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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第二十話 決戦に備えて

ソレイユが所有しているホームに入ると、当然ながら鍛冶師としての仕事をする際に必要な道具がすべてそろっていた。武具屋として経営する気はないことを知っているベガとシリウスは、ソレイユの許可を得ず、工房を通りすぎ奥にある暖簾をくぐると、囲炉裏があった。囲炉裏がある場所に上がると囲炉裏を囲むように座る。ソレイユが座るとベガが刀をソレイユに渡し、アイテムウインドウを操作して、必要な素材を取り出した。

「やっとそろったから、さっそく打ってもらいたいのだけど・・・」

「ああ、もともとそのつもりだしな。んじゃ、打ってくるからくつろいでいてくれ」

刀と素材を受け取り、工房のほうへ消えていくソレイユ。言われたとおりくつろぐためにクリスは囲炉裏を操作して火を焚くと、薬缶をだし囲炉裏の自在鉤に引っ掛ける。少しするとお茶が出来上がり、薬缶と一緒に出した茶碗に注ぐ。すると工房の方から鉄を叩く甲高い音が聞こえてきた。

「ここって、変に落ち着くよな・・・」

「そうなんだよね~」

ベガから茶碗を受け取るとシリウスも茶碗に口をつける。

「「ズズズッ・・・フゥ~」」

お茶を飲みながらくつろいでいると、暖簾をくぐり刀をもってソレイユが現れた。持っていた出来上がった刀をベガのほうに投げ渡すと、ソレイユは刀の説明に入った。

「当たり前のようだが、成功した。刀の銘は≪天龍ドラゲリオン≫。それから、≪竜神王ドラゴン・ブレス≫時代には発現しなかった特殊効果が発現してるからな。そのへんはあとで確かめておいてくれ」

「了解よ、ありがとう」

説明を受けベガは頷き、礼を述べる。次いでソレイユがシリウスのほうに向きなおり口を開く前にシリウスは強化に必要な素材を実体化させ、槍をソレイユのほうへ突き出している。準備がいいシリウスに呆れるソレイユだったが、それらを受け取ると再び工房に足を運んでいく。そして、再び鉄を叩く甲高い音が響く。その間に二人は再びお茶をすすっていく。その姿はどこか、年老いた夫婦のように思える。そして、またしばらくすると暖簾をくぐりソレイユが姿を現し、出来上がった槍をシリウスのほうに投げ、武器の説明に入る。

「さっきと同文。銘は≪天狼ウルファウス≫。ベガの≪天龍ドラゲリオン≫同様に≪狼王ウルブス・ガーレ≫時代には発現していなかった特殊能力が発現しているから確かめておけよ。ちなみに二工とも情報屋の名鑑には載ってない」

「載ってたらそれはそれで問題だと思うけどね・・・」

「だろうな、龍を冠する武器や狼を冠する武器、それから不死鳥を冠する武器のような神獣や霊獣の名前が象られている武器はレジェンド・クエストを成功させないと手に入らないからな」

「実質、あれをクリアしてんのはおれらくらいだからな・・・」

「いや、つい最近と一緒に不死鳥クエストをクリアした攻略組がいるよ」

そうつぶやくと、ソレイユはアイテムウインドウから茶碗を実体化させ、囲炉裏の自在鉤に掛けてある薬缶をとり茶を注いでいく。驚きの新事実なはずなのだが、シリウスとベガは特に驚いた様子はなかった。

