大海原の魔女
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十話 W島救援作戦!
前書き
お久しぶりです。一時期春風にアクセス出来なかったことに加え 学業が忙しかったこともあり、とうとう五月になってしまいました。
それは突拍子のないことであった。
「君には戦闘の指揮官を頼みたい。」夕方の執務室で、私は指揮官に任じられたのだ。
・・・「ちょっと待ってください おかしくないですか!?」
「何かね?」 「私はカールスラントではなくブリタニアの軍人で、しかも技術大尉にすぎないのですが!」そもそもここへ来たのはウィッチの技術指導のためであって、指揮官なんて面倒事を引き受けるためではない。確かに 海戦ウィッチ以外の者には、水上の戦場に立ち,ネウロイと戦いながら戦闘指揮を執ることは難しいだろうが。
「外国の士官を任命するとはいえ,特に問題はない。この艦隊には外国にバレて困るような情報はなく、 それに 君がここに着任したとき,ブリタニア海軍からは『煮るなり焼くなり好きにしろ』と言われていてね。
つまり,今の君はカールスラントの海軍士官とたいして変わらず、本官でもこのように指揮官に任命することなどが可能だ。」 あのやろうども…
「あと,階級についてもあまり問題はない。技術大尉とはいえ多数の功績をもつ君に対して、ここにいる少女たちはみな新人で,一番階級が上の子ですら大尉だからね。」……まてよ,大尉というと…ツェッペリンのことか。 …彼女は貴族だから,結構プライドが高かったよな……
「なら、その大尉が文句を言うとしたら どうしますか?」
「 別に構わない。」わざわざ執務室まで呼び出されたツェッペリンは、すぐにそう答えた・・・ Why?
「実戦経験のない私よりも、エレン,教官である貴女の方が 上手く戦闘指揮を執ることができるだろう。
というわけで 任せた。」 「これで問題はないね?」……面倒だが,「 わかりました。」 まったく、また研究時間が減るなぁ。
「…まぁ,あくまで臨時だから我慢してくれ。本官も,昨日の海戦で多くの将官がヴァルハラへ送られたためにKonteradmiral(少将)に昇格させられて、これからますます仕事がさらに増えるのだからな。(ああ、ストレスでまた髪が抜けそうだ…)」不満が伝わったのか、司令官はこちらをなだめるように言う。・・・だが,なぜだろう?司令官から哀愁を感じる。
◇ ◇ ◇
1940年4月29日 ウーゼドム島へ向かう特設運送船の船上
「そういうことで、私が指揮を執ることになったわけだ。これから任務中は『カールスラント海軍水上歩兵艦隊 第一水上歩兵群‘‘臨時”司令 兼 義勇部隊隊長』と呼んでくれ。」
「いや ちょっと長くないかな。」「もちろん冗談だ、司令でいい。」
装備の整備などの準備は終わったので、あとは 着くまでレーベたちと話すくらいしかやることがない。
「うーん、なんでウーゼドム島に向かっているのかな?」ふと,レーベが疑問を言う。「ウーゼドム島にその隣のヴォリン島、どちらも小さな島で 救援を送ってまで防衛する価値はあるの?」
ユーも疑問を口にする。「それに…なんで、小さな村のはずのペーネミュンデに 向かってるのかな?島最大の港町で JG53も‘‘転進”してきたスヴィーネミュンデとか…周りに大きな町が ないわけじゃないのに…」
…確か 前世の世界では ペーネミュンデには……
…「エレン、着いたわよ。」マックスに肩を叩かれた。考え込んでいるうちに到着したようだ。
埠頭からバスに乗せられて出発すると、そう時間もかからずに ある施設にたどり着く。
「ここは…何,ですか?」 ユーが呟く。
「ペーネミュンデ兵器実験場。陸軍と空軍が新兵器を研究・開発していた施設だ。」聞き覚えのある声に振り向く。 ユーの疑問に答えたのは・・・・・!
