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天才小学生と真選組の方々。

作者:沖田
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帰還

事件解決の次の日の朝。
博士の家に泊まっている私たちの元に、和葉ちゃんと蘭ちゃん、園子ちゃんが来たらしい。子供達の声が聞こえる。
「あ!蘭お姉さんだー!」「おはようございますー!」
私は総悟から借りていたアイマスクを首まで下げて、蘭ちゃんたちの方に顔を向ける。
「おい和葉」平次君が露骨に嫌そうな顔をして言う。「なんでこっち来とるん?お前昨日は『蘭ちゃん達と竹下通り行くー』とか言ってはったやないか。急にどないしたん?」
「それはこっちの勝手ですー」和葉ちゃんが平次君に反論する。そして私の方を見て言う。「竹下通り行くゆうたのは嘘やないで。でもその目的があんねん。それは恋奈さんや!」
「…はぁ?」
文字通りそう思い、私はソファから体を起こし、あくびをして話を聞いてみる。
「恋奈さんはモデル並みにかわいいやろ?せやから、そんな地味な軍服やのうて、もっと可愛い服着させたらもっと美人が引き立つ思てな。つまりは、恋奈さんを竹下通りに連れてくっちゅうことや!」
「おお!」なぜか異様に反応する神楽ちゃん。「その作戦最高ネ!私も参加するアル!」
「いや待って待って待って待って」私はソファから立ち上がり二人を止める。「神楽ちゃんも和葉ちゃんも気持ちは嬉しいけどね、うん。私はこのままでいいの。二人は私のことかわいいかわいいって言うけど、そこまで可愛くないと思うし、それにかわいい服を私が着たって可愛くないと思うし、かわいい服って大抵動きにくいし、そういうのに私は慣れてないし…」
「恋奈さん、この世界の服をなめちゃいけませんよ?」蘭ちゃんが私の顔を覗き込んで言う。「結構進歩してて、可愛くも動きやすい服っていう服もありますから。」
「いいえ蘭ちゃん」私は笑って言う。「私はなめてるのは」
「「土方さんだけよ。/でさぁ。」」
総悟と声がハモり、思わず総悟と顔を見合わせハイタッチする。
「よーしお前ら!俺も一緒に竹下通りとかいうところに行ってやる!そしてそこがお前らの死ぬ場所だー!剣磨いとくからな!」
とこれもいつものセリフを口にする土方さんをスルーして私は立ち上がり、「暇だったし行ってみるか!」と言い伸びをする。
なぜかやったー!と喜ぶ蘭ちゃんたち。
なんで?とか思いながら他のみんなも誘ってみる。
「新八くーん、旦那ー、一緒に行きませんかー?めっちゃ暇そうですし。」
二人とも二つ返事で返してくれる。近藤さんとザキは行く気のようだ。総悟と神楽ちゃんは既に出かける準備をしているから、行くつもりなんだろう。
よし、これで全員集合!
「っておい!」つい声に出してしまったらしく、土方さんが突っ込む。「俺をスルーすんな!」
「よーし、みんな揃ったし、行くかー」私はそんな土方さんをスルーする。「誰か忘れてる気がするけど、いっか。うん。気のせいだ。」
「いや気のせいなんかじゃ…」言いかけて土方さんはため息をつく。「なんかもうどうでもよくなったわ。」
そう言い、土方さんも準備を始め、結局全員で行くことになった。

「ここか、竹下通りって。」
と私はつぶやき周りを見渡した。
子供達が近くにあるクレープ屋さんを目ざとく見つけ、「欲しい欲しい!」とはかせにねだっている。
はかせは「これこれ」とかも言いつつ、財布を出して買ってあげようとしている。
微笑ましいなぁ、と思いながら眺めていると…
「いやはや、この竹下通りとか言うところの食べ物もおいしいなぁ。」
「そうですね、源外さん!」
聞き慣れた声がした。
みんな一斉に顔をそちらに向ける。子供達や蘭ちゃんたちはそのままだ。
するとそこには源外のじーさん、それと真選組の隊士たちがいた。
「って!」旦那が源外のじーさんに駆け寄る。「じーさんじゃねーか!どうやってこっちきたんだよ!」
その声で隊士たちがこちらを向く。
「局長!副長!隊長!副隊長!」大きな声を出してこちらに駆け寄ってくるが、全員、その口元にはチョコやらクリームやらあんこが付いている。「心配してたんですよ!大丈夫でしたか!?」
「その割にはみんな口元にお弁当くっつけてるけどね。うん。心配してたのかな。うん。そしてさっきの源外のじーさんとの会話聞いちゃったよ。まるっきり心配してないよね。逆に楽しんでるよね。」
と次々突っ込む私と、源外のじーさんに詰め寄る旦那を見て、子供達と蘭ちゃんたちは頭の上に???マークを浮かべてこちらを見ている。
「えっと…」歩美ちゃんが戸惑いながら聞く。「おじさんたち、誰?」
源外のじーさんと隊士たちがこの子誰?と言いたげな顔で私たちを見る。
「えーっと、ね。」私は何から話そうかと手をこすり合わせる。「歩美ちゃん、こっちのおじさんは平賀源外って言って、私たちの世界のからくり技師。で、こっちの黒い服着てる人たちが真選組隊士。どっちも私たちの味方だから、安心して。」
そして源外のじーさんの方に向き直って言う。「えっとね、話せば長くなるんだけど、ま、こっちの世界でできた友達ってとこかな。」
「そーかそーか」じーさんはクレープを手に持ったまま言った。「ま、喜べ、銀の字。帰れるぞ、この世界から。」
「おー、まじか!やった!さすがだぜ、じーさん!」
帰れる!?やった!
と思った時。
「えー、恋奈ちゃんたち帰ってしまうのん?せっかく会えたのに…」
和葉ちゃんがしょんぼりする。
あ、と私は我に返った。
帰るってことは、つまり…
コナン君とも、哀ちゃんとも、歩美ちゃんとも、元太君とも、光彦君とも、蘭ちゃんとも、小五郎さんとも、和葉ちゃんとも、平次君とも、刑事さんたちとも別れなくちゃならない。
「大丈夫やって和葉」平次君が和葉ちゃんをなだめる。「離れたとしても、永遠に友達やから。」
「せやけど…せっかく会えたっちゅうんに…」
「大丈夫だって!」園子ちゃんもなだめる。「友達やめるわけじゃないし!」
私は和葉ちゃんの元に寄って行き、ハグをする。「大丈夫よ、和葉ちゃん。私たち、離れても友達だし。」
和葉ちゃんは頷く。
「おーい」旦那がだるそうに言う。「感動の別れは終わったかー?」
私は旦那を一睨みして、和葉ちゃんをもう一回ハグすると、旦那たちの元に駆け寄った。
「よーし」じーさんが何か機械みたいなものを取り出し、言う。「これで全員だな?」
みんなは頷く。
じーさんが何かのスイッチを押す。
私たちはみんなに別れを告げる間もなく光に包まれた。 
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