FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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昨日の敵は今日の友
前書き
マジでウェンディとシェリア二度と魔法使えなくなるのかな?
もし本当にそうなら今ボンヤリ浮かんでるアルバレスのイメージはやめて、最後にシリルとレオンが一生二人を守る的な感じにしようか・・・
「私の使う魔法は、あなたを倒す魔法です」
「我を倒す魔法だと?」
ウェンディの言葉に不機嫌そうな声になったジルコニス。真っ直ぐに敵であるドラゴンを見据えるウェンディ。
「それより服~!!ちょっと!!服~!!」
二人の間に緊張感が張りつめる中、その後ろでは服を消されたルーシィが胸を隠しながら騒ぎ立てていた。
「フフッ」
ジルコニスは小さく笑うと、大騒ぎのルーシィを掴む。
「「「「「ルーシィ(さん)!!」」」」」
必死に逃げようともがくルーシィ。だが、ドラゴンの力に敵うはずもなく、彼女は囚われの身となってしまった。
「なかなかうまそうだな、クンカクンカ」
「嗅ぐな!!」
ジルコニスはルーシィの匂いを嗅いだ後、ツンツンと彼女を突っつく。
「ほほう。歯ごたえ良さそうだな」
「や~め~て~!!」
その一連の様子を見ていたウェンディはさらに表情を険しくさせる。それと同時に、自身の持てる魔力を一気に高めていく。
「おや?怒ったか?嬢ちゃん」
全身から魔力が溢れ出ているウェンディを見てニヤニヤしながら茶化すジルコニス。
「我がこの娘を食うよりも先に、我を倒せるかな?」
金髪の少女を掴む腕に力を入れるジルコニス。そのせいでルーシィは苦しそうに表情を歪ませる。
「アームズ!!バーニア!!付加!!」
自らの能力を上昇させるウェンディ。その隣では、魔人と呼ばれるこの女性が、彼女同様に意識を集中させていた。
「倒します」
「ははぁ。ナメたことを。小賢しいわ!!」
けたたましい咆哮に後方へと押されるウェンディとミラジェーン。彼女たちが怯んだ隙に、ジルコニスは翼を広げて空へと飛び上がる。
「ルーシィさん!!」
到底ジャンプ等では届くとは思えないほどに飛び上がったジルコニス。彼は自分を見上げることしか出来ていない少女たちを見て高笑いする。
「空も飛べぬ人間がここまで来れるかな?」
勝利を確信したように余裕綽々のジルコニス。その彼の手の中にいるこの女性は、体を小刻みに震わせていた。
「寒い・・・」
「上空だからな。寒さで身が引き締まるとなおうまい」
「ひいいいい!!」
恐怖に髪が逆立つルーシィ。万事休すと思われたその時、地上からこちらに向かって飛んでくる一つの人影が現れた。
「はあああああ!!」
ルーシィを口に運ぼうとしていた彼の顎に拳を繰り出したのは最強の悪魔へと変貌した魔人。その一打で、ジルコニスは口を閉じられてしまい、ルーシィを食らうことに失敗した。
「効かんな」
だが、彼女の不意打ちも全くジルコニスには効いていない。しかし、彼女の目的は彼の注意を引き付けることだった。
「ウェンディ!!今よ!!」
「はい!!」
ミラジェーンの指示を受けて翡翠の竜の後ろに回り込んでいたウェンディ。彼女はシャルルに持ち上げられ、上空へとやってきていたのだった。
「天竜の・・・咆哮!!」
「ぐおおおおおお!!」
後頭部に風の渦が見事に命中する。魔人の攻撃を受けても動じなかったその竜は彼女の攻撃に怯んでいた。
「見て!!ウェンディ!!効いてるわ!!」
「うん!!」
自分の魔法が、力が通用する。それを確信したウェンディは自信を持てたのか、シリルやナツのような戦う魔導士の顔へと変化していた。
「おのれ!!」
「きゃああああああ!!」
怒ったジルコニスは思わず持っていたルーシィを遥か彼方へと投げ飛ばす。
「ルーシィ様!!」
「ルーシィはオイラに任せて!!」
それにいち早く反応したのは青い猫。彼は翼を拡げて投げ捨てられたルーシィを追走する。
「お願い!!」
「頼んだわよ!!ハッピー!!」
ハッピーが彼女を追いかけていくのを確認したウェンディとシャルルはすぐに目の前の敵へと意識を戻す。
「私たちはジルコニスを」
「そうね」