「スオムス以来だな、技術‘‘少尉”。」
「お久しぶりですね、ルーデル大尉。」 ハンナ・U・ルーデル…彼女はカールスラント国内外にその勇名を響かせる 最強クラスの地上攻撃魔女だ。
「あれから‘‘そこそこ”活躍したらしいな。」
「まあそうですね。おかげで 今では私も技術‘‘大尉”です。」
「ほう、二階級特進でもしたのか?」大尉はニヤリと笑う。
「まさか。ブリタニア海軍では少尉と中尉はSub-Lieutenantに纏められていて、だから少尉の一つ上がLieutenant(大尉)になるのですよ。
それより 大尉たちも大活躍しているそうじゃないですか。毎日のように新聞や雑誌に名前が載っていますよ。」特に大尉には,『地上型ネウロイ最大の敵』『空飛ぶ魔王』『最強の地上攻撃女王』 などなど、すでに幾つもの異名がつけられている。
そのように答え返すと、彼女は傷のある顔を僅かにしかめる。
「あれはプロパガンダに過ぎん。軍は宣伝省と組んで ウィッチの小さな戦果を大きく伝え、国民を安心させると同時に 魔力を持つ少女の志願を煽っている。
実際のところ、オーデル・ナイセ川に防衛線を敷き,ネウロイの侵攻を食い止めることで精一杯。国家の危機だから仕方がないとはいえ、やっていることは詐欺と変わらん。」
「しかし貴女が活躍していることは嘘ではないはずです。そうでしょう,アーデルハイドさん?」大尉の副官に同意を求める。
「報告されていないものを含めると、むしろ戦果が増えますね。休日返上の出撃は当然で、負傷しているときでさえ,密かに出撃していますから。」
「それがなんだ?
病室にいるとな、魔導エンジンが唸る音が聞こえるたびに、拳を耳につめこみたくなる。スツーカ隊は、今日も地獄で戦っている。そう思うと、のん気に寝ていることが口惜しくて、 気がつくとストライカーを履いているのだ。」
「『空中機動歩兵になにより大切なのは、冷静な判断力だ。』とおっしゃったのは大尉ですが。」
「あの程度の傷なら問題ないと、冷静に判断しただけだ。」彼女は言い切った。
「ええと…」「…予想以上にすごい人ね。」「 ああ。」 やはり ウィッチというのは濃い人物が多いな。
・・・門をくぐると 部下の子たちはアーデルハイドに別の場所へ連れていかれ、一方 私と司令官はルーデル大尉に付いて行くと、やがて ある研究棟の会議室にたどり着くと、
精悍な顔つきをした壮年の将校,少しあやしげな研究者,ウィッチと思われる年若い少女・・・既に様々な人間が集まっていた。
「 ふむ、揃ったようだな。」どうやら私たちが最後のようで、中央の席に座っていた将校が口を開いた。
「では、作戦会議を始める。」
◇◆◇◆◇◆◇
「「「W島救援作戦?」」」
「そうです。あなたたちと 我ら 第二急降下爆撃航空団第十飛行中隊 … ‘‘スツーカ中隊”がここへ呼ばれたのは、現在JG53が防衛中の W島ことヴォリン島を救援するためです。」広めの休憩室で、アーデルハイドさんがインナたちに説明しはじめたのです。
「あっ…あの、この作戦はどんな理由で立てられたのですか?」とりあえず質問なのです。
「大きな理由は三つほど。
まず 地図を見てください。
────────────────────
周辺地図
 ̄|………②………………/ ̄
・| |P ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄| |××
・|  ̄| ①・s |_★×××|⚪︎|××
・| | ̄・・ | 口 |・・・| |××
・L  ̄ ̄ ̄ ̄…… ̄ ̄ ̄③|××
・・L___④_…………|××
・・・・・・・  ̄L_⑤/×××
・・・・・・・・・・| |××××
・・・・・・・・・・| |××××
・・・・・・・・・ S| |××××
★=W島(ヴォリン島)
①=ウーゼドム島
②=ポメラニア湾(バルト海)
③=ディーフェナウ海峡(もしくは川)
④=シュテッティン湾(シュチェチン湾)
⑤=オーデル・ナイセ川
・・=人類が維持している地域
×=ネウロイの占領地
…=水域
P=ペーネミュンデ
s=スヴィーネミュンデ(シフィノウイシチェ)
S=シュテッティン(シュチェチン)
────────────────────
今我々がいるウーゼドム島とヴォリン島,この二つの島と本土の間にはシュテッティン湾がありますが、そこにはオーデル川をはじめ,この辺り(ポンメルン地方)からいくつもの川が注いでいます。現在 水上型ネウロイはW島と本土の間の海峡で食い止めていますが, これ以上戦線が後退すれば 湾への進入を許すことになり、そしてそこから川を上られれば ポンメルン地方西部も危機に陥るばかりか,オーデル・ナイセ川の防衛線も崩壊しかねないと予測されています。ソレを防ぐというのが第一の理由です。」
「二つ目の理由はここ,ペーネミュンデにあるわ。」…だれなのですか?
