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少年少女

作者:ゼッピィ
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第八話

「シノン!後ろだ!」

ジンガの叫びが部屋に響いたのは、私はスキルを放った直後だった。私の放った矢は前方の死霊の頭部を的確に捉え、一撃で四散させた。

「あアアアあぁあ」

直ぐ後ろから死霊の唸り声が聞こえる。まずい。私のパラメーターは極端に防御関係が低い。そのうえ、背面攻撃なんて・・・
運が良くて生き残れるかどうか。それほどの確率しかないだろう。私はこんな所で終わるの?こんな形で?現実でも、迷い混んだこの世界でも強くなれずに?

「あぁああアアア!」

攻撃が来る。覚悟する。これで終わる・・・?
嫌!そんなの、絶対に嫌!!

「・・・!」

攻撃が来ない・・・?
死ぬ前って時間がゆっくりになるとか聞くけど、本当だったのかも・・・






あれ?動ける?攻撃も受けていないみたい。私は恐る恐る振り返る。

「間一髪。だな。」

振り返ると、刀の切っ先が目の前にある。

「・・・っ。」

声にならない声を出して吃驚する。目と鼻の先に刀があったら、誰でも驚くわよ。

「・・・ジンガ?」

私は呆けた声でその刀の使い手の名を呼ぶ。このシチュエーション、前とほ殆ど同じじゃないの。助けられてばっかりね、私は。

「おう。無事で良かった。」

ジンガは刀を引き、ボスの方を向く。

「あ、有難う。」

私は小さな声でお礼を言った。私のピンチに二度も助けに入ってくれたジンガ。この人なら・・・

「気にするな。今はとにかく、奴を倒そう。」

横を向いたまま、ジンガは応える。

「う、うん。そうね。」

ジンガの横顔にドキドキした。男らしさってこういう事だと思う。って私はさっきから何を考えてるの?今は戦闘中だ。余計な事を考えるのは後。

「ヒェッヒェッヒェッヒェッ!殺しそびれたか。運が良かったなぁ!」

ネクロマンサーがキリトの攻撃を捌きながら笑った。きっとこいつをプログラムした奴、最低な性格をしているわね。現実に戻ったら、探して殴ってやりたい。

「さぁさぁ、そろそろ本気で行くとするか。お前たちの力はもう充分見せてもらったしなぁ。」

そう言うと、キリト目掛けて連続攻撃を繰り出してきた。両手長柄の真ん中部分を持ち、自らの体を軸に振り回す攻撃で、かなりの速さだ。私だったら一溜まりもないだろう。

「くっ。こいつ、急に動きが変わった!」

攻撃を何とか凌いでいるキリト。いくらキリトでも、ボスクラスの攻撃を一人で耐え続けるのは不可能だということは、私にでも分かる。直撃はしていないものの、HPバーが減少している。

「キリト!今行くぞ!」

急いでキリトを助けに向かおうと走りだそうとするジンガ。私は弓を構え、ネクロマンサーに狙いを定めた。

「ヒェッヒェッ。そうはさせんよ。」

ネクロマンサーがそう言うと、私とジンガを囲むように死霊がポップする。十匹ほど出現した死霊はジリジリと距離を詰めてくる。

「くそっ!邪魔だ!」

「ちっ・・・鬱陶しいわね。」

苛立つ私たち。この状況は結構まずい。
私たちも、ボスクラスの敵を一人で相手にしているキリトも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シノンを間一髪で助ける事ができた俺は、安堵の表情を浮かべる。心臓の鼓動が恐ろしいくらいに速い。死ななくて良かった。護れて良かった。シノンが振り返ると俺は努めて冷静を装う。理由は・・・何だろうか、何故だか、そうしたかった。格好つけたかったのか、気恥ずかったのか。 自分でもよく分からない。

「・・・ジンガ?」

シノンの声を聞くと、いっそう安堵した。本当に良かった。思わず泣きそうになる・・・

「おう。無事で良かった。」

ぶっきらぼうに応えてキリトの様子を見る。

「あ、有難う。」

「気にするな。今はとにかく、奴を倒そう。」

シノンの礼にもぶっきらぼうに応える。今は戦闘中だ。自分で言った言葉は、何故だか恥ずかしさを感じている自分に言い聞かせる言葉でもあった。
キリトを助けに行こうとすると、ネクロマンサーの妨害で、俺とシノンは死霊に囲まれてしまう。

「くそっ!邪魔だ!」

「ちっ・・・鬱陶しいわね。」

まずいな。俺はともかく、シノンがまたも危険に晒されている事に焦り、苛立つ。
・・・出し惜しみしている場合じゃないな。俺は一つ、決心する。

「シノン。前方の死霊を二、三体倒して包囲を抜けろ。キリトの援護を頼む。」

背中合わせになっているシノンに伝える。

「馬鹿言わないで。あなたを一人置いて行けないわ。いくらジンガでも、一斉に攻撃されたら危険よ。」

シノンの冷静な声を聞くと俺の決心は更に強固なものになる。

「大丈夫だ。俺を信じてくれ。すぐに片付けて援護に向かう。」

「・・・了解。無理はしないで。」

シノンは渋々といった様子で了承する。ジリジリと近付いてくる死霊ども。
さぁ、初御披露目だ。俺の切り札を篤と味わえ。 
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