ウェンディとミラジェーンが並ぶようにジルコニスへと向き合う。そんな彼女たちの目に移る彼は明らかに怒っていた。
「調子に乗るなよ、しゃべる食料ども。すぐに食らってやるわ!!」
冷静さを欠いているようにも取れるジルコニス。それに対し二人の魔導士は落ち着いていた。
「サポートするわ、ウェンディ」
「よろしくお願いします」
初めて組む二人。だが、共にギルドを優勝へと導いた彼女たちにそんなことは関係ない。
「ふん!!」
ウェンディを捕まえようとしたジルコニス。だが、シャルルがすぐに彼の頭上を越えるように飛び上がる。
そちらに視線を向けてしまった翡翠の竜は、自分の腹部に入ってきていたこの女性に気づかなかった。
「これならどう!!」
「くっ!!」
比較的柔らかい部位に入った魔人の蹴り。それにジルコニスが怯んでいる隙に、ウェンディとミラジェーンは前後を取る。
「おのれちょこまかと!!」
次第に怒りで顔が赤くなっているようにも感じるジルコニス。二人の息の合ったコンビネーションに、彼はただ苛立っていくだけだった。
シリルside
炎に包まれているドラゴンの前足。それが俺の頭上に降り下ろされる。だが、レオンの速度に比べればそれはかなり遅く感じ、俺は目を使ってその機動と威力を瞬時に把握して、攻撃の範囲外へとジャンプする。
「逃げられると思うなよ!!」
今の一打を回避した俺だったが、アトラスフレイムはそれも予想の範囲だったらしく、尻尾を使って俺の頭を撃ち抜こうとしてくる。
「水竜の・・・鉤爪!!」
だが、それは俺にも予想できていた。空中で足に水を纏わせ、炎の尻尾を蹴り飛ばす。しかし、ドラゴンの力はやはり絶大で、完全に相殺したと思ったのに、後ろに吹き飛ばされてしまう。
「くっ!!」
なんとか体勢を整えながら地面に足から着地する。重心を低くして転ばないようにしつつバランスを整え、すぐにアトラスフレイムに向かい合う。
「水竜の・・・」
腕をクロスさせ、敵の真下に入るように突進する。
「翼撃!!」
ドラゴンの翼のように腕を拡げ、腹部を狙って攻撃を繰り出す。大体鱗のある生き物は全身を覆っていても、お腹の部分は柔らかいはず。今はそこを狙って攻めようと考え、奴の下に入り込んだのだ。
「水竜の・・・」
拳に魔力を集中させ、翼撃を打ち込んだ場所に続けざまに攻撃しようとした。だが、
「その程度か!?」
「!!」
俺が攻撃するよりも先に、アトラスフレイムは平然とした感じで空へと飛び上がってしまう。おかげで鉄拳は空振りに終わってしまった。
「貴様のようなこむ・・・小僧など、取るに足らんわ!!」
また小娘と言おうとしてるような気がしたけど、それどころではない。アトラスフレイムは翼を強く強く羽ばたかせ、地上にいる俺に風をぶつけてくる。
「うっ!!あっつ・・・」
炎でできた翼で扇いでいるせいなのか、熱風と化した強風が吹き付けてくる。炎のような熱さとはまた違うが、風圧が強いのも重なり顔を背けてしまいそうになる。
「うぅ・・・」
熱と風で目が乾燥してきて、正直開けているのも辛い。たびたび行う瞬き程度ではとてもとても目を潤わせることなんてできない。
それでもギリギリのところで踏み止まろうとしていたが、奴の翼は疲れを知らないようで、休むことなく吹き付ける熱風に耐え切れなくなり、俺はとうとう目を閉じてしまう。
「そこじゃあ!!」
俺が目を閉じたのとほぼ同時に突進してきたと思われるアトラスフレイム。俺は片目を半分だけ開き、敵との距離を把握する。
広範囲に風を発生させるためにアトラスフレイムは大きく距離を取っていた。そのため、まだ俺と奴との差は十分にある。避けるほどの時間は取れないであろうが、技を繰り出すのは造作もない距離感だ。
「水竜の盾!!」
腕を振るい、巨大な水の盾を作り出す。これでアトラスフレイムの突進を防ぎ、あわよくば次の一撃に繋げようと考えた。しかし、
「甘いわぁ!!」
アトラスフレイムは水の盾をあっさりと粉砕した。
「なっ!?」
あまりの出来事に驚愕してしまう。しかし、体はこの危険にいち早く反応してくれた。頭で考えるよりもワンテンポ早く、反射的に地面を強く蹴り高く飛び上がる。飛び越えられるかギリギリの場面ではあったが、今はここからなんとかするしかあるまい。
