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戦隊ヒーロー(-1色)

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最初からクライマックス!

赤い戦闘服の男が仲間4人を振り返る。
「やっとここまで来れたな」

赤:「3年かかった・・・」
青:「何が?」
赤:「この、奴らの秘密基地に、たどり着くまでの時間だよ。」
緑:「結構、かかったよな。」
赤:「あと平均で週に2体くらい、敵の怪人というか、怪獣というか何かそんなやつを倒してただろ。」
青:「そういや呼び名も決めてなかったな。怪人? 怪獣? 超獣? とりあえず奴らのボスに会うまでに決めておいた方がいいんじゃないか?」
赤:「うわっ、ボスって言い方、ださくない?」
青:「だって総帥なのか首領なのか、それとも総統なのかも分かんない場合、何て肩書で呼べばいいんだよ、もちろん本名だってわかんないし。」
緑:「そういえば・・・、俺たちがずっと戦ってきたこの組織は何て名前なの?」
赤:「お前・・・、そんな初歩的なことも知らずに、ここまで3年戦ってたのか? 何の疑問も持たずに? お前、動物か!」
緑:「別に。名前なんてどうでもいいじゃん。俺らはただ敵を倒すだけなんだから。」
赤:「そういうバーサーカー的な考え方だったの? 地球の平和は?」
緑:「ないよ。俺らはただの戦闘兵器じゃん。 知らぬ間に拉致られて、強制的に人体改造されてるし。」
青:「ドライだな、お前! ・・・まあ、俺も敵の組織名は知らなかったけど。」
赤:「お前もかよ!」

緑:「そういうお前は知ってんのか?」
赤:「もちろん知ってるよ。リーダーとして、当然だろ。」
青:「ちょっと待て! お前、リーダーじゃないだろ?」
赤:「リーダーだろ、普通、赤がリーダーって世間の掟で決まってるだろうが。」
緑:「いや。違う。お前はリーダーの器じゃない。」
青:「俺もそう思う。」
赤:「はぁ? お前ら、ずっとそう思ってたわけ?」
青:「ずっとも何も、お前のことをリーダーだなんて、正直、これまで一度も考えたことがなかった。」
緑:「俺はずっとバイト気分だったから、正直なところ、リーダーなんていらないと思ってたし。『バイトリーダー』って何かダサくない?」
赤:「お前、よくバイト気分で戦闘兵器をやってられたな、怖いわ! ってか、バイトリーダーなんて決めてねーし。」
緑:「おい。そこの太ってる奴、お前はどう思う?」
黄:「やっぱ赤じゃないかなと。」
赤:「ほら見ろ。俺に2票目が入ったぞ。」
黄:「やっぱごめん。青に変えていい?」
赤:「何だよ、何で一瞬で考えが変わったんだよ。」
黄:「何かドヤ顔がむかついたんで。」
青:「ご苦労、元リーダー。では俺が新というか暫定リーダーということで。」
赤:「ちょっと待て! 勝手に勝利者宣言するな。あと一人いるだろ。」

緑:「でもさ、『黄緑』って一度も来なかったじゃん、本当にこの世に存在してるの?」
黄:「普通、5人目っていうと女性ですよね。シリーズによっては女性2人の場合もありますけど。」
青:「もうイケメン枠はいらないしな。」
赤:「お前、常に自信満々だな!」

青:「しかし4人だと決めポーズがどうしても物足りなくて困ったもんだ。まあ、それもいい思い出だな。」
赤:「何で過去形で話をしてるんだよ、こっからがクライマックスなんだぞ。」
青:「俺は最初の戦いからクライマックス気分だったから。」
赤:「わかんないって! お前、結構そういうところがあるよな。」
緑:「でも女性人気、高いよね。」
青:「基本、ヒモだからな。」
黄:「ヒモで食っていけるもんなんですか?」
青:「女性の選び方さえ、間違えなければな。」
緑:「今はどんな子のヒモなの?」
青:「16歳のデリヘル嬢だ。」
赤:「お前、クズだな。そんな奴に倒された怪獣?的な奴らもそれじゃ、うかばれないわ。」
青:「俺だって別に・・・。こんな変身なんかをしたかったわけじゃない。」
緑:「まあねぇ。ただただDNAが適応しちゃったとかで、無理やり組織に呼ばれたわけじゃん。断ってたら多分、殺されてたよね、あの雰囲気だと。」
青:「だから早く気楽なヒモ生活に戻りたいんだ。できれば毎日、昼過ぎまで寝ていたい。」
赤:「お前、顔だけはいいんだけど、中身は本当にクズだな。」
黄:「で、結局、この敵組織の名前と怪人?的な奴らの呼び方はどうなるの?」
赤:「ナイス指摘! やっと話が本題に戻って来たな。」
青:「話を率先してずらしていった、自称(笑)リーダーに言われたくない。」
赤:「何だと、ヒモ野郎。」
青:「おい! 俺のことは馬鹿にしてもいいが、ヒモという職業自体を馬鹿にすると許さんぞ!」
緑:「何でそこに怒るかな? ポイントずれてるよ。」

