戦国異伝
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第二百四十四話 屋島の合戦その四
「ではな」
「はい、奴等がです」
「鉄砲の間合いに入れば」
「その時に」
「撃つのじゃ」
闇夜の中で密かに鉄砲を撃つ用意をしている足軽達も見つつだった、信長は佐々達に対して強い声で言った。
「わしの声があればな」
「大砲もです」
「全て撃つ用意が出来ております」
「弓矢もです」
「槍も備えております」
全てをというのだ。
「そして水軍も」
「先程二郎殿から使者が来ましたが」
「そちらもです」
「鉄砲と大砲の音がすれば」
「すぐにとのことです」
「わかった、ならばな」
ここまで聞いてまた頷いた信長だった。
「間合いまで入ればな」
「ですな、敵がそこまで来れば」
「その時は」
「まさに迷うことなく」
「わしが言う」
その命をというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「ここはです」
「上様がです」
「是非お命じ下さい」
前田達も応える、そしてだった。
信長は敵の動きを見ていた、すると。
今まさにだ、魔界衆の軍勢がだった。
間合いに入った、そしてそこから数秒でだった。
魔界衆が間合いに入った、その瞬間にだった。
信長は軍配を振り下ろしてだ、一気に叫んだ。
「撃て!」
「撃て!」
佐々が命を復唱した、するとだった。
鉄砲が一気に放たれだ、それから。
大砲も放たれ、その二つがだった。
今まさに織田の軍勢に襲い掛かろうとしていた魔界衆の軍勢を撃った、これには。
魔界衆の軍勢もだ、驚いて声をあげた。
「なっ、まさか!」
「撃って来たのか!」
「我等に気付いていたのか!」
「起きておったというのか」
「そしてか」
「既に用意していたというのか」
「攻める手立てを」
これにはだ、彼等は皆驚いた。それは本陣の棟梁達もだ。
次々に撃たれる鉄砲と大砲の轟音と倒される兵達を聞いて見てだ、仰天した。そしてそれぞれ言うのだった。
「まさか」
「織田信長は」
「既にか」
「我等の動きを読んでいた」
「我等がこの夜に攻めることを」
「夜明け前に」
「その様なことがあるのか」
「くっ、あの男の勘は鋭い」
ここで老人が歯噛みして言った。
「ならばだ」
「こうしたこともですか」
「察してですか」
「そして攻めて来る」
「そうしたこともですか」
「有り得ますか」
「しかも戦を知っている」
このことも認めるのだった。
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