できるだけ高く飛ぼうと足を抱え込む動作へと入る。しかし、俺が抱え込むよりも早く、アトラスフレイムの体が俺の下半身へと激突した。
第三者side
「こっちよ!!」
「ぬっ!!」
空中戦が繰り広げられているメルクリアス上空。ジルコニスの背後を取るように動き回るウェンディとシャルルにジルコニスが手を伸ばそうとする。
「それ!!」
しかしそれは囮。前後を取るように戦っていたウェンディとミラジェーンは、片方にジルコニスの意識が向くともう片方が攻撃する作戦を取っており、完全に主導権を握っていた。
「そっちか!!」
伸ばしかけた手を引っ込め、ミラジェーンの方に振り向くジルコニス。それを確認したウェンディはすぐさま攻撃体勢に入る。
「天竜の砕牙!!」
「ぐあっ!!」
天竜の爪がジルコニスの腕を引っ掻く。ミラジェーンの攻撃はあまり効いてはいないようだが、滅竜魔導士であるウェンディの魔法は、確実にジルコニスにダメージを与えていた。
「おのれ小娘が!!」
二兎追うものは一兎も得ずとはよくいうが、今のジルコニスはまさしくそれである。ウェンディとミラジェーン、二人をどちらも仕留めようとしてしまい、逆に攻撃を加えるどころか放つことすら出来ていない。それにも関わらず、彼がいまだに双方を追いかけ回しているのは、彼女たちのコンビネーションに翻弄されてしまい、苛立ちが募っているからなのであろう。
「天竜の・・・咆哮!!」
ほぼ零距離でブレスを打ち込むウェンディ。それは振り向きかけていたジルコニスの横顔へと直撃した。
「ぐああああ!!」
その攻撃により地上へと落下していくジルコニス。
「ウェンディ!!」
「はい!!シャルル、お願い!!」
「わかったわ」
地面に叩きつけられたのを見てミラジェーンとウェンディはその場所へと降下していく。
「やったのか?」
「どうだろ~?」
自分たちの目の前に落下したジルコニスを見てリリーとセシリーは勝敗の行方を見守る。今は砂煙に彼は包まれており、姿を確認することは出来ない。
「倒したのかな?」
「わからないわ。でも、これだけの攻撃を受けて無傷ってことは―――」
地上に降り立とうとしたウェンディとシャルル。彼女たちはジルコニスを倒したのかどうなのか判断しようと砂煙が巻き立つ方を目を凝らして見つめる。
すると、シャルルが言葉を話している最中、煙の中から何かがこちらに向かって来ているのに彼女たちは気付いた。
「危ない!!」
「「きゃっ!!」」
ウェンディとシャルルを横に押したのは悪魔の姿へと変貌している銀髪の女性。不意を突かれた格好になってしまったウェンディたちは、地面に伏すように倒れ込む。
そして彼女たちを押し倒したその女性は、
「きゃあああああ!!」
煙から現れた太い腕に殴り飛ばされてしまった。
「「「「ミラ(さん)!!」」」」
自分を守るために自らが攻撃を喰らってしまったミラジェーン。彼女はそのままエクリプスの扉へと衝突し、守られた少女たちはそちらに心配そうな視線を送る。
「だ・・・大丈夫・・・よ・・・」
最悪の事態だけは回避されていたことに安堵の息を漏らすウェンディたち。しかし、扉にぶつかった衝撃があまりにも大きく、ミラジェーンはなかなか起き上がることが出来ない。
「まずは貴様から食らってやる」
そう言うと動けないミラに手を伸ばすジルコニス。それを見たウェンディは、二人の間に割って入る。
「天竜の・・・翼撃!!」
「ぬっ!!」
ウェンディの腕から発せられた風がジルコニスの腕を押し返す。自分の思い通りにことが進まず、ジルコニスはさらに苛立っているようだ。
「いいわよ!!ウェンディ!!」
「いっちゃえいっちゃえ~!!」
「ジルコニスとここまでやれるとは・・・」
イケイケムードのシャルルとセシリー。彼女たちの隣にいる黒い猫は自身の何倍もの大きさのあるドラゴンと互角に渡り合っているウェンディに感心している。
「小娘・・・我を怒らせてただで済むと思うなよ?」
突然、ジルコニスの目付きが先程までとは異なり、鋭くなる。その瞬間、ウェンディは全身に鳥肌が立った。
「ふん!!」
「きゃっ!!」
凪ぎ払うように腕を振るい、目の前の少女を弾き飛ばしたジルコニス。少女は数メートルほど地面を擦るように滑り、シャルルたちの前で止まった。
