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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第十九話 行末

月がきれいに輝く夜、その場所には金属同士がぶつかる甲高い音が絶え間なく鳴り響いていた。

シリウスの槍から放たれる高速の突きをソレイユは刀でいなし反撃していくが、シリウスの見事な槍さばきによって受け流される。そのわずかな隙を逃さずに突きを放つが、今度はソレイユの刀に受け流される。
単純なパリィ合戦だが、意識を集中しなければ、相対する両者の間に謎の閃光が立て続けに弾けているようにしか見えない。それほど高速なパリィ合戦。

しかし、なかなか決定打にならないどころか、両者のHPは一ドットも削れていない。それほどまでにソレイユとシリウスの実力は拮抗している。しかし・・・。

このままではおされる、と考えたソレイユはもう片方の刀の柄を逆手に握り、シリウスの突きに合わせて抜刀した。槍の矛先が刀の柄頭で弾かれ抜刀の勢いに、大きく仰け反ってしまうシリウス。ソレイユはここぞとばかりに斬り込んでいくが、シリウスは地面を後方に蹴り、後退しながら体制を整えソレイユ長刀を槍で受ける。
ここに来て初めての鍔迫り合いだったが、すかさず、ソレイユの逆手に持った刀が閃く。

月の光を受け、闇夜を照らすかの如き剣閃はシリウスの首に吸い込まれていくが、鍔迫り合っていた長刀を急にいなされ、体勢を崩してしまいその剣閃がシリウスに届くことはなかった。

体勢を崩したシリウスは槍を薙ぎ払い追撃をかけるが、ソレイユは地面を強く蹴ることで距離をとる。地面を蹴り加速をつけて放たれる突きをソレイユは半身になって躱すが、それだけでは終わらなかった。まるでバトンを操っているとしか思えないような槍さばきでソレイユに追撃をかけていく。
回転させながら払われる横薙に隙を狙って放たれる突き。それだけでソレイユは守勢にならざるを得なかった。

攻めるシリウス。守るソレイユ。
斬り結ぶたびに火花が散り、甲高い金属音が響き渡る。
首を狙ってくる突きを刀でいなし長刀で反撃していくが、槍を回転させ石突きで長刀をいなしていく。

月夜の中でソレイユの二刀が弧を描き、シリウスの槍が線を描く様は形容しがたい美しさがあった。

ソレイユの呼吸の隙をついた槍が再び襲い掛かるが、それに臆することなく果敢に前に出ていく。ソレイユは長刀で斬りかかるが、シリウスはそれを無理やり槍で防ぐ。そこへ逆手に持っていた刀がシリウスに襲いかかる。
体制が整わないため槍で防ぐことが叶わないことを瞬時に悟り、地面を蹴り後退しようとしたが、ソレイユがそれを許さなかった。

逆手に持っていた刀を順手に持ち替え、シリウスの追撃に出た。地面を蹴り距離を詰め、その勢いを利用して順手に持ち替えた刀で突きを放つ。
ギリギリのところでパリィに成功するが、続く第二撃が襲い掛かった。

長刀を左薙に払われるが、それをしゃがむことで回避し、膝のばねを使って突きを放とうとしたが、それよりも早くソレイユの長刀が今度は右薙に払われた。
とっさに突きを放つことを中断し、槍で受け止める。しかし、それが決定的な隙となってしまった。

その隙を逃すほどソレイユは甘くなく、左手の刀で突きを放つ。それを横に転がるようにして避けるが、体勢が崩れたところを長刀の袈裟切りが襲い掛かる。それを何とか体勢を立て直し槍で防ぐ。しかし、反撃に出ることは不可能だった。

先ほどとは真逆の攻防が繰り広げられていく。攻めるソレイユ。守るシリウス。
シリウスの防御を崩さんとばかりに攻撃を仕掛けていくソレイユだが、なかなか崩すことができないでいた。

二刀と槍が重なり合い、再び重なり合い、また重なり合ったところでシリウスの動きに変化があった。
長刀が槍に触れ合う前に身を引き、力を後方へ流すことによってソレイユの体勢を崩させた。しかし、追撃をすることなく距離を開ける。

呼吸を整えるシリウスと体勢を整えるソレイユ。
すると、ソレイユは二刀を鞘に納め居合の構えをとった。対して、シリウスは突きの構えを取っている。

にらみ合うソレイユとシリウス。
静まり返った世界に一陣の風が吹いた。
その風が吹き終わるのと同時にソレイユが地面を蹴ろうとしたが、それよりも一瞬早くシリウスが突きを放った。
ソレイユが地面を蹴る瞬間を狙ったため、シリウスはソレイユの回避が不可能と考えた。

確かに、地面を前に蹴ろうとしたところに進もうとした方向から攻撃が来たのなら躱すことはまず不可能だろう。
そう、前に進もうとするのならば、である。

「っ!?」

この瞬間、シリウスは初めて驚かされた。ソレイユは前に進んだのではなく後ろに後退していた。槍の矛先がぎりぎり当たらないようにして後退していたのである。
必殺の一撃を放ったために腕を限界まで伸ばしてしまっている。予想外のことに驚き、反射的に槍を引き戻したところでソレイユに懐に入られてしまった。

「どんなに突きが凄かろうと、一度伸ばした腕は引かねば突けないのが物の道理だ」

最後の最後で勝ちを拾うソレイユの勝負強さが勝敗を分けた。ソレイユが長刀を抜刀し、シリウスの首へ迫る。その抜刀は神速と言っても過言ではなく、懐に入られた状態では防ぐこともかなわない。
死を覚悟するシリウスだったが想像した衝撃は来なかった。

「・・・やっぱりさ、簡単に決着をつけるのは勿体ないと思うんだよ」

首筋ギリギリで長刀は止められていた。それを疑問に思うシリウスにソレイユは立て続けに言った。

「決着つけるなら、現実でもっと腕を磨いてからにしようぜ。今ここで決着をつけるには早すぎる」

もう闘う気がないというように抜刀したばかりの長刀を鞘に納める。それを呆然と見ていたシリウスだったが、徐々にソレイユの言葉の意味を理解して笑った。

「そうだな。今回は俺の負けだ。だが、次は勝つぜ」

「安心しろ、次も負ける気はない」

そう言いながら握手を交わす二人。二人の表情はどこかすっきりしていた。それを微笑ましく、羨ましそうにベガが見つめていた。

その後、ソレイユはクロス・ユニバースを脱退し、相棒であった≪鳳炎皇フェニックス・エール≫を四十四層の鍛冶工房へ置いてソロに戻ることとなる。


それは過去のお話。語り継がれることのない名勝負。後に≪剣聖≫と呼ばれるものと≪神槍≫と呼ばれるもののたった一度の死闘。知っているのは一人の女剣士ときれいに輝く月のみである。
 
 

 
後書き
そんなわけで、過去の話しはこれにていったん終了で~す・・・
そういえば、批判が全然来なかったような?

ソレイユ「書かないだけでみんなおもってるだろうぜ、この駄作者って」

いや、やめてっ!!私のハートはガラスでできているんだよ!!

ソレイユ「あっそ」

ソ、ソレイユが冷たい・・・
まぁ、そんなわけで感想お待ちしております!!

ソレイユ「批判の間違いじゃないのか?」 
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