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真田十勇士

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巻ノ二十九 従か戦かその八

「そうなればじゃ」
「徳川家がですな」
「攻めて来る、話でまとまらねばな」
 このことは戦国の習いだ、話で収まらねば戦だ。このことはもう誰が言わないでもわかっていることである。
「だからじゃ、よいな」
「はい、それでは」
「既に用意を整えておるがじゃ」
「戦ですな」
「そうじゃ、これまで蓄えていた銭も使い」
 そして、と言う昌幸だった。
「兵も雇うぞ」
「我等の兵以外にも」
「浪人達をですな」
「雇いそうして」
「戦に加えますな」
「そうする、よいな」
 こう言うのだった、そしてだった。
 実際に真田家は蓄えていた銭を出して浪人達を雇おうとした、それで結構な数を雇ったのだがその数を見てだった。
 昌幸は難しい顔になってだ、信之と幸村に言った。
「あまりな」
「はい、兵がですな」
「あまり集まってはいませんな」
「銭はありますが」
「兵は」
「うむ、どうやら北条家や徳川家に行ったらしいな」
 この辺りにいる浪人達はというのだ。
「北条家は甲斐及び信濃から手を引いたが」
「関東のことがあるので」
「そちらに向かう為にですな」
「兵を雇っておるな、そして徳川家もな」
 敵である彼等もというのだ。
「我等と戦う為にじゃ」
「兵を雇っている」
「我等が雇う兵を」
「そうしているからこそ」
「我等のところにはですな」
「思ったより集まっておらぬな」
 こう言うのだった。
「そういうことじゃな」
「父上、今の兵の数ですが」
 ここでだ、幸村が昌幸に言った。
「最初から当家にいる二千五百にです」
「浪人達は千じゃな」
「合わせて三千五百です」
「せめてあと五百は欲しいがな」
「ではどうされますか」
「民を兵に使うことはない」
 昌幸はこれはないとした。
「別にな」
「では民達は」
「戦の場には出ぬが」
「その他のことで、ですか」
「働いてもらう」
「そうされますか」
「戦は戦の場だけでするものではないからな」
 ここでもこう言うのだった。
「だからな」
「戦以外のことで役に立ってもらいますか」
「そうするとしよう」
「では父上、兵はこのままで」
 信之も父に問うた。
「進めますな」
「そうする」
「では上田の城に兵を入れ」
「それぞれの砦にもじゃ」
「兵糧と武具の備えも確かめますな」
「無論じゃ」
 こちらも忘れていなかった。
「抜かりはない様にな」
「(畏まりました」
「では兵糧や武具も確かめておきます」
「そしてです」
「戦いまする」
「そうせよ、戦の前にじゃ」
 まずはというのだ。 
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