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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第40箱 「もうっ! めだかちゃんにセクハラなんて、許さないよっ!!」



 丁度、劉一とめだかちゃんが一緒に後継者選び? をしようとしていた時、善吉と阿久根先輩のにらみ合いは続いていた。

 話の内容を訊いてみると。

『この虫が!!』
『アンタ誰だったっけ!!』

 と、言い合いをしている様だ。高校生の口喧嘩ではない。所謂、子供の口喧嘩も良い所だ
 それに、何よりも声が大きいから、少し離れている2人にも丸聞こえだった。

「オレは心身ともにめだかさんに仕える者だ! めだかさんのためなら! 例え毒蛇の如く嫌われようとも望むところだ!!」

 物凄い宣言をしている阿久根先輩。
 正直、普通であれば引いてしまうレベルだと思えるだろう。劉一は何処か遠い目をしていた。

「……よっぽど好かれてるんだね? めだかちゃん」
「ふむ。……中学時代にいろいろあってな」

 めだかちゃんはそう言っていたけど、声色でよく判る。やっぱり めだかちゃんには、あまり好ましくない。めだかちゃんの事を思えば直ぐに判る筈だ。阿久根先輩には判らないのだろうか。

「……自己を放棄するっていう姿を見せるのは、誰「言うな、劉一」っ!?」

 劉一の言葉をめだかちゃんが遮るように言った。

「……え?」
「それは自分自身で気付かねばならない事なのだ。他人が言ったところで、あやつには届かない。そして、私達にはすべき事があるだろう!」

 めだかちゃんはそのまま、各部員達のほうへと歩き出した。

「うん……確かに、ね。 その通りかな? それに会ったばかりだしね僕は。赤の他人も同然だし」

 劉一は、それ以上は阿久根先輩については何も言わず、めだかちゃんの後に続いていったのだった。

「さて、少々遅れたが、これからやろう。 うむ、私に言わせれば柔道は教わるものではなく学ぶものだ…… それゆえに!」

 めだかちゃんはセンスをパシッとしまうと左手を上に、そして右手を下に構えた。

「まずは鑑定をしてやろう 貴様たちの値打ちをな。 われこそはと思うものから名乗り出よ! 私と劉一どちらでもよい! 全員1人残らず! 相手になろう!!」

 めだかちゃんはそう言っているけれど、劉一自体は、まだ何をするのかを訊いてないし、承諾してない。だけど、何をするのか、させられるのかは判った。それに、めだかちゃんがする、と言ったら絶対だから。何を言っても無駄だと言う事も判るから、劉一はそうそうに諦めていた。




 一方、柔道部 部員達は、めだかちゃんの宣言とその構えにざわめいていた



「くくッ! ナメられたもんやなーー、我が栄光の柔道部も! ……ってか なんで天地魔闘の構えやねん……」

 笑いながら見ているのは、依頼主である柔道部 部長の鍋島先輩。

「無理からぬ話ですよ。 いくら専門分野といっても、めだかさんと勝負になるのは 俺かアンタくらいでしょう」

 その隣には、先程まで善吉と喧嘩していた阿久根先輩。まだ、顔は赤い。……めだかちゃんの姿を見たからだろうか。

「くくっ そーかもな! ウチとしては もう1人の荒らし君……。いや、ボランティアクンかな? その劉一クンの実力の程が見れそうなんが楽しみや!」

 鍋島先輩は、劉一を見て妙に笑っていた。どちらかといえば、めだかちゃんより、善吉より、劉一に注目をしている様だった。

「……噂によれば黒神ちゃんは、例の劉一クンに惚れてるらしいで? 阿久根クン」

 まるで、焚き付ける様に 鍋島先輩は阿久根先輩にそう言う。
 そして、めだかちゃん関連に関しては、沸点が非常に低い阿久根先輩は、突沸した。

「なっ!!! そ、それは 本当ですか!!!!」

 鍋島先輩に、掴みかかる勢いで、訊いたのだ。

「近いで? ジブン……」

 予想通り、ではあるが、ここまで接近されるとは思ってなかった様で、手で 阿久根先輩を抑えた。

「ってか、ウチより 善吉君に聞いたら早いやん?」

 鍋島先輩は、そう言うと、善吉を指差した。

「はっ!! そうだ、おい!! 害虫(ムシ)!」

 今度は、善吉へとと掴みかかった。鍋島先輩と違うのは、本当に胸ぐらを掴んだ所だろう。

「近いですよ? ……阿久根先輩?」

 顔を引きつかせながら答えた。顔が物凄く近いのだ。おまけに胸ぐら掴まれているから、尚一層顔が近い。

「……さっきの話しは本当なのかっ!!」

 全く聞いてない阿久根先輩。善吉はいい加減にして欲しかったのだろう、ため息を盛大に吐いた。

「はぁ~…… いい加減離れてくださいよ! めだかちゃんが 人を好きなのはアンタもよく知ってるでしょ? 今更 驚く様な事ですか?」

 劉一とめだかちゃんについては、より深い。
 今までの相手とは全く違う事は違う。だけど、それを正確に、阿久根先輩に話すと、更に面倒な事になりそうだったから、それ以上は言わなかった。

