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イエロージャーナリズム

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第四章

「これがな」
「その噂のか」
「新聞だよ」
「本当に黄色いな」 
 その新聞紙の色を見てだ、ヘストンは眉を曇らせて言った。
「いい色じゃないな」
「そう思うよな」
「それで書かれている内容もだな」
「読んでみるかい?」
「俺に読んで欲しくて持って来たんだろ」
「マトンを買うついでにな」
「よし、最高のマトンを出してやる」
 肉についてはだ、彼はすぐにこう返した。
「しかしな」
「その前にだな」
「この新聞を読むな」
「ああ、そうしてくれ」
 こうしてだ、ヘストンは実際にその新聞を読んだ。そして。
 そのうえでだ、こうオーフェルに言った。
「本当に酷いな」
「あんたもそう思うな」
「ああ、本当かどうかわからないっていうかな」
「根拠のないことばかり書いてるだろ」
「少し考えたらな」
 それこそというのだ。
「こんなことがあるかどうか」
「普通はないって思うよな」
「俺はそう思うがな」
「俺もだ」102
 オーフェルも言う。
「幾ら何でもな」
「有り得ない話だな」
「実際に書いているよな」
「日本が世界を征服するとかな」
「合衆国を攻めるとかな」
「絵もな」
 新聞に掲載されているそれもだ。
「酷いだろ」
「日本を完全に敵に描いてな」
「そういうのを読んで観るとな」
「日本を敵だって思うな」
「そうなるな」
「根拠がなくてもな」
 その記事の内容にだ。
「適当に関係者とか書いておいたらな」
「馬鹿は信じるな」
「ああ、それでな」
「こうした記事を読んでる奴がだよ」
「日本がどうとか言ってるんだな」
「そういうことだよ、この新聞売れてるらしいぜ」
 実際にとだ、オーフェルは苦い顔で言った。
「相当にな」
「ショッキングな内容だからか?」
「人間はあれだろ、何で読むかっていうとな」
 そのこともだ、オーフェルは言った。
「面白いからだろ」
「刺激があってな」
「この新聞は確かに刺激があるさ」
「それもかなりな」
「だから読む奴が多いんだよ」
「それで読んでか」
「信じ込んでな」
 それでというのだ。
「騒ぐんだよ」
「おかしいって思わないのかよ」
 ここでだ、こう言ったヘストンだった。
「書かれてることを」
「もっともらしく書いてるよな」
 オーフェルはその扇動的な記事を自分の指で指し示しながらヘストンに言った。 
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