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艦娘達の長い一日

作者:よろず屋
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空からの襲撃

 
前書き
ブーツのみ無事だった叢雲は単身川を上り、
暁、白露は借りたバイクを使い道路を走る。
町で合流する事を約束した3人は、
それぞれの道を進むのであった。 

 
海沿いの道路

猛スピードで駆け抜ける悪魔のマシン
ライトの上に付いた黒山羊の頭蓋骨が攻撃的だ。
よじれた角が風裂き、風は泣く。
暁「ス、スピード出し過ぎよ!」
白露「えっ?何か言った?このバイク最高〜〜!!」
唸り声を上げるマシンに声がかき消される。
暁「だーかーらー!」
腹の底から声を出す。
木の葉が一枚、暁の顔をよぎる。
暁は目を見開き、咄嗟に顔を避けた。
チクリと頬を突く様な痛み。手で確認すると少し血が出ていた。
スピードが出過ぎて、葉っぱ一枚でも掠めれば、切り傷となる。
暁「白露!もっとゆっくり走って!!」
怒鳴り声に近い声だった。
頬から出た血が、風に散る。
白露「!!」
急にハンドルを切る。
暁「わわわわっ!」
動作が遅れ、投げ出されそうになる。
道路が砕け、爆煙が上がる。
暁「敵襲!?」
上空に敵艦載機三機を確認!
頭上を通り過ぎ、旋回して来る。
白露「きっとあたしの車もあいつらにやられたんだ!
暁、やっつけちゃって!」
暁「暁に任せなさい!」
背中の砲身が艦載機を捉える、
敵の機銃照射、後ろの道路が跳ね、
徐々に近づく!暁「攻撃するからね!」
白露「りょーかい!」
轟音と共に砲弾が弧を描き、
敵艦載機に向かう、射撃に集中していた為か、
反応が遅れ、あえなく着弾!
機体がバラバラに飛び、
他二機は回避行動を取る。
発射の衝撃を見事なハンドル捌きでやり過ごす白露
何事も無かったかの様に運転を続ける。

艦載機A「グギギ、ウッテキタゾ」
艦載機B「ガガ、キヲツ、ツケロ」
艦載機は高度を上げ、射程距離外に退避、バイクの前方に移動した。
暁「前に飛んで何をするつもり?
…まさか!」
艦載機から爆弾が投下された。
それは真っ直ぐに道路目掛け落ちていく。
暁「白露!!」
白露「分かってる!」
重心を傾け、バイクを倒す。
道路隣の雑木林に突っ込む。簡単にスピードは落ちない。
白露は木々の間をギリギリに縫い、
暁もそれに続く

白露「いたたた!」
枝が体や服をかすめ、真新しい傷を作る。
暁「だから言ったじゃない、速すぎるって!痛い痛い!」
帽子を抱え体を丸める。
白露「あそこで落としたら、やられてたよ!そろそろ来るよ!」
怒号が鳴り響き、熱風と衝撃が押し寄せる。
バイクの姿勢をなんとか保ちつつ、
衝撃から離れるように進路を取る、
相変わらず、鬱蒼と茂った木や草に阻まれる。
白露「暁!あれを使うよ!」
暁「あれ?…分かったわ!
お返ししちゃうんだから!」
白露はアクセルを全開にして走る。
黒山羊の頭蓋骨が光る。
艦載機A「ククク、、シンダ、クケ、シ、シンダ、、」
不気味に笑う。

ヴァヴァヴァ!ヴァーーン!
艦載機A「ナンダ?」
振り向くと、上空に舞い上がる黒い塊が!
暁「突撃するんだから!」
そして、次は鉛の塊が高速接近して来た!
艦載機A「ナンダ、バ、バカナ!!」
艦載機Aは爆発音と共に砕けちった。
白露は出っ張りを利用してジャンプしたのだった。
バイクは爆弾が落ちた先の道路に着地する。
火花を散らし、よろけるも車体は無事だ。
艦載機B「バ、バケモノメ、、!」
艦載機Bは恐れをなして飛び去った
暁「ふぅ、何とかなったわね」
服に付いた草を払いながら
ため息を漏らす
白露「陸地まで敵が来てるなんて、街が心配だよ!
いっちばーんに行かなきゃ!」
再び街に向け、バイクを加速させた。





叢雲「暁達は無事街に着いたかしら?」
川を上り、街を目指す叢雲
バイカーの気を使い、川から街へ行く事にしたが、
やはり別れた仲間の事が気になる。

自然とスピードが上がりがちになる。
空は青く晴れ渡り、視界良好
蒸し暑さはスピードを出せば気にならない。
買い物を終えた帰りを敵に襲われなければ、
快適なドライブを続けていられたのに。

