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食事の秘密

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4部分:第四章


第四章

「ではだ。早速だ」
「ああ、じゃあな」
「食おうぜ」
 何はともあれだった。レストランは食べる場所だ。それで彼等は食べるのだった。
 ゴルトリッターの面々はそれぞれ無造作に食べはじめる。それに対してシュナイダーは丁寧で無駄のないマナーで食べはじめる。何気にタクシーの運転手にしては上品だったがゴルトリッターの面々は気付かない。
 重要なのはだ。これだった。
 シュナイダーはまずザワークラフトを食べた。すると。
「むっ、これは」
「どうだい、ここのザワークラフトは」
「中々のものだろ」
「美味い」
 食べるとだった。その目が光るのだった。
「こんなに美味いザワークラフトははじめてだ」
「そうだろ?ここのは美味いだろ」
「そうだろ」
「こんなザワークラフトが普通に食べられるのか」
 このことに驚くことを隠せないのだった。
「そうなのか」
「ザワークラフトだけじゃないからな」
「ソーセージも食ってみたらいいさ」
「ハンバーグだってな」
「う、うむ」
 シュナイダーはゴルトリッターの面々の言葉に頷く。そうしてそのソーセージやハンバーグ、それにサラダやマカロニグラタンも食べてみるとだ。
 何もかもがだ。彼がはじめて食べる味であった。
「胡椒をふんだんに使っていてそれにマスタードの質もいいな」
「だろ?味付けが絶品なんだよ」
「それに肉だっていいの使ってるしな」
「肉も野菜もだな。それに」
 ジャガイモやそういったものも食べてみるとだ。
「バターまでいい。ミルクも。それに」
「そうだろ?」
「それにだよ」
「料理の腕もいいな」
 それもなのだった。
「最高級のレストランなのか、ここは」
「いいや、普通のレストランだぜ」
「もう何処にでもあるな」
「そんな店だけれどな」
「なあ」
 これがゴルトリッターの面々の言葉だった。
「それはちょっと大袈裟だよな」
「確かにこの店美味いけれどな」
「こうした店って西ベルリンには何処にでもあるよな」
「そうだよな」
「こんな美味いものを出せる店が何処にでもあるのか」
 これまたシュナイダーにとっては驚きのことだった。目玉焼きごとハンバーグを切ってそれをフォークで口の中に入れながらだ。彼は言うのだった。
「恐ろしい話だ」
「だからジョークだよな」
「いい加減マジにしか聞こえないけれどな」
「ううん、あんた天然とかじゃないよな」
「まさかと思うけれどな」
「どうなんだ、その辺り」
 彼等はシュナイダーにいい加減不安なものを感じていた。だが怪しんではいなかった。 
 しかしそれでもだ。彼等はシュナイダーに話し続ける。
「まあとにかくな」
「いいか?」
「デザートな」
「それも食うよな」
「デザートか」
 シュナイダーはそれを聞いてだ。また考える顔になった。
 そしてそのうえでだ。彼は話すのだった。
「そこまであるのか」
「もうそれを食わないと終わらないよな」
「あれだぜ?イタリア人ならジェラートを食べないと収まらないしな」
「俺達ドイツ人だってそこは負けられないからな」
「だからいいな」
「デザートか。そういえば」
 シュナイダーはそれを聞いて腕を組んで深刻な顔になって話した。
「フルコースの最後になって出るものだが」
「そんなご大層なものじゃないしな」
「普通だよ、普通」
「なあ」
「そんなものか。とにかくだ」
 とりあえずデザートが出ることはわかった。そして次の関心はだ。
 
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