ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版
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一の刻・少年期編
第二話「出会った友達と再会の幼馴染」
サンタローズへと続く街道を駆けているリュカに、草むらの中から魔物が道を塞ぐかのように飛び出して来た。
『ピキーーーッ!!』
「わっ!な、何だ、スライムか」
リュカの目の前には三匹のスライムが並んでいて、その内の一匹がリュカを睨みつけたかと思うと行き成り飛びかかって来る。
「何だこの位、負けないぞ」
リュカは背中にしょっていたひのきの棒を掴むと一気にスライムに向けて振り下ろした。
『ピギャーーッ!!』
リュカの一撃は"会心の一撃"と言うべき威力でスライムは地面に落ちると弾け飛び、その場所には赤い宝石が残されていた。
魔王の邪悪な波動を受けたモンスター達はその影響を受けて魔力を結晶化させた宝石をその身に宿している。
倒されて命が尽きても宝石は消える事無くその場に残り、その宝石の価値はモンスターの強さに比例してその純度を増し、強力なモンスターであればあるほどより高額で取引される。
「う~~ん、これなら2ゴールドって所かな」
宝石を日の光に翳しながら鑑定していると他のスライムを退治したパパスがやって来てリュカの頭を撫でる。
「中々見事な一撃だったぞリュカ、これは将来が楽しみだ」
「えへへ、そうかな?はい、父さん」
少し照れながらもリュカは手に入れた宝石をパパスに渡そうとするが彼はそれに手をかざして止めた。
「それはお前がスライムを倒して手に入れた物だ。お前が持っていなさい」
「いいの?」
「ああ、無駄遣いはするんじゃないぞ。それに……」
「それに?」
パパスは厳しさと優しさの入り混じった目でリュカを見つめ、頭を撫でながら言葉を続ける。
「その宝石はお前が奪った命である事は忘れてはならん。たとえモンスターの命であろうともだ」
「……うん、モンスターだって生きてるんだもんね」
「分かっていればいいんだ」
宝石を袋にしまい込み、リュカとパパスは再び歩き出す。
それからも何度かモンスターの襲撃を受けるが左程大した相手でも無く、リュカも少し怪我をしたりしたがパパスのホイミによって瞬く間に治療される。
それから暫く歩いた所で遅めの昼食を取っているリュカの耳に何やらか細い声が聞こえて来た。
何処と無く、泣いている様な助けを求めている様なそんな声だ。
「どうしたリュカ?」
「誰かが助けてって言っているみたい」
「助けを?お、おいっ、リュカ!」
そう言うとリュカはパパスが止める間も無く走り出した。
「ピキィ~~、ピキィ~~」
『ピキャーーー!ピキャーーー!』
リュカが駆け付けた場所では一匹の小さなスライムが数匹のスライムに取り囲まれて攻撃を受けていた。
「…ひどい、仲間のはずなのに大勢でいじめるなんて。こらーーっ、やめろーーー!」
『ピキャアッ!?』
「ピ、ピキュゥ~~?」
突如、乱入して来たリュカの攻撃を受けたスライム達は一瞬たじろいだが、すぐに立ち直ると其々リュカに襲い掛かって行く。
傷付けられていた小さなスライムはそんなリュカを不思議そうに見ていた。
「このぉ、このぉ!負けるもんか!」
攻撃を続けるリュカだが、スライムとはいえ多数が相手なので徐々に追い詰められていた。
『ピキャアーーーーッ!』
「うわっ!」
背中に不意打ちの体当たりを受けたリュカは体勢を崩して倒れ、残ったスライム達が一斉に襲いかかろうとした。
(うむ、此処で限界だな)
リュカの資質を見極めようと、あえて木陰で見守っていたパパスが飛び出そうとすると"それ"は起こった。
「ピキイィィーーーーッ!」
何と、驚いた事に先程まで震えていた傷だらけのスライムがリュカを守ろうと飛び出して来たのだ。
「な、何だとっ!?」
その行動にパパスは驚き、他のスライム達も虚を衝かれたらしく、その隙にリュカも起き上がって体勢を立て直していた。
「ありがとう、助けてくれたんだね」
「ピイ、ピイ」
「ようし、コイツらなんか僕達でやっつけちゃおう!」
「ピイーーーッ!」
そしてリュカとスライムは敵スライム達を迎え撃ち、パパスもその戦い振りを見て感心する。
スライムは先程までの怯えを微塵も見せずに素早い動きで敵スライム達を翻弄し、その隙にリュカが次々と倒して行くのは即席コンビとは思えない程見事なチームプレイである。
「とおりゃぁーーーっ!」
「ピキイーーーーッ!」
そして最後の一匹をひのきの棒の一撃と体当たりで倒すのであった。
「はあ、はあ。や、やったぞ~~」
「ピキュゥ~~」
敵スライム達を全滅させた二人は流石に疲れたらしく、そのまま地面にへたり込んだ。
「見事だったぞ、お前達」
「あっ!と、父さん」
「どれ、傷を見せてみろ。《ホイミ》」