叢雲「いえ、あながち快適とも言えなかったわね」
白露の運転は荒く、まるでジェットコースターに乗ってる様だった。
叢雲「前言撤回!いつっ!
こんな痛みくらい、、
なんとも、無いんだから。」

叢雲は頭部と腕を強打している。
あざや破片による切傷が生々しい。
この緩やかなカーブを曲がれば、
街までは一直線だ。
しかし、見えて来たのは、
街ではなかった。

叢雲「嘘、まさかこっちに、、!」
叢雲が見たのは、ゆっくり進行しながら、
停泊している船を破壊する深海棲艦の部隊だった。
駆逐イ級「グガガ、コワセ、コワセ」
駆逐ロ級「ハカイシツクセ!」
敵は駆逐艦4隻
思い思いに船や建物を破壊している。

叢雲「何とか止めないと、、
やるしかないわね」
叢雲はそのまま駆逐艦達に向った。
駆逐ハ級「、、テ、テキダ!
カンムス、ガ、キタゾ!」
早速発見される。
敵が叢雲に向き直り、
砲門を向ける。

駆逐ニ級「グワァー!」
射撃よりも早く敵に接近、
駆逐ニ級の背を蹴り、スピードを落とさずに街の方へ進む
叢雲「間抜けさん達、私が相手よ!追いつけるかしら?」
鼻で笑い、嘲笑する。
駆逐イ級「オエ!ニガスナ!」
頭に血が上った敵は我先にと、叢雲目掛け加速する。
叢雲の進行方向に水柱が上がる。
背後から迫る魚雷は川縁に当たり、炸裂する。
不規則なジグザグ走行で押し寄せる攻撃をやり過ごす。
目の前に電車の橋が見え、
その上を電車が通り始めた。

駆逐ロ級「シズメ!」
砲弾が橋に直撃する。
橋は崩れ、ヘビー級の電車が次々と追突し、川に落下してくる!
叢雲「しまった!」
橋の足をくぐろうとしていた叢雲に
壊れた電車が降り注ぐ。
叢雲「こんな事くらい!」
思いっきり加速しスライディングをする。
突き出した脚は槍の如き鋭さで、
迫り来る電車の下に滑り込む。
一際大きい水柱が荒れ狂い、叢雲の姿が消えた。

駆逐ロ級「ククク、、、ハハハハハッ!!」
歓喜の声が上がった。駆逐ハ級「オイ!アレヲミロ!」
駆逐ロ級「ナンダト!」
橋の向こう側には涼し気に髪を払う叢雲の姿があった。
叢雲「あら、残念だったわね。私は無事よ」
余裕の笑みを浮かべた。
駆逐ロ級「ググ、ウンノ イイヤツメ!」
その時耳をつんざくエンジン音と共に、
一機の艦載機が稲妻の如く現れた!
機銃照射で駆逐ロ級を攻撃

駆逐ロ級「ガガガ、ナンダ!?」
艦載機は水面ギリギリで機首を上げ、叢雲に向かう。
叢雲「予想より早いわね、助かったわ」
叢雲は再び街に向かい滑走を開始する叢雲の隣に艦載機が並ぶ。
緑色の機体、赤色の日の丸、
操縦席の妖精さんが親指を立てる。
味方の零戦だ。

数回、ザラついたノイズの後、通信が入る。
飛龍「叢雲、大丈夫!?」
叢雲「今の所はね」
叢雲は基地に連絡した際、応援を要請していたのだ。
艦載機から通信で叢雲の様子が伝わっている。
飛龍「これを受け取って!」
叢雲に零戦から一本のボトルが投下される。
叢雲はそれを受け取る。
高速修復材、ラベルにはそう書いてある。

飛龍「それと、換えの艤装を!」
零戦の下部に付けたコンテナを投下しようとする。
叢雲「待って、修復が先よ
今の状態じゃ、まともに艤装が扱えないわ」
負傷した部位を妖精さんに見せる。
心配そうな表情をする妖精さん

飛龍「分かった時間稼ぎをするわ、その間に修復を!」
機体を翻し再び敵に向かう零戦
程なくして、砲撃や射撃の音が聞こえる。
叢雲「こんな方法、本当はやりたくないけど、、」
高速修復材を半分飲み、
残りを傷にかけた。
ジュジュ〜!!

