戦国異伝
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第二百四十二話 淡路からその八
「風雅ともじゃ」
「縁がない」
「全く、ですな」
「そうしたことは」
「だからじゃ、当家に弓の達人がおってもじゃ」
それこそだ、那須与一の様にだ。
「あの者達が扇を出して来る筈もない」
「そういうことですな」
「その様な風雅はあの連中にはない」
「それも全く」
「だからじゃ、それは諦めるしかない」
信長もいささか残念そうに述べた。
「だからな」
「わかりました、では」
「それは諦めて」
「勝ちにかかりますか」
「既に采配は決まっておる」
屋島の地と海のことを聞いた、それならだった。
「弓矢とは別のものを使ってな」
「弓矢も使いますが」
「主はそれですな」
「そちらを使いますな」
「そうする、一気に攻めて一気に勝つ」
まさにというのだ。
「それで戦の流れを完全に掴む」
「我等がですな」
「完全にそれを掴み」
「そのまま滅ぼしていきますか」
「幾度戦おうとも」
「戦は流れじゃ」
信長は家臣達にこうも言った。
「流れを掴めばさらによい」
「武具や兵糧を揃え」
「数も揃えてですな」
「優れた将帥を用い地の利も把握する」
「そのうえで、ですな」
「戦の流れもですな」
「うむ、掴めばな」
それもだ、自分達のものとすればというのだ。
「幾ら戦っても勝てる」
「ですな、戦はです」
「そうした条件を全て揃え」
「そのうえで流れを掴む」
「そうしたものですね」
「そうじゃ、流れを掴むことじゃ」
戦のそれをというのだ。
「最初の戦でな、ではな」
「はい、それでは」
「一気に夜襲を仕掛け」
「そして流れを掴み」
「以後の戦いも勝ちましょう」
「是非共」
「うむ、その為にも勝つ」
屋島での戦もというのだ。
「そうするぞ」
「どうも伊賀では」
ここでこう言ったのは蒲生だった。
「勝ちはしましたが」
「あの者達を伊賀から追い出し勝ちはしたがな」
「それでもでした」
「流れは掴めなかった」
それには至らなかったというのだ。
「戦に勝ってもそれではな」
「完全に勝ったことにはなりませぬな」
「そうじゃ、だからじゃ」
それでというのだ。
「次の戦で流れを掴むぞ」
「そして以後も勝ち」
「奴等を滅ぼす」
まさにというのだ。
「そうするぞ」
「はい、流れを掴めば」
このことをだ、竹中も言う。
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