そう思っていたら、すぐに名前を教えてくれました。
「私は第53戦闘航空団(JG53)第七中隊中隊長ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中尉です。」
「何故JG53の方がここに? совет(ソビエト)…失礼,会議に出席しにきたようでは、なさそうだけど。」ヴェロニカが問いかけたのです。
「第七中隊は戦闘地域の後方であるウーゼドム島の哨戒を担当することになっているけど、実質的には このペーネミュンデ兵器実験場の警備が役割なの。
ここはカールスラントの中でも特に重要な研究所で、多くの研究員の避難は済んだけれど、まだ世界でも貴重な設備や資料が残されているわ。少なくとも それらの移転が終わるまではネウロイの侵攻を食い止めなければならない…そのための救援作戦よ。」
「そして第三の理由は…こう言うのも何だけど、プロパガンダのためでもあるわね。」そのままミーナさんが説明します。
「開戦以来 負け続きだから、陸軍および空軍としてはこの作戦を成功させることで国民の士気を上げたいの。
海軍が参加を希望したのも、創設したばかりの水上歩兵艦隊を活躍させたいがためなのよ。陸空軍上層部は 海軍の手は借りたくないのだろうけど、水上型ネウロイの相手は大変だから…」
「というわけで、私たちが呼ばれたわけだ。」 「エレン!もう会議が終わったの?」マリーケさんの言うとおり、早いのです。
「大まかな内容は上の方で既に決めていたからな。その割には長引いたが、まあウィーン会議にはならずに済んだ。(まさかリアルで『陸軍としては海軍の提案に反対である』を聞くとは 思っていなかったが)
ところで,久しぶりだな、ミーナ。」「ミーナさんとも知り合いなのですか?」
「昔 家族や近所の家の人とウィーンに旅行したときに知り合ったの。「近所の家の人じゃなくてボーイフレンドだろう?」
…これがそのときの写真よ。」 『むしされたですな』「うるさい。」
写真に写っているのは、劇場の入り口に立つ 今よりも幼いミーナさんにエレンさん,そして真っ白な女の子 …誰なのです?
「あの、この子は「今から倉庫に行って、明日使用する兵器を説明する。Follow me(付いて来い)」あのっ、ちょっと…」
結局女の子について聞けないまま、その日を終えたのです。
◇◆◇◆◇◆◇
1940年4月30日
「もう一度作戦を確認する。
我々の役目は、地上型ネウロイの輸送と対地砲撃を行っている水上型ネウロイの‘‘殲滅”だ。
まずポメラニア湾に存在する水上型を撃破。
次にスツーカ中隊が両岸の地上型を叩き次第 ディーフェナウ海峡に突入し、そこにたむろするヤツらを撃沈する。
飛行型に対しては 第7中隊含むJG53が抑えてくれることになったが、彼女たちが凌ぎきれなくなった場合は昨日渡した兵器を使う。
…以上だ。」
「「「Jawohl!(了解!)」」」
私たちは魔導エンジンを起動し、単縦陣で海を東へと進みはじめた…
・・・しばらくすると、『ネットワーク』越しにネウロイを見つけた。
「東南東の方角,距離20000に水上型ネウロイの群…中型6,小型多数。
…どうやら対地砲撃を行っているようだ。」
「陸軍は大丈夫?」ビスマルクが聞いてくる。
