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抓る理由

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第三章

「これまでみたいに抓ってかな」
「違うでやんす、待つでやんすよ」
「待つっていうと」
「卒業まで待つでやんすよ」
 秀弥がここで待つべきというのは時間のことだった。
「ずっと待つでやんすよ」
「あっ、そういう意味なんだ」
「そうでやんす、卒業すればもう生徒でないやんすよ」
「それならだね」
「先生に告白しても大丈夫でやんすよ」
「年上の女の人ってだけだから」
「先生はまだ二十三歳でやんす」
 新任の先生なのだ、だから若さも兼ね備えているのだ。爽やかなそれも嘉惟人にとって魅力的なことなのだ。
「そして嘉惟人は十八でやんすね」
「うん、じゃあ卒業してから」
「告白するでやんすよ」
「そうすればいいんだね」
「そうでやんす、もっとも先生に彼氏がいないならでやんすが」
「そのこと大丈夫かな」 
 彼氏の話を聞いてだ、嘉惟人は急に慌てて秀弥に問うた。
「先生彼氏いるかな」
「わからないでやんすね、聞いてみるでやんすか」
「じゃあ僕が」
「いや、嘉惟人君は止めた方がいいでやんす」
 こう言うのだった、彼には。
「それは」
「どうしてかな、それは」
「嘉惟人が不自然だからでやんす」
「抓るから」
「そうしながら先生自身に聞いたらまずいでやんす」
 それこそというのだ。
「だからでやんすよ」
「僕が直接聞いたら駄目なんだ」
「止めた方がいいでやんすよ」
「じゃあどうすればいいかな」
「女の子に頼んで聞くのがいいでやんすね」
「ああ、女の子から聞けば」
「それでいいでやんす」
 これが秀弥の提案だった。
「女の子なら先生にもこうした話が出来ますし」
「それでだね」
「情報収集が楽でやんす」
「じゃあ女の子に頼もうか」
「そうするでやんす」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 嘉惟人は実際にだ、女の子達に頼んで先生の情報収集を頼んだ。すると女の子達は彼にくすくすと笑って言った。
「ああ、遂にね」
「池上君も動くのね」
「そうするのね」
「じゃあ協力してあげるわ」
「?いや僕はね」
「わかってるから」
 これが女の子達の返事だった。
「もうね」
「えっ、まさか」
「そのまさかよ」
「先生の前で絶対自分の身体抓るんだから」
「もうそれでね」
「わからない筈ないでしょ」
「モロバレだったわよ」
 それこそというのだ。
 だがそれでもだ、女の子達は彼に笑って言った。
「けれどね、それならね」
「協力してあげるわ」
「お茶一本で手を打ってあげるわ」
 女の子達はそれぞれだった、自分が飲みたいものを嘉惟人に告げてだ。そしてだった。
 嘉惟人からお茶を受け取ってから情報収集を行ってだ、彼に報告をした。
「いないわよ、彼氏」
「よかったわね」
「あっ、そうなんだ」
 その情報収集の結果を聞いてだ、嘉惟人は笑顔になった。
「よかった、そうなんだね」
「そう、あとね」
「先生今はアパートに一人暮らしよ」
 女の子は交際相手の有無という今回のメインの情報以外も言ってきた。 
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