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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第八章 反転
  第12話 明かされる真実



そこは、先ほどと同じような『白』が永遠と続く″部屋″だった。

いや、″部屋″というよりは″空間″という方が正しいのかもしれない。そんな無機質な″空間″で、神代は一人座っていた。

神代「さ〜て、どっから話そうかなぁ」

座りながらもどこか楽しそうに髪をいじりながら鼻歌を歌っている。

対して上条は頭が痛かった。何かにぶつかったとか、殴られたとかそう意味ではなく、色々考えた末に頭が痛くなってしまったのだ。

上条「……何で君みたいな女の子がこんな所……しかも、幻想殺しって……訳分かんねぇよ」

頭を抱えながらその場にしゃがみ込む。どうやら本当に困っているようだ。

神代「………じゃあ、少し私の昔話に抜きあってくれるかい?」

上条「………昔話?」

少し疑問に思いながらも上条は顔を上げた。

神代は笑顔を崩さぬまま、ゆっくりと語り出した。








それは、今から70年ほど前に遡る。

ーーーー
ーーー
ーー


西暦1951年9月30日


神代柑果は日本のとある村に産まれた。

家は貧しかったが、彼女はその村ですくすく育ち、村の人気者になった。





そこから八年経ったある日、柑果は母親と一緒に街へ出かけた。普段は村でも食料品は買えるのだが、どうしても家具などは街へ行かないとないのだ。

久々の街は村では見かけない建物や服装に溢れていて、柑果は興奮した。




神代「そこで私は一人の男と出会ったのさ。その時初めて魔術に触れたのさ」

上条「そんな昔から魔術はあったのか……」

神代「そうは言ってもそれは昔のやり方。今と昔では魔術の式や呪文が根本的に違うけどね」

上条「………へ?」

神代「まあ理解しなくていいよ。話が逸れたけど、その時私は魔術に触れた。ただ″それだけ″だった」




その男は最初、魔術を知らない子供にちょっとした手品感覚で披露しただけだった。

手から小さい炎を出したり、自分を浮かせたりといった、安全でごく簡単な魔術だった。

柑果は「すごーい!」と興奮し、母親も声には出していないものの驚いていた。

「私にもできるかな?」と柑果が問うと、男は「勉強したら出来るようになるよ」と言った。

その言葉に柑果はますます魔術を知りたくなった。そして徐々に心の底から溢れてくる好奇心が彼女を支配し始めた。

その日は、柑果はその男と握手をして、手を振って別れた。





神代「でも……私は握手をした時、変な感覚に襲われた」

凜祢「変な、感覚……?」

神代「そう。最初は分からなかったけど、後から帰って″それ″に気づいた」





その日の夜。父と母と柑果の三人で寝る準備をしている時だった。

「うーん」と柑果が唸っているのを父が心配そうに見ていた。

「どうしたんだ?」と声を掛けると「なんか、こう……分かりそうな……」と意味が分からないことを言っていた。

知り合いの人に難しいナゾナゾでも出されたのか、と最初は思っていたが、数分後それは間違いだったと明確に理解した。




神代「その時、私は浮いたんだよ」

上条「浮いた!?」

凜祢「どうして……」

上条「………まさか」

神代「そのまさかだよ。私″魔術を扱う男の人″と握手しただけで魔術が使えるようになっていたの」

凜祢「でも、どうして使えたの?」

神代「分からない。強いて言えば才能……だろうね」




両親はもちろん、柑果自身もこの現象に最初は理解出来なかった。

その日はすぐに寝て、早朝にもう一度同じことをしてみた。すると、昨日よりも高く飛べるようになり、身体も自由自在にコントロール出来るようになっていた。

他にも手から炎も出せたが、まだそれだけだった。その間にも自分の頭の中で勝手によく分からない魔法式が形成されていった。

ただ、柑果は魔術の「ま」の字も知らない素人なのでこれが何を示してるのか分からなかったし、今は使おうと思わなかった。

でも、だからこそ。



それを知りたかった。




だから母親に頼んでもう一度街に向かった。

そこで、偶然にも昨日の男に遭遇した。




神代「そこからは流れるように魔術専門の学校に行かされたよ。教育費も無料。あの時八歳だった私は飛び級で勉強してたよ。周りは十五歳以上しかいなかったからね」

凜祢「そんなことが……」

上条「じゃあ幻想殺しは……」

神代「魔術にも学校の科目と同じように人それぞれ得意不得意があるんだけど……私はどれも得意で色んな魔術を学んだんだ。それで色んな法則を学んで、時には見つけて……そしてついに誰も発見できないような共通点を見つけて、それを壊す魔術を作った……それが今の『幻想殺し』ってわけ」

