよ」
 堀江はその荒れ狂う部屋を見つつ言った。
「だからよ」
「それで、ですか」
「ええ」
 応えながらだ、堀江は。
 首を右に捻った、そうして飛んで来た電話をかわしてだった。
 そのうえでだ、飛んで来るものをかわしている奥野に言った。
「この部屋に入った人達に何度も怪我をさせているのよ」
「傷害罪ですか」
「実は幽霊にも傷害罪が及ぶのよ」
「それは初耳ですね」
「法律でも裏の法律よ」
「裏ですか」
「一般の人は知らないけれどね」
 それでもそうした法律があるというのだ。
「そうした法律もあって」
「その法律に基づいてですか」
「私の様な人間がいるのよ」
「特別監察官が、ですか」
「イン『スペクター』がね」
 堀江はくすりと笑ってここでもこの表現を使った。
「いるのよ、警視庁だけじゃなくて各道府県警にいるわよ」
「色々わかりました」
「そういうことですね」
「そうなの、ではね」
「これからですね」
「ええ、このポルターガイストをね」
 まさにというのだ。
「これからお祓いするわ」
「悪霊はお祓いするんですね」
「法律に基づいてね、ではね」
 こう話してだ、そしてだった。
 堀江は早速だ、印を結んで言葉を唱えてだった。
 それからだ、部屋の中に塩を撒き札を貼り祓い棒も使った。そこまでするとだった。
 部屋は急に収まった、そして。
 堀江はそこからも何かをしてだった、そうして。
 それまでものを避けるだけだった奥野にだ、こう言った。
「これでね」
「終わりですか」
「無事にね」
「そうですか、それでは」
「ポルターガイストは傷害罪で逮捕されて」
「刑務所に送られたとか」
「冥界に送られたわ」
 そうなったというのだ。 
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