「・・・今のところは。だが 早く接近して攻撃を始めた方がいいだろう。
陸のネウロイから攻撃を受けるリスクもあるが、これはある意味チャンスでもあるからだ。」
・・・速度を上げて近づいていくと、ネウロイのビームが飛んできはじめた。が、シールドで逸らし,あるいは躱しながら接近。 同時に私はライフルからマナを込めた弾を撃って反撃する。
「 Fire! 」こうすることでネウロイの群れの動きを牽制しつつ、さらに接近…そして敵の姿が点々と見える距離に入ったら…
「「「Feuer(フォイアー)!」」」
本格的に, 戦闘開始‼︎
ーーードドドドドドドドドーーー
───ピュンピュンピュン───
現在の戦形は同行戦。 未だ個々のネウロイはよく見えないが、数が多いのでいくらか当たっている。また、初陣の娘たちもこの距離なら敵の光線も上手く凌げている。しかし,
「もっと接近するぞ。」 一匹も逃がすわけにはいかない。そのためには、より近くに迫り,確実に攻撃を当てる必要がある。
向こうもその気なのか、水上型ネウロイの方からも近寄ってきた。…戦闘は激しさを増す。
・・・赤い閃光をシールドで弾き,機関銃でネウロイを穴だらけにする者・・・
・・・ビームを躱しつつ,的確にライフルでコアを撃ち抜く者・・・
・・・身体を傷付け,震えながらも,固有魔法で纏めて撃破する者・・・
・・・・誰もが必死に戦い続け・・・・
…マズいな。膠着状態に陥った。
皆訓練時間が足りていない割には頑張っているが、初陣のせいか動きがわずかに硬い。
どうにか状況を打開したいが…
「…ん?」敵の動きが変わった。…中央へと集まっているのか?
「陣の中央の者は注意しろ。もし集中攻撃をされそうなら、」
シャチのようなものから上陸用舟艇に似た輸送タイプまで、集結したネウロイが赤く発光しはじめる。
「左右に分かれて回避! 」
数瞬後 無数の光線がそこを貫いた。
「ッ無事か!?」「みんなピンピンしていますっ!」「それならいい!」
それにしても、ネウロイにとってもあの膠着状態は面倒だったようだ。
単縦陣の欠点の一つが 中央に強力な攻撃や突撃を受けると分断されかねないことだ。 こうして二つに分かれた部隊はそのまま各個撃破されてしまう。トラファルガーの海戦が代表例だ。
しかし,「それは19世紀の戦術だ。いや,小回りがきかない軍艦の艦隊ならゴリ押しできたかもしれないが…」
これまで以上の速度で中央に向かってくるネウロイたち。その群れに一斉に銃を向ける。
「 技術の進歩した20世紀に通用すると思うなっ‼︎ 」殺し間に入った先陣を,十字砲火(クロスファイア)で粉砕する!
─────────────‼︎‼︎
ネウロイの甲高い悲鳴と グラスが砕けたような音が聞こえた。 後に続いていたネウロイも、先陣がやられたのを見て引き返しはじめる。でもその動きは 私たちにとって都合がいい!
「追撃に移ります。」「Ура!(ウラー!)」「やぁ!」
追撃し 追撃し、やがて陸の方へと追い詰める。
「これでもう逃げる場所はないぞ。」なぜかというと、こんな浅いところでは 中型以上はその巨体のせいで動きにくくなり、さらに陸上の味方(人類)が背後から攻撃可能になる一方,陸上の敵(ネウロイ)は味方の位置の都合で援護しにくい。
そこで Question! この状況でどうやって死をかわすか?
