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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第八章 反転
  第13話 本当の声

 
前書き
今回は少し長め 

 
アイク「エレン、今すぐ彼らに攻撃しろ」

エレン「はい!」

意識が飛んでいるのか、反転した十香と上条は浮遊しながら目を瞑っている。さらに言うなら二人はお互いの手を握っている。それも両手だ。

無防備極まりないと判断したウェスコットは攻撃命令を出した。

エレンはそれに従い、二人を切り離すように斬りつける。

しかし。

エレン「……っ!?」

何かに阻まれ、剣がそれ以上振り下ろせない。

まるで見えない『壁』がそこにあるように。

バチバチと電気が迸り、同時にエレンを吹き飛ばした。

空中で何とか体制を立て直すも、あれはかなり危険だと直ぐに分かった。

アイク「……エレンでも敵わない。アレは何なんだ……?」

あのウェスコットでも分からない″何か″がそこにはあった。

と、ふと視線を下ろすとそこには見慣れない、そしてこの場には場違いな服装で立っている人物がいた。

アイク「……なるほど。ヤツの仕業か」

薄緑色の手術着を纏った男にも女にも子供にも年寄りにも見える、学園都市の統括理事長、『アレイスター・クロウリー』

彼はニヤリと口を尖らせながら″それ″を見ていた。

アイク「では私たちは退散しよう」

エレン「……はい」

あの壁を破りたかったエレンだが、一方通行や反転した夜刀神十香と戦った疲労が蓄積して100%の力を出せない今ではあの『壁』を破れる自信がない。

士道「待てっ!お前は俺の何を知ってるんだ!?」

ウェスコット達がこの場を離れようとしているのが分かってか、疑問に思ってきたことをぶつけた。

アイク「……『イツカシドウ』の事は知らないさ。『タカミヤシドウ』の事なら知っているがね」

士道「……え?」

その名は、実妹と名乗る『崇宮真那』の苗字と同じだった。

アイク「ではまた会おう、『イツカシドウ』」

士道「ちょっーー」

士道が何かを言う前に、ウェスコットとエレンはこの場を去った。





『壁』が無くなり、反転した夜刀神十香と上条が離れたのはその数十秒後のことだった。


ーーーー
ーーー
ーー




「なんだ、この記憶は……?」

夜刀神十香は頭を両手で抱えながら空中で苦しんでいた。

自分の剣が真下に落ちていることが気にならないぐらいに。

理由は頭の中で訴えかけてくる一人の男の声。





『士道は生きてる!だから目を覚ませ!!』





同時に浮かぶツンツン頭のシルエット。


十香「黙れ……」




『じゃあ皆んなに謝ればいい!佐天さんも士道も……もちろん俺も!皆んなも許してくれる!!絶対だ!!』






十香「黙れええええ!!」

ここでようやく自分の右手から『鏖殺剣(サンダルフォン)が離れているのに気がついた。


十香「くっ……」

素早く降下し、剣を拾おうとしたーー



ーーその時。




十香が触れるよりも早く、誰かが先に手に取った。


「これが………『あの子』が創ったモノの一つか……」


と、″その人″は眺めながら呟いた。

それは、先ほどのツンツン頭の少年だった。

だが。



上条?「流石ね……私じゃあこんなの創れなかったなぁ」



口調がまるで違う。

頭の中の少年は力強い声だったのに対して、こちらは迫力の欠片も見当たらない。

まるで別人のようだ。

十香「………お前は誰だ?」

上条?「やぁ初めまして。身体は『上条当麻』なんだけど、今は『神代柑果』が主導権を握ってるよ」

『上条当麻』という名には何故か聞き覚えがあるが、『神代柑果』の方は一切ない。

というか主導権だ?一体何の話を……

神代「あ、そう言えばこれは君のだったね。返すよ」

と言いながら『鏖殺剣』を差し出す。

十香「………」

無言で受け取ると少年は背を向けてどこかへ歩き出した。




それを全て見て、全て聞いていた他の皆は口をポカンと開けていた。

美九「ちょっと、あれ本当にさっきまでの彼なんですかぁ?なんか全然違うっていうか……」

士道「俺も分かんねぇよ。それに誰だよ、『神代柑果』ってよ……」

佐天「……まるで誰かが乗り移ってるみたい……」

士道「そうだな……って、佐天さん!?もう傷は大丈夫なのか!?」

佐天「まぁなんとか」

美九「それは良かったですー」

と、安堵しながらも三人の疑問は拭えなかった。それはここだけに限ったわけではない。

琴里『園神凜祢に神代柑果、それに反転した十香と接触した時のあの現象……一体何がどうなってるの?』