パパスの唱えた回復呪文《ホイミ》によってリュカの傷口は瞬く間に塞がっていく。
「あの、父さん。この子も…」
「分かっている、リュカの相棒も治してやらねばな。《ホイミ》」
そう言うとパパスはリュカの傍らでへとへとになっていたスライムにもホイミをかけてやり、傷の癒えたスライムはリュカに縋り付いて甘えだした。
「もう大丈夫だよ」
「ピイ、ピイ~~」
「あはは。無事でよかったね」
そんな光景を見つめているパパスの口元には自然に笑みが浮かんでいた。
(やはりマーサの子供だな。同じ力を受け継いでいたか)
「さあ、少しばかり遅れてしまった。先を急ぐぞ」
「父さん、この子も連れていっていい?」
「ああ、良いとも。リュカを守ろうと一緒に戦ってくれたのだからな、悪いモンスターでは無いだろう」
「わーーい、やったぁーー!」
「ピイ、ピイーーー!」
リュカはスライムを抱き抱えて歩き出し、スライムはリュカの腕から抜け出すと頭の上に攀じ登り、嬉しそうに声を上げる。
「えっと、名前を付けてあげなきゃね。どんな名前がいいかな?え~と、え~と」
「…トン」
「そうだ!絵本で読んだ事のある剣士の名前でピエールがいいな。今日からキミはピエールだよ」
「ピイ、ピイ、ピイーーー♪」
「よろしくね、ピエール。ところで父さん、何か言った?」
「い、いや。別に…何も」
「ん~?」
「ピィ~~」
何故か残念そうに肩を落とすパパスにリュカは小首を傾げ、ピエールは不思議な安堵感を感じていた。
そして空が茜色に染まり始めた夕暮れ時、二人と一匹は懐かしのサンタローズへと帰って来た。
「やっと帰って来たんだね父さん!」
「そうだな、リュカ」
村の入り口には見張りの村人が立っていて、二人を見つけると警戒するがそれがパパスだと気付くと満面の笑みで二人を迎える。
「パパスさん、パパスさんじゃないですか!帰って来たんですね!!」
「おお、エーじゃないか、長い間留守にしたな。これから暫くはこの村に腰を落ち着けるつもりだ」
「それは皆が喜びますよ。……それはそうと、その子の肩に乗ってるのは…スライム?」
門番のエーはリュカの肩の上のピエールを見るや否や、槍を向けようとするがパパスは笑みを浮かべながらそれを手で制す。
「心配は要らぬぞ。このスライムには邪気は無い」
「ピエールは僕の友達なんだ。悪い事はしないから怖がらないで」
「ピッピィーー」
「君は…リュカくんか、大きくなったな。パパスさんやリュカくんが大丈夫と言うのなら心配はいらないな。じゃあパパスさんが帰って来た事を皆に報告しなきゃ」
そう言うとエーは村へと駆け出し、喜び勇んで村中にパパスが帰って来た事を叫んで回った。
「おぉーーーいっ!パパスさん達が帰って来たぞぉーーーーっ!」
「お帰り、パパスさん」
「やあ、良く帰って来たな!今夜は一杯飲みながら旅の話を聞かせてくれ」
「わあーーいっ!パパスさんが帰って来たぁーーー♪」
村人達は皆笑顔で二人を迎え、パパスも笑いながらそれに応える。
そして家が見えて来ると玄関の前に少し小太りで、召使いのサンチョが待っており、人当たりの良い笑顔で二人を迎えてくれた。
「坊っちゃまーーーーーっ!坊っちゃん、坊っちゃんではないですか!」
「ただいま、サンチョ」
サンチョはリュカに駆け寄ると抱き抱えながらクルクルと回る。
「おお、坊ちゃんは大きくなられましたな」
「うん。僕、大きくなったでしょ」
「留守の間ご苦労だったな、サンチョ」
「パパス様、このサンチョ、パパス様とリュカ様のお帰りを一日千秋の想いでお待ちしていました」
「うむ、心配をかけて悪かったな」
「さあ、家の中へ」
そしてパパスとリュカは懐かしの我が家へと入ると其処には金色の髪を両側で纏めた一人の女の子が待っていた。
「お帰りなさい、おじ様」
「君は確か…」
「リュカ!私の事、覚えてる?」
「うん、覚えているよ」
リュカがそう応えると女の子の顔には満面の笑みが浮かんだ。
「ただいま、ビアンカ!」
=冒険の書に記録します=
《次回予告》
幼馴染の女の子、ビアンカ。
久しぶりの再会なのにやっぱり少し乱暴だった。
病気だという彼女のお父さんの薬を作る為に薬師のおじさんをさがして洞窟の中を探検だ!
そこで出会ったのは……
第三話「洞窟の中の小さな冒険」
「大丈夫、いじめたりしないよ」
後書き
(`・ω・)書き換え版、二話目でした。
旧版とは違い、ピエールは倒されてから仲間になるのでは無く、最初から魔王の邪気に犯されていないと言う設定に変えました。
資質は在ったとしても今だ魔物使いの力に目覚めていない子供の頃だからこっちの方がしっくり来る感じがするのですよ。
( ;ω;)それと、モンスターとの戦闘くらい今までの旅の間にもあったんじゃないか?というツッコミは無しの方向でお願いします。
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