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少年少女

作者:ゼッピィ
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第七話

「恐らく、ここがボス部屋だ。」

私たちは古城の三階、鍵のかかった大部屋前に来ていた。後は調べていない部屋はここだけで、鍵は手に入れている。後は倒すだけ。この悪趣味なクエストを早く終わらせたい。

「準備は良いか?ジンガ、シノン。」

キリトの問いに頷く私たち。初めてボスクラスのモンスターと戦う事には若干緊張しているけど、キリトとジンガという、二人の攻略組プレイヤーがいる。きっと大丈夫。

「それじゃあ、開けるぞ。」

キリトが鍵を差し込み、回す。がちりと重い音が鳴り、解錠される。一拍置いて扉を押して開けていく。
ガガガ・・・と錆びが擦れるような音を立てながら、大きな扉は開いていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

開いた入り口から俺たちが部屋の中を見ると、広い空間の真ん中にポツリと祭壇のような物があり、それに向かって何かを呟いている人物が見てとれた。豪華・・・というか、騒がしいと言った方が正しいようなゴテゴテの装飾品がついたローブを纏い、フードを被っている。

「あいつね。」

「・・・だろうな。あれだけ怪しいんだし。」

「間違いないだろうが、一応クエストだから、話しかけてみたら良いんじゃないか?」

俺たちは部屋の中に入り、中央に向かって歩を進めようとした。しかし、その時・・・

「があぁああ」

「おぉおぉおああ」

死霊が複数ポップする。が、襲ってくる訳では無かった。死霊のポップと同時に怪しい人物が振り向く。

「誰だ?儂の城に無断で入りおる輩は・・・」

嗄れた老人のような声を発する。

「お前が死霊たちを操っているのか!?」

キリトの問いに怪しい人物はフードを取り、応えた。

「いかにも。儂は亡者たちの支配者。死を操る者だぁ。」

フードの下には皮膚が爛れ、一部頭蓋骨が見えている老人の顔があった。頭上に現れるエネミーネームには『ネクロマンサー』と表示されている。間違いないな。

「・・・何よあれ。まるでゾンビじゃない。」

シノンが嫌悪感を顕にして言った。確かにゾンビとか、それこそ死霊という言葉が似合う容姿をしている。

「儂の研究により、死した者は甦った。お前たちも会えたかぁ?親しき者や愛しき者、自分を残して死んでしまった者たちに。」

そう言うと、ネクロマンサーはヒェッヒェッと笑う。

「ふざけるな!」

キリトは怒りの声をあげる。

「こんな事に何の意味がある!?甦った?違う!外見を似せているだけじゃないか!中身はただのモンスターだ!」

凄まじい剣幕で叫ぶキリト。

「ヒェッヒェッヒェッ。そうか、中身の事を忘れておったわ。まだまだ研究していかねばなぁ。お前たち、教えてくれて有難うよ。お陰でまだまだ研究できる。そうだ。お前たちも儂の研究を手伝わんか?親しき者、愛する者にもう一度会いたいと思わんかぁ?」

何なんだコイツは。この言い方じゃ、研究を進めれば死者が完全に甦るとでも?


「騙されちゃダメよ。残念だけど、SAOで亡くなった人たちは現実でも本当に亡くなっている。連日のように報道されていたから覚えているわ。」

キリトが僅かに戸惑ったのを感じたのか。シノンの言葉に一瞬だけ痛そうな顔をするキリト。
少し、本当に少しだけ、SAOに囚われた人たちは望みがあった。本当はデスゲームなんて嘘で、倒された人は生きている。本当に死んでしまったのか確かめる術がない為に、そう考えてしまう人はいたし、自分自身、どこかでそうであったら良いと思っていた事があった。

「・・・あぁ、分かっているさ。このデスゲームでの死は現実での死。甦るなんて事は出来ないって・・・」

自身に言い聞かせるようにキリトは言った。やはり、頭では分かっていても、心の中で抱いている僅かな希望を、迷いを突く。そういう心理的な攻撃。本当に悪趣味だ。

「キリト、シノン。クエスト進行のフラグは進んでいるはずだ。これ以上の話は無駄だ。速攻でカタを着けるぞ。」

俺の声に頷き、三人同時に武器を構える。

「ヒェッヒェッ。それでは、お前らも死霊となるが良いわ!」

ネクロマンサーが臨戦態勢を取ると、死霊たちが襲いかかってくる。

「キリト!死霊は俺とシノンが速攻でカタを着ける!多少の時間、ネクロマンサーを頼んだ!」

「分かった!頼む!」

速攻で死霊を倒し、ネクロマンサーを倒す。こんなクエスト、一秒でも早く終わらせてやる。

「はっ!」

「やぁぁっ!」

俺とシノンはソードスキルで死霊を倒していく。死霊は脆く、まともにヒットすれば、ほぼ一撃で四散していった。

「うぉおお!」

キリトがネクロマンサーとやりあっているのを確認する。ネクロマンサーは両手長柄でキリトの攻撃を凌いでいる。

「うぉおおおおお!」

片手剣のソードスキル、ホリゾンタルを繰り出しているキリト。思ったより楽に倒せそうだが・・・

「・・・おかしい。」

ぼそりと呟いてしまう。そう、おかしいのだ。こんなに簡単に倒せるなら、俺たちでなくても、とっくにクリアされているはずだ。

「・・・!!」


背筋に寒気が走る。ゾクりとしたこの感覚は、嫌な予感が的中した事を告げていた。

「シノン!後ろだ!」

俺はシノンの直ぐ後方に新たな死霊がポップしているのを見つけ、叫ぶと同時に走り出す。

「えっ?!」

シノンは運悪く、ソードスキル後の技後硬直状態で動けなかった。

「あアアアあぁあ」

唸り声をあげながら襲いかかる死霊。

「シノン!」

キリトが鍔迫り合いをしながら振り向き叫ぶ。これは、間に合うか分からない。しかし、間に合わせなければ俺は・・・俺は!
 
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