 と言うのは、建前。実は善吉も少し嫉妬していたり……?  ←「よけーな おせわだ!!!」






 色々と外野が煩い状況だったが、めだかちゃん式の選別は始まっていた。否、柔道鑑定が始まっていた。。

「よおし!! だったら最初は俺からだ!! オレは副部長の城南だ! それに、フツーに考えたら次の部長は間違いなくオレだろーし!」

 天地魔闘の構えをしているめだかちゃんの前に、名乗りを上げた者が1人いた。

「はぁ……、命知らず、だね…… あんな下心満載でかかってきたら、怪我じゃすまないかもしれないよ? ストレッチ、ちゃんとしてるのかなぁ……」

 城南先輩の顔を見ながらため息をするのは劉一だ。柔道だって、ちゃんと準備運動をしないと、怪我をしてしまうかもしれないのに。

「おっ? 城南クンか!」
「まあ妥当な線ですね。」

 阿久根先輩は、善吉に詰め寄っていたのに、もうすっかり戻っていた。何事もないように、元に戻り柔道を見ている。どうやら、善吉が言った言葉は効果覿面のようだ。


 そして、次期部長? と言われている城南先輩とめだかちゃんの柔道の時間も始まった。

「ヒヒ!! それにこれ! うっかり おっぱいとかさわっちゃっても 不可抗力でいいんだよな!」

 城南は当然ながら、美人なめだかちゃんの方へと突進していった。

 正直に、柔道で、と言う事であれば 何も文句はなかった。……だけど、一言余計だったんだ。

「……って、ありゃ!!??」

 城南先輩は、気付けば天地がひっくり返ったかの様に、逆さま(・・・)になってしまっていた。
 そして、次の瞬間には、頭から叩きつけられるのか? と思えたが、流石にそれは危ないので、背中から地面に落ちた。

「ぐええっ!!」

 反応できてなかった為、受身を取る事が出来ず、衝撃を全身で受けてしまっていた。
 その城南先輩の襟と腕をとっているのは、……劉一だった。

「セクシャル・ハラスメントな発言してる時点で、全然不可抗力じゃないよ! もうっ!!」

 明らかに、劉一の顔色は険しい。……と言うより、完全に怒っている様だった。
 めだかちゃんは、劉一が割って入った事に気づいていたのだろう。構えをといて、腕を組んでいた。

「ふむ……、 流石は劉一。見事なキレだ、と言いたい所だが、城南2年生の指名は私だったんだぞ?」

 めだかちゃんも、少し怒っていた。だけど、それ以上に、嬉しそうな顔もしていた。劉一が嫉妬を感じてくれている事が判ったから。

「あっ……、ご、ごめんね? 確かにめだかちゃん、だったけど……流石に、ちょっと……、黙ってられなかったから……。こ、ここからは、めだかちゃんに従うよ!」

 苦笑いをしつつ、もうしない、と両手を上げてそう言っていた。

「まあ、それは兎も角だ。お前たち。それに、城南2年生。……全く伝わってなかったみたいだな? 私は全員纏めてかかってこいといったはずだぞ?」

 めだかは倒れて目を回している城南先輩にそう言った。





 先程の1本。あまりの速度だった為、誰も見る事が出来ていない、と思われたが……、はっきりと見た者も勿論いた。

「凄いで…? あのコ…」

 驚き、驚愕している鍋島先輩と。

「後の先の一本です…。業のキレより、……それよりも、もっと驚く所があります」

 阿久根先輩。その2人だ。
 2人は、答え合わせをする様に、合わせて言う。
 

「「いつの間にめだかさん『黒神ちゃん』の前に言ったかですね」やな……」

 彼の技の出来より、その移動速度が見えなかったのだ。

 それは決して、比喩ではない。
 本当に気付いたら、城南がひっくり返っていた。何事か?? と思って意識を集中させたら、その場所に初めて劉一がいた事に気づいた。と言う印象だった。
 まるで、時間軸がズレているのか? と思える程の現象だった。