上条「……『幻想殺し』のことは分かったけど、それがどうして神代がここにいることと繋がるんだ?」

神代「うーん……話せない、というよりは時間が無いな」

上条「……え?どういうことだよ?」

凜祢「……そろそろ切れるんだね?」

神代「あぁ。夜刀神十香が色んな精霊の力を使ったろ?そこから溢れでた魔力でお前と夜刀神十香をここに連れ込んだんだ」

凜祢「だからここは当麻と十香ちゃんの意識の間ってわけ」

上条「え?でも十香は……」

神代「この先さ」

柑果が右手を少し上げて親指と中指でパチンと音を鳴らす。すると、瞬きをした瞬間にまた無機質なドアが現れた。

上条が恐る恐るドアを開けると、そこはまた真っ黒な空間だった。さっきとは正反対の……でもそこに人がいることはすぐにわかった。

服装は攫われた時のメイド姿のままだったが今はそんなことは気にするほど余裕はなかった。

そこにいる人ーー十香は三角座りをしながら俯いていた。

神代「五分で終わらせろ。それで夜刀神十香が元に戻るかどうか大きく変わる」

そう何の説明も無しに一方的に言い終えると、バタンとドアを閉めた。

無茶だ……と少し思ったが目の前で女の子が悲しんでいるんだ。

ここで助けなければ男では無い。

上条「十香……」

ゆっくり近づきながら話しかける。

すると、十香はそれに反応したのか、身身体をピクンと震わせた。そしてそのままの姿勢でゆっくり話し始めた。

十香「……私のせいだ」

上条「……」

十香「……私が、弱かったから……涙子も、当麻も……傷つけてしまった。そして、シドーは………私が殺した……っ!!」

押し殺すような声で言葉を発する。泣いているようだ。

それでも上条は前へ歩むのを止めずに十香の近くまで行く。そのまましゃがみこんで十香に話しかける。

上条「……でも、俺たちは今の十香の方が心配だ」

十香「力がいる……もう誰にも負けないような……誰も傷つけないような力が!!」

上条「それで自分の心を閉ざすのか?それじゃあ意味無いだろ!助けたかった十香はそんな奴じゃないって皆んな思ってしまうだろ!!」

十香「じゃあどうすればいいのだ!!?シドーを殺して……私はどうしたら……っ!」

上条「士道は死んでない!!」

十香「…………え?」

そこでようやく十香が顔を上げてこちらを見た。顔は泣きじゃくったのか、涙の跡がすぐ分かった。

上条「士道は生きてる……だから目を覚ませ!」

十香「でも、それでも……私は取り返しのつかないことを……」

上条「じゃあ皆んなに謝ればいい!佐天さんも士道も俺も!皆んなも許してくれる!!絶対だ!!」

十香「……本当なのか?」

上条「あぁ!勿論だ!だからーー」

神代『時間切れだ』

と、上条が何かを言おうとした時アナウンスの放送のようにこの部屋に柑果の声が聞こえた。

刹那。

視界が歪み、後ろから引っ張られるような感覚に襲われる。

上条「(な、何だ!?)」

と上条が思うも一瞬の内に意識が飛んでいった。

だが、意識が飛ぶ直前に、またも柑果の声が聞こえた気がした。

神代『あ、少し身体を借りるよ』

その言葉の意味を考える暇もくれずに上条の意識はどこかへ消え去った。





 
 

 
後書き
柑果さんの口調がブレブレすぎる……

2/21追記。

十香のセリフを一部修正しました。 
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