遠くからカメラ越しに見ている琴里も同じ意見だった。



ーーーー
ーーー
ーー




神代「影から見るとかいい趣味してるねぇ」

アレイスター「他人の身体を乗っ取る君よりマシさ」

少し離れた場所で柑果とアレイスターは言葉を交わしていた。

神代「なんだ見離されたのか?いい奥さんだったのにな」

アレイスター「『あの街』を創った時から覚悟は決めていたさ」

神代「そうかい。で?『計画(プラン)』は順調なのか?」

アレイスター「ほう、そこまで知っていたか」

神代「大幅な狂いが発生したところまではね」

アレイスター「それを修正する『もう一つ』の計画(プラン)が終わりを迎えそうなのだよ」

神代「……あの三人の事ね」

アレイスター「まさかこんなにも早く三人全員が″天使の力″を保持するとは思ってなかったがね」

神代「その功績の裏には奥さんの力もあったからだろう?」

アレイスター「否定はしないさ」

神代「素直じゃないなぁ。本当は今でも君のことを思ってるかもよ?」

アレイスター「四十年以上も会っていない私にか?」

神代「一途な恋は恐ろしいからね」

それには無言の返答をした。何か思い当たる節でもあるのだろうか。

アレイスター「……それより、後ろの彼女がそろそろ煮えを切らすところだが」

あからさまに話題を切り替えたが、まあ今は無視してあげよう。

神代「……そろそろ身体を返すか」

アレイスター「…………君は、自分の身体を″戻す″つもりはあるのか?」

神代「何のための魔力玉か分かっててそれを聞くのかい?」

アレイスター「念には念をだ。その時にはまた手伝おう」

神代「っていうか、君″達″の力が無いと無理だって」

そう言うと柑果は身体の主導権を上条当麻に返した。

上条が自分の身体を取り戻す頃には、アレイスターはもうそこにはいなかった。



ーーーー
ーーー
ーー



上条「………え?」

そして、主導権を返された上条は一瞬ポカンとした後、″無理矢理″身体を動かされた。

すると、先ほどまでいた場所にドカンという音を立てて剣が叩き落とされた。

その犯人は言うまでもない。




上条「………十香っ!」



そして、身体を動かした人物は。




凜祢『危なかったぁ……』





園神凜祢である。

長い髪に隠れて表情は分からないが……どこか怒っている気がする。

十香「………人間風情が」

ダメだ。声からして完全に怒ってる。

避けられたのがさらに癪に障ったのか、十香は勢い良く飛び上がった。

その直後、鏖殺剣が鈍く闇色に光りし出した。まるで周りにある、ありとあらゆるモノが吸い込まれていくような感覚が襲う。

凜祢『………!まずい!』

頭の中に今まで聞いたことがない凜祢の焦った声が聞こえた。

上条『どうした凜祢!?』

凜祢『あそこから凄い量の魔力が感じられる……っ!アレをマトモに受けたら当麻の幻想殺しがあってもかなりキツイかも』

上条『そんなにか!?』

凜祢『……どんなに運が良くても腕一本は覚悟した方がいいかも』

言われて、第三次世界大戦の事を思い出す。あの時も右腕が一度無くなったのだ。

凜祢『やっぱり″アレ″を使うしか……でも……』

と、凜祢が何か葛藤し始めていた。だがその間にも〈鏖殺剣〉は闇色の輝きを増し続け、今にも振り下ろしそうである。

その時。上条は気づいた。





その後ろに美九と士道と佐天がいることに。



上条「避けろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!!」



ハッとなって美九と士道と佐天は逃げようとするが、


十香「〈暴虐公(ナヘマー)〉ーー【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】!!」

十香の方が一歩早かった。


瞬間。士道達の視界が、闇に染まった。



ーーーー
ーーー
ーー




十香の振るった剣の延長線上に当たる全てモノに一本の線が引かれた。

一部削り取られたビル。その下に広がる地面。さらにその先に広がる街並み。そして視界の奥の奥に見える山々に至るまで。

比喩表現無しに、真っ二つだった。

士道達がいた場所は煙に覆われているが、恐らくアレを食らってマトモに生きてはいないだろう。

十香「ふ……はは、はははははっ!」

上空から、十香の高笑いが聞こえてきた。

十香「消えた。消えた。ようやく消えた。私を惑わす奸佞邪知の人間が……!」

叫ぶように言い、両手を広げる。

そう。

ウェスコットもエレンアレイスターも何処かへ行ってしまったし、先ほどの四人は消し去った。なのでここには十香一人しかいない。



ならばーー




「誰が消えたって?」






ーーこの声の主は誰のものだ?

