とある地下の暗密組織(フォートレス)
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第1話
ep.004 『赤く染まる幼い少女編 2』
前書き
少し遅くなってしまいました。
すいません。
場所代わり、第10学区
ただ荒れた空気が漂う。
「でも、どうしてこんな場所に特殊な能力開発施設を作ったんでしょうか?」
一通り聞いた資料の内容を思い出しながら、御臼が一言呟いた。
「恐らく、『【灯台下暗し】の様に近ければ近いほど良い。』じゃなくて、【灯台でも照らせないような場所に作った方が良い】って考えなんだろうな。」
と言ったのは、ルレシオ。
「あぁ~。 そういう事でしたか!」
と、勢い良く手を叩いて納得する。
そして、廃墟と見間違えそうになった廃れた工場にたどり着く。
「ここなんでしょうか?」
水無月 千尋が言う。
「行きゃ、分かるでしょ?」
その通りだ。
いくら結構見た目がホラーな工場と言っても、能力開発を目的とした施設なのだから、身構えなければならない。
「そうですね。 力を合わせていきましょうねっ!」
怖がっていては始まらないのだ。
入口。ガラスの無いガラス張り扉が、半端に開いてある。
「本当に不気味ですね。」
辺りをビクビクしながら見回している御臼が言う。
「幽霊や妖怪なんて作り話だ。」
と、ルレシオ。さらに続けて、
「もし本当に存在するなら、今までに未練や悔いを残して逝った人間が全部『それ』になっているのなら、霊感者を名乗る奴らの視界は『それ』で覆い尽くされて、なんにも見えないだろう。」
という個人的で偏見を盛っているような意見だが、御臼を落ち着かせようと彼なりにしているのが伝わり、少し御臼も落ち着いた。
もう結構奥の方から、
「何しているんですか? 早く捜索しますよっ!」
水無月 千尋が子供の様にはしゃぎながら振り返っている。
色々なものを持ち上げたりして調査をする。中には注射器や、錠剤が入っている容器もあった。それらが、ここでは能力に関係なくとも生物で研究していることを物語っている。
そして、結構奥の方。何かの製造が行われていたような跡のベルトコンベアと流れ作業に使われていたであろう機械の部屋にたどり着く。中には溶接に使うような先端をした機械も窺えた。
少し怖くなってくる。そんな時だ。
「お姉ちゃんたち・・・・・・・・・、」
こちらを身を隠しながら見てくる6,7歳ぐらいの見た目をした女の子が一人でいる。
「お姉ちゃんたち・・・・・・・・・、私を殺す・・・・・・・・悪いお兄ちゃんたちの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仲間?」
衝撃だった。まだ小さな子供だというのに自分を殺す何かといったことが、こんな小さな子供を殺すおそらく自分たちと同じくらいの年をした人間達がいる事が。
「そんな事ないよ、お姉ちゃんたちは大丈夫。 お姉ちゃんたちは、君を助けに来た正義の味方だよ。」
御臼がその少女に駆け寄り、肩を強くではないがしっかり掴み、まるで自分に言い聞かせるように言った。少なくとも、水無月とルレシオにはそう聞こえた。
「・・・・・・・・、れ。」
「え?」
いきなりだったのか、聞き取れない。
「それ、ホント?」
少女の真直ぐな目の中に少しだが希望が宿っているような気がした。
「うん。 絶対にここから出ようね!」
今度は強く、握りしめるように肩を抱いた。
水無月が端末を取り出す。取り出す前、バイブ音がしたのでメールだろう。
「叶世さんが、叶先輩の買収うまく行ったって。」
それを聞くと、さっきまで強く抱いていた手を、肩を安心しきり撫で下ろした。
「おい、031号っ!」
白衣、科学者の一人だ。
「っ!!」
ルレシオが能力を使う。それは砲丸投げの鉄球の様で、でも全く軽くて、触ろうとすると皮膚を全部持っていかれてしまいそうな痛みに襲われるもの。
それを白衣の顔面にめがけて撃ち放つ。飛沫の音とともに白衣の男が勢いよく吹き飛んだ。
まるで、人形の様に。
白衣は首辺りが赤く染まり、関節はおかしな方向に向いていた。首から上は、綺麗に切れて無くなっている。
真っ赤な血に混ざり、黒くドロドロでべっとりとしたモノも混ざっている。仕事柄3人はこういう光景に慣れている。
少女が見えないように目を手で隠し、視界を奪う。
「見ないで。」
耳元で小さく強く言うと同時、抱きかかえる。
「見つかった。 早く夢絶を呼んでくれ。」
聞いた瞬間だ。少女が怯えだす。
少女が言う。
「その・・、『むぜつ』。 わるいひと・・?」
返答に困る。
悪い人と言えば悪い人だし、いい人かと言われればあんまりそうでもない。でもここはいい人と言ってあげたい。後輩として。
「と、とてもいい人だよ。 会えばきっと優しくしてくれるよ。」
言っててつらい。あんな『めんどくさい人間』をこんなにも非の打ち所がないように言っているのが、とてもつらい。
同時刻、第7学区。
店舗大会の決勝戦。player1を操作しているのが夢絶。相対するは今のところ負けた事が無いという人物だ。
対して夢絶はギリギリ買ってこれたような成績である。
「ヨォ~、別に降参しちまっても良いんだぜ?」
ケラケラと笑いながらあいつが言ってくる。
「あぁ~。 まあ、もし俺がお前から一本取られたら降参するわ。」
此方もケラケラとした笑いながらに言う。
奴が一言。
「まあ、強がるのも分からァ」
【ready fight!】
システム音とともに両者のキャラクターが動き始める。
相手が使っているのは、長距離の攻撃に加え強力なカウンターを持つムキムキの男キャラ。
対して夢絶はとても小さな女の子キャラである。
「テメェ、準決勝までずっとメイジ(主人公の男キャラ)だったじゃねぇかっ!」
指摘に対し返答。
「まだ3回くらいしか使ってねぇからさすがに使いにくかったんだよな。」
ちなみに、準決勝を合わせて今まであった試合も3回である。
「おまっ、それって・・・・・・・・・・・・・・・・。」
両者のキャラが不動の駆け引きを繰り返しながら20カウント。
体力ゲージはお互い全部ある。
先に仕掛けたのは、夢絶だった。
小さな女の子が、ムキムキに向かってジャンプする。上空からのライダーキック→着地と同時にしゃがみパンチを三回→ドロップキック→相手を掴み上空に投げる→上めがけて蹴り上げ→自らもジャンプし空中連続攻撃→相手を掴んで上に乗り地面にたたき落とす→溜まったゲージで必殺技のコンボ。
その一度で相手の体力ゲージの7割を削り取った。
起き上がり、そのタイミングを待っていたかのようにしゃがんでのパンチ三回→そこからさっきのコンボをもう一度。
制限時間残り45秒。夢絶は一切の体力ゲージを減らさずに完全勝利。
そして優勝賞品の一か月間『スペースファイター SOUL』の無料使用権が渡された。
「よし。 早速このチケット使うが、誰か挑戦者はいねえのか?」
あからさまに見せつけている夢絶がそこにいるみなを煽る。
丁度いいと思い、話しかける。
「おい夢絶。」
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