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紅く染まった琥珀石

作者:薄花桜
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―序章―
  Prologue

地面へと叩き付いた雨粒の激しい音。
自然現象で出来た悲しい水の音色は森中に広がり、灰色の空を蠢く暴風は木々達を傷付ける。

そんな中、綺麗な髪色を持った小さい少女が瞳に涙を浮かべ、服に沢山飛び散った泥にも構いもせずに森の中を走って行く。
度々後ろを気にしながらも、走る足は留まる事を拒否している。


だが途中で少女は石につまずき、水溜りの中へ体が沈む。
ゆっくりと体を起こすと、先程から止まらない涙が地面に溜まった濁っている水溜りにぽつぽつと落ちた。
痛む程体へ降り注がれた雨粒。
風が少女の頬を切り赤い線が頬へ流れた。
過呼吸になるほど胸が苦しい。酸素が上手く吸えない。
そして地面の泥は少女の手を足を、自由を蝕み上手く体が動かせなかった。
雨も風も空気も大地も…彼女を責め立てているのだろうか。
酸素不足で意識が定まらず、現実と空想の区別が解らなくなる。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」


少女の悲痛な絶叫は雨と風の声に同化される。
混沌した少女はこれから何を望む。
そして昏倒した少女は、糸が切れた様に地面へ倒れた。

幼い手でしっかりと握られたチョーカーは所々泥で汚れている。
だが少女を慰めるかのように、ルビーは輝きを放っていた。 
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