おぢばにおかえり
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第二十二話 最初の卒業式その二
「それからだったのよ。私は」
「先輩・・・・・・」
「だからね、ちっち」
先輩のお話は続きます。
「私は優しい人間なんかじゃないのよ」
「優しい人じゃない・・・・・・」
「とても残酷で。酷い人間なのよ」
涙が見えました。先輩の目に。
「そんな私なのよ。ちっちが思っているような」
「いえ」
自然に言葉が出ました。今。
「先輩は優しい人ですよ」
「嘘よ」
私の今の言葉はすぐに否定されました。先輩の御言葉で。
「だから私は。そんな」
「今の先輩はです」
また自然に言葉が出ました。自分でもそれがかなり不思議でしたけれど本当に言葉が出ます。私が話している感じじゃないようでした。
「今の私は?」
「そうです。そのことを反省しておられますよね」
このことを尋ねました。
「今は」
「ええ・・・・・・」
私の言葉にこくりと頷いてくれました。
「とてもね。だから今は」
「その今の先輩です。私が好きなのは」
本当に言葉が自然に出ます。それが続きます。
「今の優しい先輩が」
「そうなの」
「そうです。ですから先輩」
先輩に声をかけました。
「今を見ましょう。そしてこれからも」
「これから・・・・・・」
「天理大学に行かれるんですよね」
天理高校から天理大学に行く人は多いです。元々付属高校みたいなものですし。天理高校はおみちの人が多いので進学するならそこになることが多いんです。
「確か」
「ええ。詰所に住むことになるけれど」
「ずっとおぢばですね」
「そうよ」
このことをこくりと頷いて認めてくれました。
「少なくとも四年はそうよ」
「ですね。高校ではお別れですけれど」
そのことがとても悲しいです。先輩が卒業されるそのことが。けれど。
「ずっと御会いできますよね」
「おぢばってね」
ここでまた先輩は仰いました。
「ふしぎやしきって言われるじゃない」
「はい」
これは子供の頃から聞いています。色々なことが起こる場所だって。私はまだそうしたことに出会ったことはないと自分では思っていますけれど。
「だから。また会えるわ」
「ふしぎやしきだからですか?」
「人と人の出会いは奇跡なのよ」
昔の歌であったフレーズだったと思います。
「お引き寄せで出会えるものだから」
「じゃあ私と先輩も」
言葉の意味がわかりました、今。
「お引き寄せだったんですね。ここで一緒の部屋になれたのは」
「そうよ。だからこれからも」
また仰います。
「会えるわ。お引き寄せでね」
「そうなんですか」
「大学と詰所にはいるから」
おられる場所がわかったのは本当に有り難いです。おかげで何処に行けばいいのかわかりますから。けれどお話はそれで終わりではありませんでした。
「あと潤ちゃんや佐野もね」
「高井先輩と佐野先輩も確か」
「天理大学だから。学部は違うけれど」
だから別れと言っても高校を卒業されるだけなので寂しいことは寂しいですけれど泣くようなものじゃないんです。それが嬉しいと言えば嬉しいです。
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