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龍が如く‐未来想う者たち‐

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秋山 駿
第二章 交わる想い
  第七話 繋がり

秋山が最後の1人を倒し終えると、加勢していた狭山と伊達が力抜けたかの様に座り込んだ。
肩で息しながらも、秋山は男の胸ぐらを掴む。


「彼女を何処に連れて行った!?」
「し、知らねぇ……俺たちは、ただお前らの足止めを……しに来ただけ、だ」


やはり男は、遥の居場所を聞かされていなかった。
また遥を奪われ、ふりだしに戻される。
あまりの苛立ちに、秋山はタバコに火を点けた。
少し落ち着きたくて、整理したくて。
そこへ、応援を呼んでいた須藤が戻ってくる。


「伊達さん、残念ですが澤村さんの行き先は掴めませんでした」
「そうか……」
「ですが、代わりに喜瀬の情報が」
「何だ?」


一瞬、須藤の目が泳ぐ。
嫌な予感がした。


「東城会直系足立組の組長、足立信哉と喜瀬が繋がっているという情報です」


頭に巡らせていた考えが、一瞬で吹っ飛ぶ。
喜瀬と繋がりがあったのが、足立だった。
予期していたが、それでも驚きは隠せない。


「詳しくはわかりますか?」


秋山がそう問いかけると、須藤は申し訳無さそうに首を横に振った。
これが事実なら、気がかりな事がある。
ポケットから携帯を取り出し、 先程登録した番号を見つけた。

麻田と名付けられたその番号。
もし何かあれば、連絡するよう教えられた番号だ。
もし本当なら、大吾が危ない。
急いでかけると、2コール目でその着信は取られた。


「秋山だ!おい、麻田!今何処だ!?」


秋山の問いかけに、返事はすぐには返って来なかった。
だが荒い息づかいと、何かを引きずる音が聞こえる。


『あ、秋山さん……』
「おい、麻田?」
『俺、知りませんでした……組長が、喜瀬さんと繋がってたなんて……』


知らなかった。
その答えは、予想外だった。
組員にも知られていなかった、足立と喜瀬の関係。
さっきからずっと、冷や汗が止まらなかった。


「今何処だ!?」
『神室町ヒルズ近く……6代目と逃げてます……喜瀬組の奴らに追われて……』
「堂島さんと逃げてる……?」

その言葉を聞き、秋山は迷った。
遥を助けるのが先か、大吾を助けるのが先か。
口籠る秋山に、伊達は肩を叩いた。


「遥は任せろ」


たった一言だったが、言いたいこと全て通じた気がした。
任せて、大吾を助けに行け。
今その言葉が、心の底から嬉しかった。
秋山は再び携帯を握りしめ


「必ず行く、待ってろ!!」


そう言って、通話を切った。
携帯をポケットに入れると、狭山が近付いてくる。
一緒に来るつもりなのだろう。
だが秋山は、あえて狭山から離れる。


「狭山さん、貴方は伊達さんと遥ちゃんを追ってください」
「でも、1人じゃ無茶よ。麻田さん達、追われてるんでしょ?」
「だからこそだ。狭山さんを巻き込みたくない」


ドクンと心臓が高鳴る。
一瞬狭山と亡くなったリリを重ね合わせた。

秋山は怖かった。
リリだけじゃない。
届く距離にいた遥さえ、守れなかった。
もう誰も守れる気がしない。
明るく気丈に振る舞ったって、その恐怖からは逃れられなかった。
あの日から、何もかもが変わってしまったんだ。

狭山は目が泳ぐ秋山の頬を、軽くだがビンタする。
痛みでようやく我に返り、真っ直ぐ見つめる狭山に気が付いた。


「何を考えてるかわからないけど、そんな腑抜け顔じゃ誰も守れないわよ。しっかりしなさい」


腑抜け顔……。
そんな顔してたのかと考えると、少し馬鹿らしくなった。
今は悩む時じゃない。


「今は……動かないとな」
「その調子なら大丈夫そうね。そっちは任せるわ」


秋山は小さく笑った。
そのまま須藤に呼んでもらったタクシーに乗り込み、秋山は1人神室町へと向かう。
さっきまで怯えていたのがまるで嘘だったかのように、その顔は決意に満ちていた。 
 

 
後書き
次回は3月11日更新 
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