「……人吉クンはどない思う?」

 鍋島は善吉に聞く。
 この中で、一番劉一に詳しいのは善吉だけだからだ。

「……別に、アイツは、今まで全然目立った事、やってねーですけど、よくよく考えたら、オレが知る限り、《初めてめだかちゃんに勝った男》ですから 今更、なにしても驚きゃしませんよ」
あの(・・)めだかさんに、………勝った?」

 善吉の言葉を訊いて、阿久根先輩は本当に、今日一番の驚愕の表情を見せた。
 確かに技術は……速度は目を見張った。めだかちゃんの姿をずっと見ていたから、見てなかったと言いわけもする所だった。だが、めだかちゃんに勝った、と言うのであれば、話は別だ。

「って 言っても幼稚園の時ですけどね」

 善吉は、最後にそう付け加える。それでも、めだかちゃんは特別だから 全く笑えなかった。

「なんや? 自分ら 所謂幼馴染なんか?」
「まあ…そんな感じですよ」

 善吉たちが、問答してる間に、めだかちゃんは柔道部員達をちぎっては投げちぎっては投げ、と柔道部の皆を宣言通り、纏めて相手をしていた。

 めだかちゃんの今の構え、《天地魔闘》は、某真・魔王の究極奥義。例え100人いた所で、普通の人間が抗う術などないだろう。

 ……正直、物騒だが、死んでいないだけでも十分及第点だ。めだかちゃんは、その後は 待ちから攻撃に変更したようだ。部員たちの群れ? にめがけて突進していった。

 劉一は腕を組んで立ってるだけだった。もう、これ以上でる必要がないから。めだかちゃんが全員をやっつけているから、もうやられた方は、体力(HP)が残っていない様子だから。



「あのコも凄かったけど あの黒神ちゃんもまあ バケモンやな……」

 鍋島先輩は、もう笑っていた。驚いたのは最初だけで、後はもう笑うしか無かったのだろうか。

「あいつはあいつで、中2で 赤帯を取得するようなバケモンですから そっちも別段驚きやしませんよ」

 善吉にとっては、日常。つまり普通だから 新鮮味が無い事だった。その答えを聞いて、鍋島先輩は再び笑った。

「クククク! そーかいそーかい! 善吉クンもその意見かい♪ そーやろ? 化物言われようと天才呼ばれようとあのコは……あのコ達は出来る事を出来る(・・・・・・・・)だけやろ? 不可能を可能にしとるわけや無い 極端な話 ウチらが普通にあるいてるんと変わらへんで」

 それは、結構強引な論理だと思える。だって、分身の術とか結構不可能だろうから。
 だけど、鍋島先輩はそう思っている様だ。

「まあ それに比べて、凡人の癖に天才達(バケモン)に、付き従っとる ジブンのほうがよっぽどスゴイやん なぁ? 部活荒らしの人吉善吉クン?」

 鍋島先輩は、善吉に近づいていったその時だ。

「それは納得できないよっ!?」

 直ぐ側にいつの間にか劉一がいた。

「おおぅ?? ジブン、鑑定はええんか??」

 突然現れた事に、驚きながら鍋島先輩はそう言った。
 劉一は、首を縦に振る。

「だって、めだかちゃんがもう殆どやっちゃったから、僕は城南先輩だけですることないんだ。それより……」

 劉一は顔を向き直した。

「違うよっ! 付き従ってるだけじゃないよ! 善吉は、結構僕に押し付けたりしてるし! 僕はおまけにめだかちゃんにもいろいろと… どっちかっていうと 僕が付き従ってると思うよ、善吉、楽してるもん!」

 最後の方になると、声がやや弱々しくなる。

「(精神(メンタル)がちょっと弱そうやなぁ……、まあ しゃーないか? この場合。十分異常やけど)まぁ~まぁ~ それにしても それをこなしてるジブンはスゴイわ。何で一組やねんて感じやで?」

 それでも、笑居続けるのは鍋島先輩だ。
 そこに善吉が入ってきた。

「お前はだから13年間サボってたからしょーがねーの! 俺のほうが年数的にひでぇんだよ!」
「ううっ……」

 劉一は、そういわれたら言い返せない。因みに最近の善吉は、この手をよく使ったりしているのだ。

「???」

 鍋島先輩と阿久根先輩はわかってないみたいだ。当然だろう。これは云わば身内の話だから。


「とにかく、付き従ってるってのは語弊があります。それは劉一と同じですよ。俺はアイツに振り回されてるだけです。「僕も、ね……」 生徒会だってムリヤリいれられたようなもんです」

 最後には、そう言って締めくくり 善吉と劉一は 本当に息を合わせているかの様に 同時にため息を吐いていたのだった。 

 
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