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戦国異伝

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第二百四十四話 屋島の合戦その二

「山に入ります」
「そしてじゃな」
「若し織田信長が鵯越をしてきたなら」
 義経がそうした様にというのだ。
「その時は」
「防いでくれるか」
「はい、それがしが」
「ではその時はな」
「それがしもですな」
「忍術だけでなくじゃ」
 それに加えてというのだ。
「妖術も使うのじゃ、よいな」
「はい、わかっております」
「御主、いや魔界衆の忍は妖術も使える」
 老人はその厳しい顔で述べた。
「だからな」
「その妖術を使って」
「山から来る織田信長の軍勢を防げ」
「そう致します」
「何でも使って勝つ」
 老人はこうも言った。
「それが戦じゃ」
「だからこそですな」
「それを使って倒すのじゃ」
 山に来た織田信長の軍勢をというのだ。
「わかったな」
「承知しております、では今より」
 百地は老人に深々と頭を下げて言った。
「手下を連れて山に入ります」
「頼んだぞ」
「そしてわし等は、ですな」 
 石川は自分から老人に言って来た。
「敵の主力を」
「そうじゃ」
 老人もこう石川に返す。
「御主と楯岡、音羽はな」
「ですな」
「敵の主力に迎え」
「他の者達と共に」
「そうせよ、よいな」
「わかり申した」
 石川は老人に確かな声で応えた。
「ではそうしてきます」
「それではな、ではな」
「はい、それでは」
「今よりですな」
「攻めまするか」
「織田信長を」
「そうする、屋島では遅れを取ったが」
 しかしというのだ。
「今度はそうはいかぬぞ」
「この一ノ谷では勝つ」
「妖術も使い」
「そうしてですな」
「攻めまするな」
「是非な」
 こう言ってだ、そしてだった。
 魔界衆の軍勢は闇の中織田家の軍勢に迫った、夜明け前に仕掛けようとしていた。だがその彼等をだった。
 信長はその動きをしかとわかっていた、そしてだった。
 周りに対してだ、本陣において告げていた。
「敵が来ておるのならな」
「はい、それではですな」
「敵が間合いに来ましたら」
「その時はですな」
「攻めまするな」
「そうする」
 こう言うのだった。
「ただ、厄介なことはな」
「はい、福原の街はです」
「街は焼き払われておらず」
「邪魔になっています」
「それは抜かったか」
 信長はここで難しい顔も見せた。 
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