「「ウェンディ!!」」
「だ・・・大丈夫・・・」
目の前の少女を心配して声をかける二人の猫。ウェンディは彼女たちを安心させるように、地面に手を付いてゆっくりと立ち上がる。
「危ないからもっと下がってて、シャルル、セシリー」
「わかったわ」
「オッケ~!!」
ジルコニスを正面に見据えたまま、後ろにいる大切な仲間たちに指示を出すウェンディ。それを聞いたシャルルとセシリー、そしてリリーは急いでその場から距離を置く。
「まだ動けるか!?」
ウェンディに向かって力強く握りしめた拳を降り下ろすジルコニス。藍髪の少女はすぐさまそれをジャンプして回避する。だが・・・
「きゃああああ!!」
その少女の口から大きな悲鳴が発せられた。その理由は敵の拳が当たったからではない。回避され地面を叩きつけたその威力は絶大で、その場を粉砕し、飛び散った破片が空中にいる少女を捉えたのだ。
「あう!!」
身動きが取れない空中に逃げてしまったことで与えられたダメージ。少女はそのせいでバランスを崩し、地面に腹から落下してしまう。
「うぅ・・・」
体を起こそうと体に力を入れるウェンディ。しかし、奈落宮での餓狼騎士団との戦いや城での兵士たちとの交戦で疲れ果てているその少女は、向きを変えることが精一杯で、到底起き上がるには時間が足りない。
「あーはっはっはっ!!なんだ?それでおしまいか?嬢ちゃん」
目付きが当初の人間を格下に見ているものへと戻った様子のジルコニス。彼は地面に座ったまま起きれないウェンディを見て笑い、見下ろされている少女は表情を歪ませている。
「まずは貴様から食ってやろう。服を消してからな」
そう言うと大きなドラゴンは、口に桃色の魔力を溜め始めた。
「っ・・・足が・・・」
中央広場でたった一人、ドラゴンと戦っているシリル。彼は先程アトラスフレイムに突進された足に激痛を覚え、その部位を押さえて起き上がれなくなっていた。
「これで終わりだ」
「!!」
後ろから敵の声が聞こえ、横目でそちらを確認する。そこには炎で覆われた腕を高々と上げ、降り下ろそうとしているアトラスフレイムの姿があった。
「くっ!!」
容赦なく降り下ろされた拳。だが、シリルはそれを転がるようにして避ける。
「むっ!?」
ギリギリとはいえ、自身の攻撃を交わされたアトラスフレイムは驚いていた。そのままシリルは一度身を隠そうと建物の陰に逃げ込む。
「や・・・ヤバかった・・・」
建物の壁を背もたれのように使い上体を起こすシリル。ただ、足の痛みがまだあるようで、立ち上がるには少々時間が必要なようだ。
「でも、大したことはなさそうでよかった」
大魔闘演武の最終局面では、左腕が完全に使用不可の状態になっていた。それに比べれば、時間が経てばすぐに動ける程度のダメージだったようで、ホッと一安心のシリル。
(問題は・・・それまであっちが待ってくれるわけないと言うことだが・・・)
隠れながら敵の様子を見定めようとするシリル。アトラスフレイムは攻撃を放つのに夢中だったようで、シリルがどこに転がっていったのか見ていないようだった。
(これなら・・・)
大丈夫そうだと一瞬、甘い考えを持ってしまったシリル。だが次の瞬間、彼は驚愕することになる。ドラゴンの嗅覚というものに。
「クンクン・・・そこか!!」
鼻をヒクヒクとさせ、シリルの匂いを探っていたアトラスフレイム。彼はある場所で動きを止めると、建物の上半分を炎で撃ち壊す。
「!?」
その建物はシリルが隠れているものだった。
「やべっ!!」
運良く炎はシリルの頭の上数センチを通過していった。だが、確実に自分の居場所がバレてしまったシリルはその場に留まることなどできない。
痛みが引き切っていない足を動かして移動するシリル。アトラスフレイムはそれに気付き、体を反転させながら尻尾で彼を打ち砕こうとする。
「おっと!!」
しかし、それはシリルには当たらない。少年は咄嗟に地面に倒れるようにしてその攻撃を回避すると、すぐさま起き上がり、アトラスフレイムに突進していく。
「水竜の・・・」
指先に魔力を集中させていくシリル。彼は背を向けた格好になっている炎の竜に、魔法を繰り出す。
「砕牙!!」
「ぐおっ!!」
