心理
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4部分:第四章
第四章
「いいな」
「わかりました。それじゃあ」
岩隈はこっそりとコートの懐から携帯を取り出した。そうしてその美女を撮った。こうした時にも携帯は実に役に立つものであった。
「これでいいですね」
「ああ。全身撮ったな」
「今撮ってます」
見れば一枚だけでなかった。何枚も撮っていた。
美女は二人には気付かない。あちこちを見回しそのうえで歩き回っていたがやがて姿を消した。二人はそこまでも見届けたのだった。
携帯に撮った写メールには美女が何枚も写っている。顔や上半身だけでなく全身も写っているしそうした写真が何枚もだ。梨田はそれを見てまずは満足したのだった。
「よし、後はだ」
「後は?」
「署に戻るぞ」
「署にですか」
「どのみち今日は泊まりだったな」
こう岩隈に告げた。実は彼等は事件の解決の目処がつくまで署内に泊まり込んで捜査にあたることにしていたのである。梨田は今そのことを言ったのである。
「だからだ。戻るぞ」
「それで今度は被害者をですか」
「調べるぞ。いいな」
「ええ。それじゃあ」
二人はすぐに自分の署に戻った。捜査本部には当直の制服の警官が一人いた。彼は毛布にくるまって席で仮眠を取っていたが二人が部屋に入って来たその物音ですぐに目を開けたのであった。
「お帰りなさい」
「ああ、何もなかったか?」
「ええ、新しい情報は何も」
こう梨田の問いに応えるその警官だった。
「入って来ませんでした」
「そうか。そっちはか」
「はい、何もです」
警官は彼の言葉に答える。
「ありませんでした」
「そうか。わかった」
彼のその言葉に頷く梨田だった。そうしてそのうえで岩隈と共に被害者の資料を見はじめた。そのブランドを確かめるとだった。
「ド=ゴールですか」
「あまり趣味のいいブランドの名前じゃないな」
梨田はそのブランド名を見て述べた。
「どうもな」
「何か偉そうな名前ですね」
岩隈もそう感じていた。そのブランド名については。
「如何にもフランス人って感じですし」
「フランスのブランドなのはわかるな」
「はい。それであの別嬪さんの服は」
次に考えられるのはこのことだった。岩隈はここで捜査本部に置かれているパソコンの一つのスイッチを入れた。そうしてそのうえでそのド=ゴールについてネットで検索してみた。
サイトがあった。そこを覗くと。
「あれっ」
「何か見つかったか」
「ええ、これですけれど」
検索する彼の隣に来た梨田に今画面に映っているものを見せる。それは。
服が出ていた。新作のブランドの服だ。スーツもある。
問題はそのスーツだった。女もののスーツだが。それは。
「ほら、このスーツですけれど」
「ああ、それは」
その中の一つはあの美女が着ていたスーツだった。それがあったのである。
アクセサリーを見てみてもだった。そこには彼女が身に着けていたものもあった。スーツだけでなくアクセサリーもなのだった。
「どっちもですね」
「そうだな」
岩隈はここで自分の携帯で撮っていた美女のその写真もていた美女のその写真も出して見比べる。それは見間違えようもないものだった。
「これってつまりは」
「着ている、身に着けているブランドは同じだ」
このことがはっきりしたのだった。
「完全にですね」
「事件現場を被害者の勤めている会社のブランドのもので身を包んでいる美女がやって来てそのうえで見回っていく」
梨田はここで言った。
「おかしいと思わないか」
「あからさまにですね」
岩隈は画面を観続けながら述べた。
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