| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

隣は魔女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「爺さんが一番アタックしてきてな」
「それでなんだ」
「一緒になってずっと仲良くやってきたんじゃ」
「五十年の間」
「六十年といきたかったがそれは出来んかった」
「残念だったね」
「残念だったけれど人は死ぬ、仕方ないことじゃよ」
 カテローゼは今度は寂しい笑顔になってヴォルフガングに言った。
「このことはのう」
「そうなんだ」
「そうじゃよ」
「魔法でどうにか出来なかったの?」
「まあ病気を治すことは出来ても」
「じゃあお爺さんの病気は」
「爺さんが死んだのは寿命でじゃよ」
 それで死んだというのだ、つまり老衰である。
「もう仕方ないわ」
「寿命はどうにもならないんだ」
「魔法でもな、そうなのじゃよ」
「魔法は何でも出来る訳じゃないんだ」
「それが出来るのは神様だけじゃ」
 何でも出来る、万能のものはというのだ。
「魔法はそうしたものじゃないんだ」
「魔女は魔法を使って何でも出来ると思ったけれど」
「そうではないのじゃよ」
「何か思ってたのと全然違うよ」
「そうか、しかし実際にな」
「魔法はなんだ」
「何でも出来るものでもないし」
 それにとだ、カテローゼはヴォルフガングにさらに話した。
「学んで身に着けるものじゃ」
「そうなんだね」
「そうしたことはわかってくれたかのう」
「何となく」
「何となくでもわかってくれればいいわ、とにかくこれから宜しくな」
「お隣さん同士として」
「仲良くな」
 長く曲がった鼻を持っている顔を笑わせての言葉だった、その笑顔はよく見れば実に親しみの持てるものだった。ヴォルフガングの一家はこうしてカテローゼとの付き合いをはじめた。
 カテローゼはヴォルフガングの第一印象と違いだ、気さくで親しみの持てる人物だった。陽気で親切で世話好きでだ。
 街でも評判の人物になった、それでヴォルフガングも学校でだ。
 クラスメイト達にだ、カテローゼのことをしきりに聞かれた。
「お隣に魔女が来たんだって?」
「やっぱり箒でお空飛ぶの?」
「使い魔いるの?」
「お水に浮くの?」
「どんな魔法使うの?」
「大きなお鍋でお薬作ってるの?」
「いつも三角帽子被ってるの?」
 よく言われる魔女のイメージをそのまま聞かれた。
「占いをしたりとか」
「お薬を調合したりとか」
「使い魔とお話したりとか」
「そんなことするの?」
「うん、皆が思っている通りだよ」
 実際にそうだとだ、ヴォルフガングは皆に答えた。
「移動は箒に乗ってお空飛んでだし」
「うわ、凄いな」
「本当に魔女なのね」
「じゃあ魔法も使って」
「使い魔を従えてて」
「そうだよ、最初は怖いと思ったけれど」 
 それでもとだ、ヴォルフガングは皆に自分が最初カテローゼに対して抱いていたイメージについても話した。
「実際はね」
「違うんだ」
「いい魔女なのね」
「そうなんだ」
「面白い人だよ」
 今のイメージはにこりと笑って話した。
「これがね」
「そうなんだ」
「楽しい魔女なんだ」
「じゃあお薬とかも作ってて」
「売ってるのかな」
「うん、惚れ薬とか風邪薬とかね」
 そうした魔女が作る薬のことも話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