十香「なっ………!?」

煙が晴れると、そこには上条と士道が佐天と美九を護る形で立っていた。

上条は右手を前に出していて、士道は十香の〈鏖殺剣〉を握りしめて立っていた。



左手をかざした先に、冷気の壁というべき結界を張って。

それは、四糸乃の氷結傀儡(ザドキエル)の力によく似ていた。



士道「よぉ……美九、佐天さん。大丈夫か?」

佐天「へ?あ、はい……」

美九「どうし、て……?」

十香も美九も、信じられないものを見たというような顔をしながら士道と上条の方を向いた。

対して、士道は一言。

士道「約束ーーしたからな」

美九は士道の言葉に眉根を寄せ、ハッと肩を揺らした。

それは、ここに来る前にーー


美九『じゃあなんなんですか、私がもし十香さんと同じピンチになったら、あなた、命を懸けて助けてくれるとでもいうんですかぁ!?』

士道『当然だろうが!』

確かに、士道はそう答えた。



美九「ぁ……」

守ってくれた。この人は。士道は。そして上条も。

守ってくれた。あれだけ罵倒した自分を。

守ってくれた。あんな、小さな約束を。


その嬉しさか、美九の目からは大粒の涙が溢れ出した。


士道「……といっても、八割以上は上条のおかげなんだけどな」

佐天「え?どういうことですか?」

士道「いくら結界があったからって、あんな凄い攻撃を全部受けられるはずがない。俺が防いだのはその前にあった『壁』から漏れた魔力だけだ」

佐天「『壁』……?」

ふと上条の方を見ると、身体は無傷なのに肩から息をしていた。

視線に気づいたのか、上条はそれに答えるようにゆっくりと口を開いた。

上条「あれは『凶禍楽園(エデン)』と『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が融合した合わせ技……『楽園殺し(エデンブレイカー)』だ」

佐天と士道はイマイチ理解できなかったが、上条が続けて説明する。

上条「『凶禍楽園(エデン)』は……厳密には違うけど、大まかに言えば幻想を創るものなんだ。その創った幻想を『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で幻想という″概念だけ″をぶち壊す。そうする事で創造したものは現れる。俺はそれでバリアを張った。まあ十香の攻撃が強力すぎて全部は防げなかったけど」

