夏桜 〜この世界に俺は存在している〜
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2話
前書き
STORIEというところでも、夏桜 〜この世界に俺は存在している〜 を書き始めました。
暁で書いている話とは少し違うので、そちらも是非、お読みください。
「あぁ、コーヒー美味い......」
俺は、入れたコーヒーを飲みながら、美優が聞いたら年寄り臭い、と言われそうな感じで一服していた。
まぁ、もう少ししたら忙しい時間帯になるから、例え美優がいたとしてもこれは止めないけどな。
そうだ。今のうちに俺の事を話しておこう。
先程も述べたが、俺は島宮蓮利......と言ってもそれは本名じゃない。
俺の本当の名前、それは俺にも、美優にも分からない。
それは何故か?
......簡単だ。
俺は、この榊島(さかきとう)の浜辺に流れ着いていた所を、島民に発見された。
そして、病院に連れて行かれ、診断された結果、俺には記憶が無かった。
記憶喪失......に似ているが、少し違う。
記憶喪失とは、脳の何処かの神経がやられて、単に思い出せないだけなのだが、俺の場合は違う。
フラクトライト、という言葉をご存知だろうか?
まぁ簡単に言ったら、人の魂......みたいな物だ。
それには、その人の情報が詰まっている。
まぁ、人間に備わっている記録装置と思ってくれれば良い。
それを分析した結果、俺の記憶は"100%存在していない"と言われたのだ。
実際、記憶喪失者なら、記憶のフラッシュバックが起こったりするのだが、俺は一切しない。
それが分かり、行くあても無い俺は、病院で途方にくれていた。
そもそも、入院代すら無いのだ。
俺は金銭的にも、精神的にも追い詰められ、いっその事、屋上から飛び降りてやろうか、と本気で考え始めた頃、彼女は訪れた。
そう、浅上美優だ。
彼女は、突然俺の病室に訪れ、ある条件を呑めば、俺を家に居候させてあげると言ってきた。
もちろん最初は余計なお世話だと思ったさ。
鬱陶しいにも程がある。
死んでしまおうとか思っていた俺にとって、最初の頃の彼女の態度は腹立たしかった。
だけど......何故だろうか?
彼女は毎日俺の病室を訪ねて来た。
そして、その度に俺は、段々と虚しくなっていった。
俺は何時までこの退屈な部屋にいなきゃいけないのか?
俺は何時まで愛想笑いを浮かべた奴らと話さなきゃいけないのか?
そんな気持ちのせいで、俺はある日、とうとう彼女の提案に頷いてしまった。
だけど、今では良かったと思ってる。
彼女のお陰で毎日が楽しくなったし、彼女のお陰で精神的にも金銭的にも助かった。
そして、今日は美優の誕生日。
「盛大に祝ってやらないとな。美優が居なかったら、今の俺は居ないんだから」
さぁ、今日は忙しくなるぞ。
俺は立ち上がり、今晩の食事を考え始めた。
D.C.
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