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二十四周目

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2部分:第二章


第二章

 とにかく時間がかかった。何周も何周もしてもだ。先は見えない。いい加減座っているその尻も痛くなり画面を見る目もコントローラーを持っているその手も疲れてくる。しかし決めたからにはだった。
 やり遂げる所存だった。最早後ろには引かなかった。彼はかなり一途というか一度決めたことは諦めずやる子供だった。そのこと自体はいいことである。それでプレイを続けるのだった。しかしである。
 とにかく長い。二十四周である。それが尋常でないことはわかっていてもだ。それでも実際にやってみるとかなり長かった。
 だが少しずつだ。その問題の二十四周に近付いていった。二十周を過ぎた辺りからだ。彼は次第に目的の場所に近付いていっていると実感していた。
 そして遂にだった。問題の二十四周目に到達した。いよいよである。
 一階、二階と進んでいき五階に辿り着いた。このゲームは五階を五つのステージにしているのである。
 その五階もクリアーした。それが終わった時だ。彼はだ。
 画面の流れを観た。何が起こるのか見守った。果たしてヒロインのシルヴィアが本当にラスボスなのかをだ。観るのだった。
 そのままだ。主人公のトーマスはシルヴィア、椅子に縛られている彼女に近付いていく。漫画では椅子から飛び上がってだ。攻撃を仕掛けて来る。それに対しての戦いがだ。漫画のクライマックスだった。だが、だった。
 結局何も起こらなかった。何もである。それを見てだ。
 彼は拍子抜けしてしまった。本当に何も起こらなかった。ただヒロインが救われてだ。それで終わりだった。
 彼はまず呆気に取られた。何なのかと思った。しかしだ。
 暫くしてから怒りがこみ上げてだ。雑誌の編集部に怒って電話をかけた。二十四周クリアーしたがそんなことはなかった、と。それに対する編集部のコメントは。
「漫画ですから」
 それで終わりだった。本当にだ。そしてそれを聞いた彼はだ。二度とそのゲームをしなくなった。
 この話はおおよぞ実際にあったことである。年配の方から聞いた話だ。昔の漫画、そしてゲームにはよくこういった話があったらしい。このことを知っている方は思い出され、そして知らない方はあらためて知られて微笑んで頂ければ何よりである。そのことを願ったうえでここに筆を置く。


二十四周目   完


                2011・3・19
 
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