士道「……佐天さん分かったか?」

佐天「いや、全然……」




例えばの話。

何もない部屋にいたとする。

そこに上条が……例えば机を置きたいと考える。

上条は『凶禍楽園』の力で机を創る。

しかし、それは″偽りの世界″の机にすぎない。

その後、上条は″幻想という概念″だけを壊してその机を″本当の世界″に引きづりこむことができる。

これと同じ要領で上条はバリアを張ったのだ。

だが魔力の消費も大きいため一日数回しか使えない。

それに今日は空を飛んだり、模写した『颶風騎士(ラファエル)』を使ったりと何かと魔力を消費しているため、かなりギリギリのラインを走ってる。



凜祢『良かった……使っておいて』

上条『そうだな。マジで助かった』

そう。先ほどのアレと言うのは『楽園殺し(エデンブレイカー)』のことだったのだ。

上条「それより士道、今なら十香を救える……」

士道「そうだ!………でも、俺があんな高いところにいけないし」

そう、士道は空を飛ぶことが出来ないので十香とキスできない。

と。



「なら、あいつのとこに飛ばせばいいンだな?」



横ーー士道達が入ってきた大きなドアがあったところーーから、聞き覚えのある声が聞こえた。

上条「一方通行!!」

一方「よォ。いい具合にやられてンじゃねェか」

佐天「怪我は大丈夫なんですか?」

一方「俺があの程度の奴に怪我するかよ。面倒くせェからお前早く行け」

言いながら士道の腕を掴む。

士道「ちょっ、待て!心の準備がーー」

一方「フン!」

士道の講義を無視しながら十香の方へ士道を飛ばす。

それも十香の方へ一直線でなく、弧を描くように投げられたのだ。




それは意図したものではなく偶然だった。

だが、それが功を奏した。




一人の少年が、落ちてくる光景。




十香「私は、この光景をどこかでーー」

ーー見たことが、ある。

それを認識すると同時、記臆がーー彼女の知らないはずの光景が頭の中をありありと映し出された。

巨大な剣を振り上げる精霊。そして、その名を呼びながら、空から降ってくる少年。

十香「十ーー香……」

自分の名を反芻し瞬間、彼女の頭に鋭い痛みが走った。

その、一瞬の隙に。

士道「ーー十香!」

空から降ってきた少年が彼女の眼の前まで肉薄していた。









士道「よう、十香。助けにきたぞ」




ーーーー
ーーー
ーー





一方「終わったか」

上条「……そうだな」

佐天「そういえば文化祭はどうなったんですか?」

上条「……美九が洗脳した人達がある意味仕切ってたからなぁ」

美九「その洗脳を解いたから、今はどうなっているか分かりませんねー」

上条「え?そうなのか?」

美九「当たり前ですー。ちゃんと約束を守ってくれたお礼ですぅ」

上条「約束?」

美九「……そう言えばあなた、あの時あそこに居ませんでしたね」

上条「ん?一体なんの話を……」

美九「レディとの約束を忘れる殿方の事なんて知りませんよーだ」

上条「は!?え、上条さんいつの間にかアイドルと約束してた!?え!?何を!?」

上条の反応が面白かったのか、美九はクスリと笑った。

美九「それを思い出すまでは口を聞いてあげませんよぉ」

上条「嘘っ!?」

佐天「あー、上条さんお疲れ様っす」

一方「……くっだらねェ」

佐天は苦笑いし、一方通行は舌打ちをし、上条は頭を抱えて悩んでいた。

美九はもう一度クスッと笑って上条の方を向いた。

美九「冗談ですよ。じゃあ私はこれで。天央祭の最終日にまた私歌うつもりなんですよ。今度は″この力″無しで……」

少し不安そうな表情を浮かべる美九。確かに、精霊の力あるのと無しではCDの再現とはいかないし、迫力や魅力が落ちる可能性もある。

美九「それでも、来てくれますか?」

間を空けずに、上条と佐天は答えた。

上条「あぁ、もちろんだ」

佐天「是非!!」

遅れて一方通行も。

一方「ハァ、また面倒くせェことができたな……」

言い方から察するに来てくれるようだ。

美九はハッと驚きながらも、また笑みを浮かべた。

そして、搾り取るような声で彼女は言った。





美九「ありがとう……」





その目には薄っすらと、涙が浮かんでいた。


ーーーー
ーーー
ーー




天央祭三日目。

上条「ここで合ってるよな?」

佐天「多分そうだと思いますよ?」

今上条達が居るのは舞台の観客席なのだが、一般客は普通の客席で、美九を見上げる形なのだが、上条達は舞台裏の階段を登り、一般客とは別の二階ーーというよりはスタッフ専用の渡り廊下ーーみたいな所から見下ろす感じで美九を応援するのだ。

十香「うむ!実にいい眺めだ!」

四糸乃「……た、楽しみ……です!」

よしのん『四糸乃〜、はしゃぎすぎてサイリウム落としちゃダメだよ〜?』

四糸乃「大丈夫……しっかり、持ってるから……!」

琴里「でもよくこんな所いけたわね。誰かのゴネ?」

耶倶矢「くっくっく……我の力にかかればこの程度ーー」

夕弦「否定。耶倶矢のおかげではなく、美九のおかげです」

耶倶矢「ちょっ!?今いいとこだったのに!!」

琴里「……でしょうね」

一方「……騒がしい奴らだな」

………まあ、反応は人それぞれということで。

佐天「そう言えば士道さんは?」

上条「なんか美九に呼ばれてたらしいけど……やけに遅いな。ちょっと探しに行ってくる」

十香「あっ、私も一緒に行くぞ!」

と、走り出す上条の後を十香が追って行った。


ーーーー
ーーー
ーー



十香「その……ありがとうなのだ」

上条「ん?何の話だ?」

今上条と十香は、恐らく出演者の待機室と思われる部屋が並べられた廊下を歩いていた。

ふと十香が話しかけたかと思うと、彼女は俯きながら歩いていた。

十香「あまりよく覚えてないのだが、心の中で当麻の必死の声が聞こえたのだ。あれは幻ではなく、本当に起こったものだと……根拠はないけど、確かにそう思えたのだ」

少し悲しそうな顔をしながら、十香は続けて言った。

十香「私はあの言葉で救われた。アレが無ければ……もしかしたら、今頃私はーー」

と、言おうとした時、十香の頭の上にポンと手が置かれた。

上条「もう終わったことだ。そんな顔するなよ。救われたんならそれでいい。救ったのがたまたま俺だっただけだよ。だから笑え。俺は笑ってる十香の方が好きだからさ」

優しい言葉でそう言うと、十香は満面の笑みを浮かべた。




十香「ありがとうなのだ!」




その笑顔を見て、上条もホッとした。引きずりすぎるタイプでなくて良かったと本当に思う。

と。


「きゃあああぁぁぁ!!!!」

向こうのほうから、女の子の悲鳴がこだました。

十香「な、何なのだ!?」

上条「とにかく行ってみよう!!」

二人は先ほどとは打って変わって険しい表情になりながら廊下を走り出した。

不審者が出たのか?それともゴキブリを見て驚いたのか?

