まずいジュース
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2部分:第二章
第二章
「そういうのじゃなくてよ」
「我儘ねえ、凛は」
「あんたが言うことが普通じゃないのよ」
「私は至って普通よ」
「何処がなのよ」
「まあとにかくよ」
その普通のことを言おうとしない皆美はこんなことを言ってきた。今度はだ。
「喉、渇いたわね」
「そうね。それは確かにね」
「何かないかしら」
その言葉は切実なものだった。
「自動販売機でもね」
「御店はないわよね」
「こんな道にあるお店って今時成り立たないでしょ」
「それもそうね」
凛もそのことには納得した。
「言われてみれば」
「だからここはね」
「歩くしかないのね」
「多分。そのうち何かあるわよ」
皆美の言葉はここでは楽観的なものだった。
「今は我慢してね」
「歩くしかないわね」
「そういうことね」
こんな話をしながらだった。二人は道を歩いていく。そうしてだった。
二人の横にだ。古ぼけた自動販売機があった。赤く塗装されたそこにあるのは。
「ペプシコーラに紅茶にポカリスエット」
「定番ね」
二人でその自動販売機にあるドリンクを見て話す。
「そういうのもいいけれど」
「折角の旅だしね」
そしてここでこうも話すのだった。
「ここは何か変わったもの飲みたいわよね」
「言うならばイロモノね」
「それがね」
「それでよ」
ここで凛は笑顔で言うのだった。
「ブログに書くのよ」
「そのジュースのことをね」
「ええ、それを書くわ」
そうした狙いもあった。そうしてである。
その自動販売機をよく見てみた。するとだ。
そこにはこんなジュースがあった。
「ええと、何これ」
「スーパー野菜ジュース?」
「名前は凄いわね」
まずその名前に注目するのだった。
「とりあえずそれ買ってみる?」
「そうよね。とりあえずはね」
「買ってそうしてね」
「飲んでみようか」
「ええ、そうしよう」
こう二人で話してだ。実際に二人はそのジュースを買ってみた。鮮やかと言うにはあまりにもはばかれるものがある、青と紫が入った何とも言えない色の紫の缶に書かれている野菜の種類は。
「ゴーヤに苺にトマトに大蒜に」
「セロリに大根?それにホウレン草?」
「何から何まで入れたっていうか」
「そんな感じよね」
そうした様々な野菜が書かれていた。そしてだ。
二人はそのジュースの缶を開けて飲んでみる。その味は。
「うわ・・・・・・」
「これはまたかなり」
「まずっ」
「最悪」
二人は飲んだその瞬間に顔を顰めさせて言った。
「こんなまずいジュースないわよね」
「ええと、苦いっていうか後味悪いっていうか」
「漢方薬っていうか」
「そこに生ゴミ入れたみたいな」
「そんな味よね」
「匂いもえげつないし」
まさにそうしたものだというのである。
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