赤:「敵の組織名は『悪事制作委員会』だ。」
緑:「最近のアニメってオープニングテーマの最後に、そんなテロップ出ない?」
黄:「ほとんど制作委員会方式で作られることが多いからね。リスク分散のためにも。」
緑:「やっぱアニメに詳しいんだね。そんな気はしてたけど。」
黄:「そのあたりのことは今度ゆっくり説明するから。この戦いが終わったら、ファミレスにでも行こう。」
緑:「いいね。」
青:「その『組織』の戦闘員の呼び方は?」
赤:「シンプルに『組織』って略さずにちゃんと正式名称で呼べよ! せっかく発表したんだから。」
緑:「基本だけど怪人でよくない? 怪しいやつが多かったし。」
青:「でも人間型じゃない奴も、結構いたぞ。」
緑:「そうか、言われてみればロボットとかもいたよね。」
青:「しまった・・・。いたな、そんな奴も。」
黄:「あの、別に決めなくてもよくないですか? 今さら。」
青:「そうだな。3年間、必要なかったんだし。まあいいか。」
緑:「そうだね。さすがはリーダー。」
赤:「おい! 緑、お前! いつ、青の軍門にくだったんだ?」
緑:「いつでもいいじゃん、そんなこと。そういう小さいところばっかり気にするから、リーダーの器じゃないって言われるんだよ。」
青:「まあまあ。後で俺の女から金をもらって、みんなで飲みに行こう。俺がおごるから。」
黄:「ご馳走様です!」
赤:「ちょっと待て! おごってくれんのはこいつの女だからな。こいつ自体は全く何もしてないぞ。」
緑:「うざっ。そういうところばっかり見るの、悪い癖だよ。」
赤:「俺、何か間違ったことを言ってるか? 絶対に俺の方が正しい自信あるぞ。」
緑:「そういうことじゃないんだって。結果的に青は優しさを見せてくれたわけじゃん!」
赤:「・・・クズなりの優しさだけどな。」

青:「じゃあお前はこれまで飲みに連れていってくれたか? リーダー気取りだったときに。」
赤:「・・・」
緑:「なかったよね。というか飲みに俺らが誘っても来なかったよね。」
赤:「・・・。」
黄:「来れない理由が何かあったんですか? お酒が飲めないとか?」
赤:「飲める。弱いけど飲める。馬鹿にするなよ。」
緑:「じゃあ好きなお酒は?」
赤:「・・・カルーアミルク。」
青:「お前、それって女子中学生が居酒屋で頼む酒じゃん。」
黄:「女子中学生は、普通、居酒屋で飲まないでしょうに!」
青:「俺の付き合ってきた女達は、かなり早い段階から酒やらドラッグ何かを嗜んでいたけどな。」
緑:「リーダーのところが異常なんだって! あはは。」
黄:「そもそも、女子中学生もストライクゾーンなんですか?」
青:「モロど真ん中だ。」
赤:「ほら! こいつ、近いうちに絶対に捕まるからさ、リーダー解任しとこうぜ。捕まってからリーダー変更だと、何か外聞が悪いだろ!」
緑:「それとこれは話が違くないですか? カルーアさん。」
赤:「その名前で呼ぶな! 例えるなら、巡査長が酔っ払い運転で捕まるのと、警察署長が酔っ払い運転で捕まるのは世間に与える衝撃が違うだろ? リーダーが捕まるのは俺ら全体に悪影響があるって。」
黄:「それは確かに。」
赤:「正義を守るべきヒーローがよりにもよって未成年にだぞ。」
緑:「そこは組織が揉み消してくれるよ、きっと。」
青:「ああ。そうだな。そこは期待しよう。」
赤:「すんなよ! 絶対に期待すんなよ、っていうか未成年に手を出すな。」

