戦国異伝

「一向一揆とは違うか」
「あの様なものではとても」
「ではどういった戦じゃ」
「はい、国全体を巻き込んだ」
「そしてか」
「どちらか一方を皆殺しにするまで続きます」
　そうした戦だというのだ、欧州の耶蘇教の宗派が違うことによって起こる戦争はだ。
「ですからフランドルでは」
「神聖ローマ帝国という国からか」
「出てです」
　そして、というのだ。
「自分達で貿易をしてそのうえで」
「スペインと同じ様にしているか」
「そうです」
　まさにというのだ。
「宗派は違いますがやっていることは似ています」
「ふむ。ではそのオランダもじゃな」
「注意して下さい」
　こう信長に言うのだった。
「くれぐれも」
「わかった、しかしな」
「しかしとは」
「スペイン、ポルトガルとオランダは仲が悪いな」
「はい」
　その通りだとだ、ヨハネスは信長に答えた。
「犬猿の仲です」
「そうじゃな」
「お互いに手を組むことはまずありません」
「わかった、ではそうした国と対する時はな」
「耶蘇教に気をつけ」
「民達を守りじゃ」
　そして、というのだ。
「お互いに手を結ばない様にして戦う」
「そうされますか」
「そうしようぞ」
　こうヨハネスにも言うのだった。
「天下を一つにしても外からの敵もおるのならな」
　その敵にというのだ。
「戦う」
「そうされますな」
「攻めて来る者は追い払う」
「そして泰平を守る」
「そうする」
　やはり確かな声で言う信長だった、そしてだった。
　ヨハネスからさらに話を聞いた、そうして南蛮の国々と対することも講じていくのだった。魔界衆との戦とのことで。
　その魔界衆との戦の用意を進めていた、だが。
　魔界衆は姿を出さなかった、しかし。
　明や南蛮から日本の港に来ていたならず者達がいなくてだ、信長は言った。
「他の国からのならず者達がいない」
「では、ですな」
「そうした者達をですか」
「あの者達は抱き込んでいる」
「そうしていますか」
「国を売りでもしたな」
　信長はこの辺りをだ、すぐに察して言った。
「本朝をな」
「協力してもらう代わりにですか」
「あの者達が勝った暁には」
「この国を、ですか」
「うむ、六十余州の中の一国でも与えるなぞ言ってな」
　そうしてというのだ。
「抱き込んだのであろう、銭なりも渡してな」
「異国の者達まで抱き込むとは」
「しかも本朝の国まで売るとは」
「見下げ果てた者達ですな」
「全く以て」
「あの者達はこの国の者達ではないからな」
　だからと言う信長だった。