ダンジョンに最強のパワーを持った戦士がいるのは間違っているだろうか
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ギルド
ステイタスの確認が終わる頃には、外は夜になっていた。
「ゴジータ君!明日、ダンジョンまで案内してあげるよっ!」
そう元気よく提案してくれたヘスティアは、ベッドに入ってすぐに、微かな寝息を立ててぐっすりと眠ってしまっている。
「……疲れてたんだな」
そりゃあどっかから帰ってきた後あんなチートスペック見せられたらねぇ、誰でも疲れるわな……
適当に床に座りながら、ヘスティアを見る。女神であるのに、こんな夜分遅くに帰ってくるだなんて、苦労しているんだろうな……俺にベッドで寝るよう勧めてくれたが……見た目は幼い少女と一緒に寝るのは非常に危険だ。俺の理性と社会的に。
せめていい夢をみているようにと願いながら、俺はヘスティアの頭を優しく撫でた
(……あ、髪の毛さらさらだ)
……少し邪なことを考えてしまった。
結構眠いな……転生してすぐに色々な事が起こったんだ、仕方ないか。
取り敢えず、この世界で生きる覚悟は出来た。
明日、俺はダンジョンに潜る。どんな危険があるか分からない、だがダンジョンで、例えどんなモンスターが現れようとも、俺には仲間達に鍛えてもらったこの体がある、大丈夫!
そう思いながら俺は睡魔に身を委ね、眠りについた。
────夜空には満点の星が輝いていた。
「さぁ!今日からダンジョンに行ってもらうよ!あ、その前に、ギルドで冒険者登録もしなきゃいけないけどね!」
「それはいいが、ヘスティアも着いてきてくれるのか?道を教えてくれれば、俺一人でも……。」
「今日は、バイトが休みだからね!行けるのはギルドまでだけど、そこまでは案内するさ!」
ギルドとは、オラリオの都市運営、冒険者及び迷宮の管理を担うその組織は、冒険者たちに手厚いサポートを行ってくれるが、あくまで迷宮が生み出す富を管理するための組織である、ちなみに、トラブルには、よほどのことがない限り介入しない……とのことだ。
「さあ、出かけよう!」
「ああ」
ヘスティアが廃教会の扉を開く。扉の隙間から朝日が差し込んだ。
────そこに広がっていたのは、まさに異世界であった。
まず目に入ったのは、ダンジョンへ向かう冒険者たちだ。皆前世では見たことのない格好をしている。
次に建物で、町並みも前世と比べて違いが多い。そもそも広さが段違いだ。目の前には長く、広い一本道が通っており、建物の軒数は結構ある。しかも殆どがゲームでしか見たことなかった道具屋や、武器屋がメインらしい。
(あんな広い一本道、前世で見たことないぞ、道具屋は後で見に行きたいな)
そして、一際目を引くのが異様に高い一本の塔だ。あれが、バベルと呼ばれる施設なのだろう。……これほどまでに目立つなら、迷うことは無いな。
バベル────ヘスティアが言うには、それは天にまで届きそうな白亜の摩天楼。この建造物があるからこそ、ダンジョンで生まれたモンスターが都市に溢れることが無く、市民の安全を守っているらしいという事だ。バベルには様々な施設が用意されており、ダンジョンに潜る冒険者たちが不自由する事は少ないそうだ。
(どうすりゃ、ここまで巨大な建物を建てることが出来るんだ?)