「あのクエストを?よくやる気になったわね・・・」

「まったくだぜ。不死鳥のクエストはないだろう。一回受けてみたがあんなの地獄以外なにものでもないぜ・・・」

「右に同じね、あんなのよく受ける気になるわね・・・」

「そうか、楽しいと思うけどな?」

「「いや、全然楽しくねぇ(ない)から」」

「・・・・それを言うなら、バハムートのあの弾幕やヴァナルガンドの桁外れな速度はどうなんだよ」

「「あんなのたいしたことないだろ?」」

口をそろえて言う二人にどこか理不尽さを感じるソレイユだったが、そんなことはいまさらなので気にしないようにしていた。

「さて、どうするんだ?例の件・・・」

「そのことなんだがな、ソレイユ。六日後に行こうと思うんだ」

「六日後・・・、か」

「ああ、だからそれまでに剣の強化をしていてほしいのよ」

「その心配なら無用だ。もう終わってる」

システムウインドウを開き黒い鞘に納まった長刀を取り出した。その長刀はオシリス戦で見せた長刀とどこか似ていたが、同じものではなかった。

「こいつの銘は≪天凰フェニクニス≫で、二日前に作った。ちなみにこれも、≪鳳炎皇フェニックス・エール≫時代には発現しなかった特殊効果が発現しているからな」

「・・・・・あいかわらず行動が読めねぇな、おまえ」

「悠々自適にやってるだけなんだけどな・・・」

呆れを含んだシリウスの言いように困ったように返すソレイユ。ベガは我関せず、といったように一人でお茶を啜っていた。微妙な雰囲気になったところをシリウスが雰囲気を変えるように咳払いをして話し出した。

「とりあえず、だ。六日後にあの古塔の入り口に集合だ。時間は、そうだな、十三時ごろでいいだろ」

「了解。ちなみに一つ聞きたいんだけど、なんで現地集合?」

「俺らはそれぞれ持ち味が違うし、マイペースで突き進んでいく性格だからな。ばらばらに行った方がいいと考えたんだ。それに、準備運動になるだろ?」

「なるほど、納得。確かに準備運動は大切だよな」

「そうね。でも、古塔に着く前にだれか死んだりした場合はどうするの?」

「いや、その心配はないだろ」

「どうして?」

ベガの疑問にシリウスは何気なく答えた。

「お前らの強さをよく知ってるからな。だから、あんなところに出るモンスターなんかには負けないだろ」

「そんな信頼されてもね~、困るんだけど・・・」

「私は素直にうれしいけどね。それに、ソレイユ。シリウスを降しているあなたが言うと嫌味にしか聞こえないわよ」

「そのつもりで言ったんだよ!」

「はいはい」

嫌味を肯定するソレイユだったがベガは華麗にスルーする。スルーされたことに軽くいじけるソレイユだったが、すぐに気を取り直した。

「とりあえず、六日後の十三時に古塔の前に現地集合だな」

「ああ。へたをうつなよ」

「同じ言葉を返してやるよ」

挑発するシリウスに挑発を返すソレイユ。そんな二人を見ているベガは苦笑いをしながら見守っていたが、お茶を飲み終えると暇を告げた。

「それじゃ、ソレイユ。私たちはそろそろお暇するよ」

「そうか。んじゃ、つぎは六日後だな。・・・死んでなければ」

「同じ言葉をあなたに返すわ。いきましょ、シリウス」

「おう、んじゃな。ソレイユ」

「ああ、またな」

暖簾をくぐり、工房を出て行く二人。そんな二人を見送りもせず、ソレイユは囲炉裏でお茶を啜っていたが、どこか難しい顔をしていた。

「六日後、か・・・。これはルナが泣くな・・・」

そうつぶやくと、残っていたお茶を飲み干し、腰を上げる。暖簾をくぐり、工房を出て行くとメニューウインドウを開き先ほどシリウスたちと話しているときに来たメールの確認をした。差出人はルナ。

【ソレイユが言っていた教会にいるよ~】

とだけ記されていた。それを読んだソレイユは工房を出て四十四層の転移門に向けて歩き出した。向かう先ははじまりの街の子供養護教会である。 
 

 
後書き
まぁ、なんていうか・・・前に話に出てきたソレイユの鍛冶スキルが活躍した回だな・・・

ソレイユ「あいつらの武器を仕上げたのはおれだからな・・・」

そして、ソレイユ・・・君はルナを泣かせる気でいるのか?

ソレイユ「ノーコメントだ。ネタバレになる」

そう、だな・・・まぁ、そこは楽しみにしていただけたらなぁと思います!!
それから、感想お待ちしておりま~す!! 
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