戦国異伝
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第二百四十四話 屋島の合戦その八
「だからじゃ」
「はい、では」
「福原にはですな」
「すぐに入らない」
「そうしてきますな」
「そうじゃ、だからここでは攻めない」
福原では、というのだ。
「決してな」
「では、ですな」
「福原に入らずにですか」
「まずは、ですか」
「あの街を、ですな」
「福原の街に大砲の雨を浴びせよ」
これが信長の命だった。
「街を魔界衆の軍勢ごと吹き飛ばすつもりでな」
「では高所の敵は」
「その者達はな」
信長は山の方を見てだ、不敵な笑みを浮かべた。そうしてそのうえでこうしたことを言ったのだった。
「猿夜叉が攻めてくれるわ」
「はい、では」
「それではですな」
「そちらは猿夜叉殿が攻めてくれますか」
「あの方が」
「敵は一ノ谷の平家の布陣そのままでありな」
今彼等が戦っているその場所のだ。
「実にわかりやすい」
「それ故に」
「攻めやすい」
「そうなのですな」
「猿夜叉にしてもな」
山を進む長政でもというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですか」
「高所の敵はですか」
「猿夜叉殿がですな」
「攻めてくれますか」
「うむ、まあ今は城がないからな」
平家が戦った時とは違いだ。
「城攻めはないがな」
「しかし、ですな」
「魔界衆は一ノ谷の平家と同じですか」
「そうした状況ですか」
「そうじゃ、だからな」
それで、というのだ。
「勝つのは我等じゃ、しかし」
「奴等はそうは思っていない」
「魔界衆自身は」
「そうなのですな」
「何故そう思うか」
それはというと。
「あの者達に妖術がある」
「それが、ですな」
「妖術がありますな」
「それがあるからこそ」
「自分達が平家とは思っていない」
「全く、ですな」
「それだけ奴等にとって妖術は大きい」
信長は大砲が福原を狙っているのを見つつ述べた。
「そしてな」
「そして、ですな」
「それが使って来るのは」
「それは」
「福原の街の後じゃ」
これからはじまるそれの、というのだ。
「それが終わったらな」
「進退極まり」
「起死回生の手段としてですか」
「使ってきますか」
「切り札はそう簡単には出さぬもの」
信長は落ち着いた声で述べた。
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