シリルの引っ掻き攻撃が見事にアトラスフレイムの後頭部を捉える。水と炎、効果は抜群なようで、アトラスフレイムはかなり痛みを感じている様子だった。
「小癪な!!」
「がっ!!」
だが、彼がそれに怯んだのも束の間。アトラスフレイムは長い尻尾を器用に使い、シリルを地面に叩き付ける。
ガシッ
地面に落とされた水竜。そんな彼の上に炎の竜は自らの巨大な手を置き、一切の動きを封じる。
「うぅ・・・熱い・・・」
直に炎が彼を押さえつけているため、少年は熱に耐えきれずに顔を歪ませる。
「いくら水の竜とはいえ、我が業炎を喰らえば一溜まりもあるまい」
「くそ・・・」
押さえ付けたシリルを一瞬の内に焼き消そうというのか、アトラスフレイムは口に炎を溜めていく。
「はっはっ!!服を消してから存分に辱しめて、それから食らってやろう!!」
痛みと疲労で身動きができないウェンディ。そんな少女に対してもジルコニスは容赦などするわけもなく、彼の魔法を発射しようと魔力を溜めていく。
「人間が我に勝つことなどできぬ。それを知るが良い」
少年を押し潰すほどの力を腕に込めつつ、同時にブレスも放とうとしているアトラスフレイム。
「泣きわめくが良い!!我に歯向かった後悔と共にな」
「痛みも感じぬほどに、一瞬で灰にしてやろう」
ジルコニスとアトラスフレイム。二頭のドラゴンのブレスは同時に、小さな竜へと放たれた。
「「ウェンディ!!」」
藍髪の少女のなまえを叫ぶ二匹の猫。彼女たちは少女を助けようと翼を出したが、とてもじゃないが間に合わない。
(やられる!!)
水髪の少年は咄嗟に目を閉じた。あまりの恐怖と襲い来るであろう激痛から逃れようと。
(シリル!!)
(ウェンディ!!)
腕を胸の前に持ってきて、衣服を消された時のために備え、目を閉じる藍髪の少女と、歯を食い縛り、今できる最大限の魔力で体を包み込み、炎に耐えきろうとする水髪の少年。
完全にやられてしまうと思われた二人の妖精。だが、そんな彼らの元に思いもよらない者が現れる。
「危ねぇ!!」
服をかき消すブレスが迫る少女の脇に手を回すと、腕から波動を出して飛び上がる赤髪の男。
「封印の氷地獄!!」
少年に迫る、全てを焼き尽くす大火を凍らせる黒い氷。そして、
「天神の北風!!」
「何!?ぐあっ!!」
大柄なドラゴンの体を後ろへと押し返す黒い風。
「これで七年前の借りは返したってことでいいかぁ?」
「え?」
地面に着地しながら、脇に抱える少女にそういうのは、フードがついたマントを羽織る男。
「よかった。間に合って」
「大丈夫だった?シリル」
「もうギリギリだったぁ!!」
「え?」
炎の腕から解放された少年に声をかけるのは、シャツと短パンというラフな格好をした金髪の少年と、少々はだけている服に袖を通した赤紫色の髪の少女。そして、少女の背中にくっついて翼を出しているオレンジ色の猫。
「なんじゃ!?貴様は」
「何者だ!?お前ら」
突如として現れた人物に苛立ちにも似た声を上げる二頭のドラゴン。その敵に向き直るように、彼らは体の向きを返る。
「俺の名はカミューニ。限りなく滅竜魔導士に近い男だ」
「蛇姫の鱗、シェリア・ブレディ」
「同じくレオン・バスティア」
「ラウはラウルだよぉ!!」
かつて水竜と拳を交えた二人の男。さらには天竜と互いの力を出し切る戦いをした少女と彼らの相棒。
劣勢の二頭の幼き竜の前に現れたかつての敵。だが、今は共に脅威を取り払う仲間。未来を守るため、四人の魔導士が二人の妖精に力を貸す!!
後書き
いかがだったでしょうか。
本当はカミューニがウェンディを助けるのは、シリルがルーシィ救出にいった時の案だったのです。だってシリルがローグと交戦してれば、ナツがアトラスフレイムを戦うことになるから、他人の相手を奪って一人余るということがなくなり、誰もウェンディの元に援護にいけないもので・・・
でも他の魔女の罪は戦ってるのにカミューニだけ適当に過ごしてるのはあれだと思い、レオンたちがシリル援護、カミューニがウェンディの援護にしてみました。
というかラウルは戦力になるのかな?いや、なるわけがない←反語法
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