叢雲「ぐぅ…!」
苦悶の表情を浮かべる。
喉が焼ける様に痺れ、
傷口に鋭い痛みが走る。高速修復材の原液は刺激が強過ぎる。
普通なら浴槽のお湯に混ぜ、
皮膚から吸収させる。
しかし今は戦闘中だ、そんな時間は取れない。
叢雲に取り込まれた修復材は
新陳代謝を急激に促進し、
血管の中を爆走する。
体温がみるみる上昇
全身に降り注ぐ強烈な痛みと苦しみ
バランスを崩す。
だが、気力でカバーし、姿勢維持をする。
全身から噴き出る蒸気状の汗と共に、傷が瞬く間に再生した。
蒸気を切り裂いて、快復した叢雲が躍り出る!

叢雲「ハァ、ハァ、ハァ。
飛龍、修復完了よ…!」
駆逐イ級「グワァー!!」
零戦の攻撃により大破した敵が爆発する。
飛龍「1隻撃破!今行くわ!」
敵の砲火を潜り抜け、零戦が舞い上がる。

駆逐ロ級「コレイジョウ、スキニハサセナイ!」
駆逐ロ級は半ばヤケになり、
砲撃、対空射撃を撃ちまくった!
1発の砲撃が零戦の翼をもいだ。
飛龍「嘘っ!姿勢制御出来ない!」
汗だくになりながら、操縦桿を必死に握る妖精さん
駆逐ロ級「トドメダ!」
傾き、黒煙を空に描く零戦に容赦無く追撃が加えられた。
叢雲「ああっ!!」
遂に零戦は砲撃の餌食になり爆発した。
駆逐ロ級「グハハハ!」
叢雲「……。」
叢雲はパラシュート降下する妖精さんと、切り離されたコンテナを見ていた。
飛龍「ごめんなさい叢雲、撃墜されちゃった。
こっちも手一杯で、追加の応援は出せそうにないわ、、」
トーンが落ちた声が聞こえる。

叢雲「それには及ばないわ」
コンテナに辿り着いた叢雲が答える。
叢雲が艤装を身に付けると、
ボロボロになったワンピースが細切れの繊維になり、
一瞬の内に卸したてのセーラー服に変わった。
プリーツのミニスカートの端を掴む。

叢雲「これは吹雪のスペア艤装ね。、、、これなら!」
3隻の敵駆逐艦は、ようやく叢雲を射程距離に捉えた。
駆逐ロ級「アトハ ヒンシノ カンムスヲ タオセバ、オワリダ」
敵の砲門が叢雲に向けられる。
駆逐ロ級「ナンダ?サッキト、スガタガ、チガウゾ!」
そう思った矢先、
駆逐ハ級「グワァー!」
隣に居た駆逐ハ級が爆発した!
駆逐ロ級「ドウシタ!?」
駆逐二級「ミロ!ギョライダ!!」
海中を進む無数の魚雷を発見、
急いで回避行動に移る。
駆逐ロ級「サケキレナイ!!グワァー!」
駆逐ロ級は魚雷に当たり中破!
叢雲は敵艦に向かい進行して来た。
叢雲「特型駆逐艦 叢雲!
待たせたわね、今度はまともに相手をしてあげるわ」
背負う艤装が黒煙を上げ、
猛スピードで接近する。

駆逐二級「サッキハ、ヤラレソウ、ダッタクセニ!シズメ!」
駆逐二級は、ありったけの砲撃と魚雷を叢雲に向け放つ!
叢雲は眉一つ動かさず、
サイドステップ、ジャンプ、姿勢を低くするなどして、かわした。
駆逐二級「ナゼダ!ナゼアタラナイ!?」
叢雲「狙いが甘いのよ!」
手に持った砲門を敵に向ける!
叢雲「沈みなさい!!」
放たれた砲弾は弧を描かず、
真っ直ぐに駆逐二級を貫通した!
駆逐二級「グワァー!」
駆逐二級の爆煙が駆逐ロ級を覆う、
駆逐ロ級「クソッ!ゲホゲホ、アイツメ!!」
駆逐ロ級が顔を上げると、
砲門がおデコに突きつけられた。

叢雲「勝負あったみたいね」
駆逐ロ級「イツノマ二!?」
叢雲「零戦の分よ、受け取りなさい!」
駆逐ロ級「ヤメローー!」
無慈悲に撃たれた砲弾は、
駆逐ロ級の体にぶち込まれる。
叢雲は急速後進し、離れた。
一際大きい爆発を見送る。
叢雲「敵がこの川に居るという事は、
町の方にも進行している可能性が、、
急がなくっちゃ!」
敵の残骸を背に、街に急いだ。
 
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