Blue Rose
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第一話 植物園でその二
「存在し得ないものがこうして観られるなんてな」
「そうだよね」
「世の中有り得ないことなんてないか」
「そうだろうね、出来ない有り得ないものって思っていても」
「実現したりするんだな」
「うん、この世の中有り得ないことなんてないんだね」
優花も言うのだった。
「それこそ」
「そうなんだな、有り得ないことはないか」
「何だってね」
「それこそあれだな」
ここでだ、龍馬はこんなことを言った。
「男が女になるとか」
「そうしたこともだね」
「あるんだろうな」
「そうだろうね、そんなお話あるけれど」
「漫画とかでな」
「ひょっとしたらあるかもね」
「ああ、しかし優花御前は」
龍馬は今度は優花のその中性的、もっと言えば少女が男の子の格好をしている様なその顔を見て言った。
「随分と女の子らしいな」
「あっ、またそう言うんだ」
「小柄だし顔だってな」
「女の子みたいだっていうんだね」
「声もな」
そちらもというのだ。
「喉仏も出ていないしな」
「不思議だよね、どうしてかね」
優花自身も自覚していて言う。
「僕は声も変わらないんだよね」
「成長期でもな」
「昔から女の子みたいな声で」
それこそ子供の頃からだ。
「今もね」
「ああ、女の子みたいな声だな」
「ボーイソプラノっていうらしいよ」
「ボーイソプラノ?」
「音楽の先生に言われたんだ、歌には声域っていうものがあってね」
それでというのだ。
「ボーイソプラノは男の子の高音なんだ」
「それか」
「ソプラノは本来は女の人の高音だけれど」
「ボーイソプラノは男の子の声でか」
「ソプラノみたいな高音なんだって」
「それずっとっていうのはな」
「滅多にないことらしいよ」
こう龍馬に話した。
「先生も言ってたよ」
「そうなんだな」
「僕みたいな人は珍しいって」
「声もか」
「うん、けれど大人になるまでには」
つまり成人するまでにはというのだ。
「僕も声が変わるってね」
「先生に言われたんだな」
「そう思うってね」
「思う、か」
「そうした風にね」
「何かあやふやな感じだな」
「とにかく僕みたいなケースは稀らしいから」
声変わりしないままということはというのだ。
「先生も首を傾げさせてたよ」
「そうだろうな」
「何かね」
ここでだ、優花はくすりと笑って龍馬に言った。
「僕女の子になるのかな」
「そんな筈ないだろ」
龍馬は優子に笑って返した。
「何で途中で性別が変わるんだろ」
「うん、ないよね」
「そんなことは御前のお姉さん、優子さんが一番よく知ってるだろ」
「うん、お姉ちゃんはお医者さんだからね」
それでというのだ。
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