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真田十勇士

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巻ノ二十八 屋敷その七

 それは徳川家でも同じでだ、順調に甲斐と信濃に兵を進めていた。
 家康自身は今は駿府にいたがだ、家臣達にこう言っていた。
「上杉はもう進まぬし北条とも話がつきそうじゃ」
「ですな、これからはです」
 酒井が家康に言う。
「北条家とは縁組をして」
「娘を嫁がせる」 
 家康は酒井に確かな声で応えた。
「あちらの嫡男殿にな」
「氏直殿に」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「北条家とは盟約を結び」
「我等は関東には興味がありませぬ」
 こう言ったのは榊原だった。
「箱根から東は」
「うむ、あくまで甲斐と信濃が欲しいがな」
「北条殿は関東で」
「我等は甲斐と信濃じゃ」
「今の三国に合わさせ」
「そのつもりじゃ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「北条家とは手を結ぶ」
「手打ちですな」
 こう言ったのは本多だった。
「ここは」
「そういうことじゃ。氏政殿と話を進めていく」
 これからもというのだ。
「そして北条家と話をしてな」
「我等は甲斐、信濃に兵を進める」
「そうしていくぞ」
「わかり申した」
「では殿」
 四天王の最後の一人井伊が言って来た。
「また戦の時が来れば」
「うむ、兵を出すぞ」
「そうしますな」
「御主達もじゃ」
 四天王全員をというのだ。
「出陣してもらうぞ」
「わかっております」
「では兵を進めますな」
「これからも」
「そうしていきますな」
「そうする、しかしじゃ」
 ここでだ、家康は難しい顔になりこう言った。
「西の方がな」
「はい、羽柴殿がですな」
「かなり力をつけておられます」
「そして柴田殿と戦になりそうですな」
「これから」
「うむ、それでじゃが」
 家康はさらに言う。
「我等もな」
「羽柴殿とですな」
「戦になるかも知れませぬか」
「ことを構えることも有り得る」
「そうもなりますか」
「だからじゃ、甲斐と信濃も攻めるが」
 しかしというのだ。
「西の方も見ておく」
「では殿」
 ここで言って来たのは服部だった。場は四天王よりも遥かに下座だ。
「伊賀者達は」
「十二神将は全て上方に出ておるな」
「今は」
「ならば十二神将はそのままでよい」
 上方にいて、というのだ。
「そして羽柴家や他の家の動きを見ておくことじゃ」
「殿、それでなのですが」
 鳥居が家康に問うた。
「羽柴家と柴田家が戦になれば」
「織田家はじゃな」 
 両家の主であるこの家のこともだ、家康は言った。 
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