そう思ってしまった俺は悪くないと思う。
俺達は歩き出した。身長差から、歩幅の違いが大きく表れてしまうが、俺がヘスティアに歩調を合わせる。
二人はギルドに向かって歩みを進めた……ゴジータにとっては、ゆっくりとだが。
バベルの入り口に冒険者が入るのを見かけた。
「あれが、ダンジョンの入り口か」
「そうだよ!……君ほどの冒険者なら、ソロでも地下の深い階層まで軽く到達できるだろうけど、危険は冒しちゃだめだよ。冒険者は冒険しちゃいけないってよく言われているんだから」
「大丈夫だ。今回は日が沈む頃には帰ってくるさ」
どんな危険が潜むか分からないからな、今回は、稼ぐお金は少なくても構わないから深い階層に進むのは控えるべきだろうな。
……本当は行きたいけど。
「新人にはダンジョンについての講習をしてくれるはずだかよ、まぁ君ほど力量があると、どうなるか分からないけど」
(講習か……面倒臭いな)
そうこうしている内に、北西のメインストリートに面するギルドの入り口にまで辿り着く。白い柱で構築された姿形は神殿のようだった。ここで、俺はオラリオの住民として認可されるために、そしてダンジョンに入るために冒険者登録をしなければならないらしい。
「さあ、ゴジータ君!君はダンジョンの探検、僕は二人目の眷属になってくれる人探し!お互いに頑張ろうね!」
「ああ。新しい眷属探し、頑張れよ」
そう言ってヘスティアの頭を撫でた。
ヘスティアは恥ずかしそうに顔を赤らめていたが元気よく
「勿論だ!!」
と言った。
ヘスティアと別れ、俺ははダンジョンへと向かうための準備として、ギルドの入り口をくぐり抜た。
ヘスティアはメインストリートへとその豊満な胸を揺らしながら走り出した。顔はまだ赤いままだった。
俺の新しい人生の始まりであった────
ギルドに入って数分後、俺は困っていた。一人の受付嬢に。
彼女の名はエイナ・チュール
ブラウンの髪をセミロングに切り揃えた、眼鏡の似合う綺麗なハーフエルフである。
何故彼女に困っているのか、その理由は────
「あなたのここに書いてあるレベルが50と気されているのですが、どういう事ですか?」
「どういう事って言われたって、俺はヘスティアに教えられただけだ。自分で背中を見たわけじゃねえし……」
そう、ダンジョンにあと一歩まで届いた今となって、俺は自分異常な力が障害となったのである。そのせいでエイナにいかにも怪しいと言った表情で睨まれている。
(やっぱゴジータチート過ぎ……)
俺はそう思ってしまった。
……まぁ彼女の疑いは当然のことだった。
そもそも、ダンジョンの無いオラリオ以外の土地でレベルアップすることは非常に稀なのである。そのオラリオの冒険者は、殆どがLv.1のであるというのに、初めてダンジョンに潜るために登録しに来た俺が、レベルを記入する欄に『50』と記入するのはおかしい事なのだ。
当然エイナは眩暈に襲われた。
(どうしてこんな嘘を書くのかしら……)
エイナは俺をジト目で睨みつつ話した。
「いいですか?ギルドに登録されている冒険者の中で、現在レベルが最も高い冒険者はフレイヤ・ファミリアに所属するオッタルという、Lv.7の冒険者です。……もう一度だけ、聞いてあげます。本当に、貴方のレベルは50なのですか?」
「ああ」
俺は迷いなく答えた。
エイナは何度聞いても無駄だと判断した。
(……こうなったら仕方ないわね...)
エイナは最終手段にでた。
「はぁ……では申し訳ありませんが特例として、背中のステイタスを拝見させていただきます。あと、貴方のステイタスをウラノス様にも見てもらいます。『君臨すれども統治せず』を貫き通してきた御方です。レベル以外のステイタスを公表するようなことはなさらないでしょうから安心して下さい」
「まぁ、別にいいが……」
「ではこちらに」
(素直にレベル1だって言えばよかったのに...後悔する事になるわね)
そう思いながら、ステイタスを他の冒険者に見せないために、エイナはゴジータと共に個室へと移った。
「それでは、ステイタスを見せてください」
「ああ、ほら」
そう言って俺は背中をエイナに見せた。
(……え?)
エイナは混乱した。そこに書かれていたのは、レベル1の平凡なステイタスではなく、彼のいったとおり、レベル50、そしてありえない基礎数値のステイタスだった。
それを見たエイナは
「……」
「お、おい!?」
気絶した。
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