後者なら何とでもなるが、前者ならかなり危険だ。その女子生徒の身が危ない。

廊下を曲がった先にはドアが開きっぱなしで、腰を抜かした女子生徒が一人いた。

上条「どうしたんだ!?」

走りながら叫ぶ上条。それに気づいた女子生徒は顔をこちらに向けながら、震えるような声で言った。

「そろそろステージだからと誘宵美九さんを呼び出しに来たら……!」

確かにドアには『誘宵美九様』と書かれた紙がセロハンテープで貼ってあるのが見えた。

女子生徒は指で部屋の中を指す。

一体何が……?

そんな事を思いながら女子生徒を庇うように急ブレーキして部屋の中を見る。

そこには。






顔を赤く染めながら″裸で″士道に抱きついている美九と、どうすればいいか分からず手が泳いでい士道がそこにいた。






まず思った。




これは、予想の斜め上を行っていたと。





そして、気づいた。




あぁ、封印したのか。




士道「違う!!上条、これは誤解だ!!」

………封印してないのか?じゃあこの光景は一体どういう状態なんだ?

遅れて十香も中の様子を確認すると同時に、顔がどんどん険しくなっていった。

十香「シドー……これは一体どういうことなのだ?」

士道「と、十香!?なんでここにっ!?」

まるで浮気がバレた夫とそれを怒る妻のセリフみたいだ。

上条「………上条さんにも詳しく教えていただきたい」

士道「お前は分かるだろ!!」

上条「………さっき誤解だって言ってただろ。封印したんじゃないって」

士道「合ってるよ!概ねどころかその通りだよ!!百点満点の答えだよ!!何も誤解してないんじゃねぇか!!!」

十香はそれでも納得していないようだが。

そこに、ずっと黙ってた美九が口を開いた。



美九「そうですよー。″だーりん″と私は愛を育んでいただけですー。邪魔しないでくれますかぁ?」

なんと火に油を注いでいくスタイル。


隣でピキッという割る音が聞こえたのも気のせいでは無いだろう。


十香「シ〜ド〜ォ〜?」


士道「………何でしょうか十香さん?」

身の危険を感じたのか、士道は美九から離れて後ずさる。

十香はどす黒いオーラを纏いながら士道に近づく。

美九はその間に衣装に着替える。

上条は苦笑いしながら立ち尽くす。




つまり。





十香の制裁を止める者は誰もいない。





十香「ハァァァァァ!!!」

士道「うわぁぁぁぁ!!!」




この日。士道は一度目の死を迎える事になる。



ーーーー
ーーー
ーー



誘宵美九ではなく。


宵待月乃として。



この日。彼女は舞台へと上がった。



″力″無しでの歌に、一瞬観客は騒めいた。

そりゃあそうだろう。″力″を使えば直接脳内に響くのに対して、無しでは歌を感じ取ってもらわなければならないからだ。

が、それも少しの間のこと。美九の″本当″の歌声を聞いた彼らは、『偽りのファン』ではなく、『本当のファン』として、盛り上げて、歓声を上げて、最後には拍手を送ってくれた。



美九は満面の笑みを浮かべながら、最後の最後に爆弾発言を落として、このライブを締めくくった。







「ありがとう……ございます……だーりん、大好き……っ!!」














 
 

 
後書き
と、いうわけで第八章反転を無事終えることができました!いかがだったでしょうか?

いやー、色んなキャラが出て凄い事になったなーと個人的に感じましたwもちろん、level5全員(?)を登場させたのには意味はあります。意味深な事を言うと、今となってはもうどうでもいい事なんですw

えー、次回は或守編に入ろうと思ってたのですが……あの後上条さん絶対琴里に質問攻めされるよなー……って思ったので、『神代柑果』の過去編をサラッとやりたいと思います。これまで創った伏線の半分くらいは回収するんじゃないかなー?って思ってますw楽しみにしていてください!

最後に。

とある3人のデート・ア・ライブを読んでくださってありがとうございます!!

これからリアルの方で多忙になるので、定期更新できるか分からないですが頑張りますので、これからも作者とこの作品をよろしくお願いします!!! 
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