3択- 一つだけ選びなさい
Answer①ハンサム?の水上型ネウロイは突如反撃のアイデアがひらめく
Answer②仲間がきて助けてくれる
Answer③かわせない。現実は非情である。
①はない。確かにネウロイには高い学習能力があり,人間の裏をかくような知能?もあるが、人のようにすぐに考えて対応することはできない。
つまり今回選べるのは『②仲間がきて助けてくれる』しかない。連中にとっては幸いなことに,空にはまだ多くの飛行型ネウロイが残っていた。
「飛行型ネウロイがこっちに向かってるわ!」リディヤが固有魔法で感知する。「JG53が突破されたのか?なら、アレを使うぞ。」
仲間のピンチに駆けつけるため、多くの犠牲を出したうえで航空ウィッチの包囲を突破し,向かってくるグライダー型のネウロイ。
そいつらを、斜め下から飛来した‘‘ロケット弾”が撃墜した。
昨日手に入れた兵器は ルフトファウスト…ウルスラ・ハルトマンが開発したロケット兵器,それをペーネミュンデなどの研究施設で改良したものだ。一発の威力こそオリジナルに劣るが、射程は伸び,筒を束ねることで同時に複数のロケット弾を発射することができる。今は使い捨てだが、数が少なかったので一斉射でケリがついたのだ。
「終わりだな。」と ツェッペリンが呟いた。
「ああ、これでもう邪魔は入らない。」つまり この問題の答えは
───Answer③かわせない。現実は非情である。────
「私の前を遮る愚か者め。沈めっ!」「ユーは、負けません!」「Feuer.」
・・・こうして ポメラニア湾の水上型ネウロイは この世から消え去ったのだった・・・
「 作戦の第一段階はクリアした。次に向かう。」
◇ ◇ ◇
第二段階を行う海峡の入り口にたどり着いた。それはいいが、向こう側の妖精さんと視覚を『アクセス』したところ・・・
「海峡に入ってすぐ左の死角にネウロイの群れが潜んでいるようだ。」さて、どうしようか。
「私たちがいるじゃない!」 …ライサ?
「私とインナの合体魔法なら,群れごと動きを止められるわ。だから もーっと頼ってもいいのよ。」「あの…インナも頑張るのです!」
「…そうか、 なら 見敵必殺(サーチアンドデストロイ)の意気で頼む。」
敵の攻撃を考慮し,陣形を複縦陣に変える。この陣形なら、ペアの片方がシールドを張り,片方が攻撃することができるからだ。
───ボゥンッ!ボゥン!────
スツーカ中隊の爆撃音をBGMにして、突入すると・・・・
ネウロイの姿が瞳に写ったッ!
「 今だ‼︎ 」
二人が荒れ狂うかの如き雷撃を放つ。その一撃は見事に敵群中心に命中し、海の水面を通して周囲のネウロイも感電させる。
そうしたら、続いて、
「‘‘倉庫”から魚雷用意!」
「「「トロペト・ロス(魚雷 発射)!」」」
狭い海峡で、痺れて身動きできない標的に外れるわけがなく、
───ドドドドドドドドドドドドドドドドドーーン────
粉 砕 !
・ ・ ・ ・ ・
とりあえずジャマなヤツらはいなくなったので、奥に進む。
進むにつれ 水上型ネウロイがちらほらと現れるが、中型以上は見られない。もういないのか?
・・・いや、海峡の小島の裏に見つけたのだが・・・
「この大きさは大型ネウロイか?」だとしたら厄介だ…
「…マリーケ、頼めるか?」
「・・・え、私!?」
「合体魔法で私の『ネットワーク』と君の『座標爆発』を組み合わせれば、上手くいけば大型も一撃で殺れる。」
「わ、私 魔力制御が出来るようになったのもつい先日で…」
「 Yes, we can! 」
「…アンタ…ま、いいわ もう…」ようやく彼女は頷いた。
・・・深呼吸し、私とマリーケの魔法力を合わせる・・・・・合わさった。
「見えているか?」「ええ。」彼女も妖精さんと視覚を共有できたようだ。
・・・魔力を高め、杖をタンカーのような大型ネウロイの方向に向ける。
・・・3、2、1
「海の底に、消えろっ!」
ーーーその瞬間、大型ネウロイの頭上に火の玉が生まれた。あっという間に膨らんでいくソレに ネウロイの全体の1/3が呑み込まれ、残る2/3も爆風によって圧壊し、やがて全てが粉々になったーーー
「・・・やったわね。」息を乱したマーリケが言う。やはり凄まじい威力を出した分,消耗が激しかったか。
「確かにやったな、