青:「お前には愛という概念はないのか?」
赤:「あるよ。人並みにあるよ。」
緑:「人並みって表現おかしくない? 俺の愛の大きさを知ってるわけ?」
赤:「知るか! そろそろ行くぞ。」
青:「だから何でお前が仕切るんだ? ミルクよ。」
赤:「もはや訳わかんなくなってるだろうが、それならカルーアの呼び名のほうがいいわ!」
緑:「じゃあリーダーからご発声を賜ります。」

青:「それでは・・・。みんな、3年間という長い間、つらい戦いによく耐えてくれた。」
赤:「急にいいムードにすんなって。」
黄:「茶化すのはやめましょうよ、カルーアミルクさん。」
赤:「お前まで言うか!」
青:「この3年間、一番の思い出というとやっぱり、・・・あれかな。」
赤:「どれなんだよ!」
緑:「わかった。あれでしょ!」
赤:「何で、お前がわかるんだよ!」
青:「やっぱあれだな、女に部屋をたたき出された20分後には、次の女の部屋に住み始めることができたという奇跡かな。」
赤:「そんなクズな出来事が、3年間で一番の思い出になるのか! みんなの戦いの記憶は?」
緑:「俺の思い出か・・・。ロト6で当たったんだけど、なぜかその数字をみんなが書いていて、配当が異常に低かったことかな。」
黄:「たまにありますよね。」
赤:「お前も戦いの記憶について語れよ! もういい。突入するぞ!」

謎の男:「ちょっと待った!」
4人:「誰?」
謎の男:「遅くなってスマン。俺が黄緑なんだ。」
緑:「女じゃないんだ! 見た目、ただのおっさんじゃん! でも、何で変身しないで素の状態なの?」
謎の男:「変身するためのベルトが支給されていないんだ。」
青:「じゃあ何しに来たんだ?」
謎の男:「今日あたりが最終決戦じゃないかと思ってな。ここを逃したら世間に顔を売ることができなくなると思って。」
緑:「うわぁ。超打算的!」
青:「とりあえずお前、帰れ。変身できないんじゃ危ないから。」
謎の男:「嫌だ。絶対に帰らんぞ。」
緑:「じゃあ力ずくで。元々、色がカブッてるから嫌だったんだよね。」
謎の男:「イタイイタイ! 腕が折れるって。」
黄:「本当に大ケガする前に、帰ったほうがいいですよ。この人たち、基本的に冗談が通じないし・・・。」
赤:「そもそも3年間、何をしてたんだ? 戦いにも参加せずに。」
謎の男:「バンドで世に出ようとしてたんだ。」
緑:「うわ・・・。予想通り。こいつもクズの一人だ。」
黄:「楽器は何を?」
謎の男:「サイドギターだ。」
黄:「リードギターじゃないんですね?」
青:「地味なほうのギタリスト。」
赤:「どんなジャンルを?」
謎の男:「パンクだ。」
緑:「この夏場に皮ジャンを着てる時点でそんな感じだけど。」
黄:「パンクと言ってもいろいろとジャンル分けがされていますが、どの系統でしょうか?」
謎の男:「馬鹿なことを言うな! パンクって言ったらピストルズだろ。」
黄:「一番シンプルなスリーコードのやつですか。」
謎の男:「その通り!」
緑:「そんで結局、バンドはどうなったの?」
謎の男:「昨日、解散してしまった。」
緑:「あんまり聞きたくないけど、解散理由は?」
謎の男:「ライブの打ち上げを居酒屋でやってたときに、売れない理由をお互いに押し付け合ったんだが、最後はボーカルが頼んだ揚げ出し豆腐をドラムが食べてしまったことが最後の一押しだった。」
緑:「うわっ。超どうでもいい理由。」

赤:「それでバンドに見切りをつけて急遽、こっちのヒーロー活動に参加しようとしたと。」
謎の男:「それは違う。誤解だ!」
赤:「何が?」
謎の男:「俺はバンド活動はあきらめていない。今日来たのは世間に顔を売るためとバンドメンバー募集のためだ。」
黄:「ここに来た理由はよくわかったんで、とりあえず帰ってください。」
謎の男:「変身できればいいんだな?」
赤:「は?」
謎の男:「変身できればいいんだな、と聞いている。」
青:「できるのか?」
謎の男:「いや。できない。一応、聞いてみただけだ。」
赤:「もうお前、本当に帰れよ!」 
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