…大型ネウロイはな。」そう、まだ小型が残っている。
「もう小型しか残っていないせいか、南に逃げ出し始めたみたいだな。」
「海峡の南の出口は封鎖されているのでは?」シャルンホルストが言うとおり、海峡の出口は防潜網をネウロイ用に改良したものや機雷で封鎖されてはいるが、
「数が減ったとはいえ、一度にたくさんのネウロイが来たら突破されるかもしれない。」
だから、「空を飛んで先回りするぞ!」 実は今回、両用ユニットを履いていた。ほとんどの者が初陣という状況では 思わぬトラブルが起こりかねない…それに対応するには空も飛べた方が良いと考えたのだ。
他に両用ユニットを装着しているのはツェッペリン…彼女と共に飛び立った。
・・・「見つけたぞ。」
「敵群発見か。よろしい。攻撃準備! 蹴散らすぞ!」
「待てツェッペリン。」「何だ?」
「ここから先に、海峡で一番狭くなるところがある。そこで‘‘アレ”を投下するぞ。」「なるほどな。」
先にその地点へ飛んだら、水上型の群れを待つ。
……しばらくして、ヤツらがやってきた。そして先頭がそこを通る直前、
「「投下!」」
投下したのは、本来は投げるものでないネウロイ用の侵入防止網。空中で大きく広がり、小型ネウロイの群れに覆い被さる。
マナを込めたソレはネウロイの動きを鈍らせ、網がかからなかった後ろのヤツも先に進めず、とうとう詰まってしまう。
「では、トドメは任せます。」───ルーデル大尉。
◇ ◆ ◇
「スーツカ中隊、我に続け!」
ルーデルの号令と共に、ビームで網を破ろうとするそのカタマリに急降下するウィッチたち。適正な高度まで降下し、‘‘倉庫”から爆弾を取り出し 投下する!
ーーー異空間倉庫のおかげで、より大型の,より多くの爆弾を落とせるようになった彼女たちの猛爆撃で、頑丈なはずの水上型ネウロイの群れが 一瞬にして半壊。
……辛くも生き残ったネウロイは後方へと逃れようとするが……
「逃がさないわよ…甘く見ないで!」……追撃してきた海戦ウィッチたちに撃沈された。
・・・・ 海戦終了後、スツーカ中隊は余った爆弾でもってW島の地上型ネウロイを爆撃。海戦ウィッチらの援護射撃もあり、残りの敵を撃滅する。 これにてW島救援作戦は無事成功に終わったのである。・・・・
◇◆◇◆◇◆◇
「………今回の作戦で水上歩兵艦隊の死者は0名。負傷者は8名ですが,いずれも軽傷で命に別状はありません。」作戦終了後、私は司令官に報告をした。ちなみに私たち水上歩兵艦隊はスヴィーネミュンデの海軍基地に移っている。
「そうか。よくやってくれた。‘‘明日”はゆっくり休んでくれ。」
「…明後日は?」
「次の任務があると考えてくれ…」・・・やれやれ。
「あっ…エレンさんと,おと…Admiral.… 今から ユーたち皆で祝勝会をやるのだけど、どう,ですか…?」ユーがドアを開けて誘いにきた。
「…私は仕事が忙しいから 後で顔だけ見せるよ。エレン君は出たらどうだい?」
「 OK.」
「…Danke.」
彼女と一緒に、祝勝会の部屋へ歩いていこう。
しかし、初陣だったというのに皆元気だな。 子供だからか?
『いや あんたもこどもやろ』『えれんさんじゅうにさいだからー』『せいしんてきにはおばさん?おじさん?』・・・・・妖精さんたちはいつも元気だな。
後書き
次の更新は・・・いつになるだろうか?
設定
カールスラント海軍 水上歩兵艦隊…第一水上歩兵群だけでなく、整備兵や軍医などからなる後方支援部隊と 特設運送船一隻も 所属している。
第一水上歩兵群には 国外から派遣されてきた海戦ウィッチによる義勇部隊も含まれ、また 今のところ第二や第三はなく,‘‘第一”しか存在しない。
水上歩兵隊の定員は6名で、水上歩兵群は通常 4個水上歩兵隊編成。人数が多くないのは、陸空軍と人材の取り合いになっている
からである。
ルフトファウスト(空の拳骨)…ウルスラ・ハルトマンが開発したロケット兵器を改良したもので、地対空兵器としても使える。再装填できないという欠点があっため、のちにフリーガーファウスト(空飛ぶ拳骨)が開発され、それからさらにフリーガーハマー(空飛ぶ鉄槌、サーニャ・V・リトヴャクが使用)が生み出されることとなる。
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